力強さと繊細さをピュアに表現――音の本質がわかるAVアンプ「DSP-AX4600」レビュー(2/4 ページ)

» 2005年07月01日 00時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

評価のポイントは“音質”

 ヤマハはDSP-AX4600において、徹底的に「素のオーディオアンプ」としての質を高める事に注力したという。DSP-AX4600のシャシーやアンプ回路は基本的にDSP-AX2500と同じだが、電源部の改善と音質チューニングでアンプの音は大きく変化する。DSP-AX4600を評価する上での一番のポイントは、やはり音質だろう。もしこの点にさほどこだわりがないならば、もっと安価な製品を候補として考えた方がいい。

photo シャシーやアンプ回路は基本的にDSP-AX2500と同じだが電源部の改善と音質チューニングが施されて、音はまったく別物
photo 電源トランスはDSP-AX2500よりも大型のタイプを採用

 もちろん音質以外にも機能面でいくつかチェックポイントがある。それを先に挙げてみよう。

・マルチチャンネル音声をサポートするiLINKとHDMI

 ディスプレイが固定画素系に変化している中、HDMI入力が追加されたことは魅力のひとつになっているはず。HDMIは現在、DVD-AudioをサポートするVer.1.1が最新となっており、DSP-AX4600もその仕様に準じている。

photo DSP-AX4600に内蔵されたHDMI&iLINKインタフェースボード

 ちなみにHDMIは今後、1.2、1.3とアップデートされる予定になっており、1.2ではDSD対応(SACD音声)、1.3ではフロー制御(バッファリングによるジッタ制御)対応が追加されていく。ただしリニアPCMのマルチチャンネルは通るため、プレーヤー側でデコードしてHDMIから出力する機能があれば、現行仕様でも問題はないだろう。

 ただ現実問題、SACD音声をデジタル接続で楽しみたいならばiLINKを使う事になる。ただし、DSP-AX4600のiLINKインタフェースはフロー制御には対応しておらず、オーディオデータ再生時にジッタを取り除く機能はない。もっともヤマハによると「フロー制御は行わなくとも音質は十分に高められる」とのこと。HDMI伝送時も含め、そのあたりの違いを後ほど確認したい。

・YPAOとシネマDSPの改良

 基本的にはDSP-Z9で示された方向に対して、より明確に最新のチップを用いて取り組んでいる。YPAOはDSP-Z9でみられた欠点をほぼ完全に克服しており、周波数特性補正時の位相管理問題を気付かないレベルにまで抑え込むことに成功した。サラウンドの音場はぴたりとハマると、その立体感に酔えるほど快感だ。

 これは下位モデルでは既に採られていたアプローチで、周波数特性の補正ポリシーを変更している。ただし改良は時間とともに進むもので、最新版ではより不自然さをなくす方向でチューニングが行われた他、計測時間がDSP-Z9に比べておよそ半分になるなど大幅に短縮されている。

 シネマDSPは、DSPチップの能力がDSP-AX2500よりも引き上げられたこと、DSPプログラム自身の開発ポリシーが変化してきている事などの複合的要因で、強いエコー感を感じない(昔のシネマDSPからすると“らしくない”)さりげないDSPプログラムになっている。反射音生成本数が増えたことで、バーチャルのアンビエントサウンドが不自然に聞こえにくいということもあるのだろう。ただDSP-Z9以降のシネマDSPは、すべて同じ傾向の音になっており、ヤマハの作る音の方向が変化したと考えた方がいいかもしれない。

photo 新世代「NewシネマDSP」エンジンはさらに能力がアップ

 昔のシネマDSPは、Si-Fiモードに合わせてドッカーンと派手なアクション系やSF系の映画を見るためのもの、という印象だったが、現在のシネマDSPならばオンにしたままでもあまり鼻につくような音になることはない。

・充実のGUI

 基本的にはオーディオ機器なのだからGUIなどいらないという読者もいるだろうが、今時のAVアンプは多機能化が進み、たとえAV機器の操作に慣れたユーザーであっても設定に苦労するケースは少なくない。入力端子のアサイン機能(入力ファンクションに対して、どの端子を割り当てるかなどを設定する機能)も、自由度を増せば便利な反面、どのような設定になっているのかを把握していないとワケのわからないことになってしまう。

 今時のAVアンプは、すべからくモニター出力を利用した設定メニューを持っているが、あらゆるメーカーの中でもっとも一覧性が高く、レスポンスもよく、そして分かりやすいのがDSP-Z9のGUIだった。そしてDSP-AX4600のGUIも、それを踏襲したものになっている。ここまで分かりやすいGUIは他社上位機種でも搭載していない。設定のイライラから解放されるのは嬉しいところだ。

photo 日本語表示のアシストGUI。非常に分かりやすい

 なお設定内容はYPAOのイコライザーを利用するしない、スピーカー設定、サラウンドモードなどをユーザーメモリとして6種類を保存。瞬時に呼び出す事も可能。映画視聴時、音楽ビデオ鑑賞時、ピュアオーディオモードなど、用途に分けて登録しておくと便利だ。

エネルギー感溢れる躍動的なアンプに変身

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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年7月31日