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720p普及型DLPプロジェクターの数少ない選択肢――東芝「TDP-MT700J」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(2/3 ページ)

» 2005年07月19日 01時02分 公開
[本田雅一,ITmedia]

  • カラーホイールの回転速度

 両製品はいずれもRGB×2の6セグメントカラーホイールを採用しているが、PE7700はピクチャーモードをシネマ系の設定に変更すると5倍速動作(それ以外は4倍速)となり、単板DLPの弱手であるカラーブレーキングを軽減する仕様となっている。

 ならばPE7700の方が良い……とならないのは、カラーフィルターの切り替え速度が上がっても、DMD素子のマイクロミラーが動く速度は変わらないからだ。つまり、1セグメントあたりのミラーのオン・オフ回数は4倍速の方が多くなる。よって階調表現力では4倍速の方が勝るわけだ。特に暗部のざわつきや夕景などのグラデーション部分で、その差が出やすい。

 ただ、両機種とも単板DLPとしてはカラーブレーキングがそれほど目立たない。筆者は比較的カラーブレーキングが見えてしまう体質で、4倍速の機種は大半がダメなのだが、TDP-MT700Jはさほど気にならない。もちろん、高輝度部や字幕などでは気になることもあるが、おおむね問題なく1〜2本の映画を鑑賞できた。

 個人差はあるだろうが、TDP-MT700JはPE7700とは異なり通常の量販店でも販売されるため、自分の目で確かめてみるといいだろう。同じカラーホイール速度でも、機種によってカラーブレーキングの見え方は異なるからだ。

  • 絵作りの違い

 PE7700はこってりとした色ノリで、特に肌色がふくよかに立体感がより増すような描写となっていたが、TDP-MT700Jはもっとスッキリとしたさわやか系の絵作りだ。色ノリもやや控えめな印象で、無理に彩度を伸ばす傾向が見られない。

 これは純度の高い赤で顕著で、PE7700が途中までは鮮烈な赤を出しつつ、もっとも赤純度の高いところではやや赤黒い表現になるのに対して、TDP-MT700Jは高純度の赤まで綺麗に彩度が伸びていく。その分、やや明るめのところではあっさりとしすぎるきらいもある。

 ソースで言えば日本人の肌はTDP-MT700Jの方がきれいに見えるが、PE7700では少々厚化粧に見える。逆に白人の肌の場合は、TDP-MT700Jでは多少平板になるのに対してPE7700ではちょうどいい塩梅になるといった雰囲気だ。

 こうした違いはアナログ入力時だけではくHDMI端子によるデジタル入力時にも現れた。ただしアナログ入力時、特にコンポーネント入力のトーンカーブが実によく練られ、コントラスト感と階調性のバランスをTDP-MT700Jの表現能力の範囲内で巧妙に合わせ込んでいるのに対して、HDMI時はやや雑な印象を受ける。HDMI入力に関しては、絵作り以外はPE7700との差は小さいが、コンポーネント入力に関して言えばPE7700よりもよく錬られ、東芝なりのチューニングが施されているようだ。

 ただ全体の絵作りは日本人の好みに合う方向でのチューンがなされているが、暗部でやや緑かぶりが目立つ場面も見受けられた。PE7700も同様に暗部の緑かぶりがあったが、TDP-MT700Jはより目立つ印象。

 ただし調整項目は豊富で、RGBのゲインとオフセットは独立で調整できるため、何度か調整を追い込んでいけば問題は解決できると見られる。

  • DCDi搭載

 PE7700には搭載されていないファロージャのDCDiがTDP-MT700Jには内蔵されている。そのせいかSDのインターレス映像を入力した場合、TDP-MT700Jの方が斜め線のジャギーが軽減され、動きボケも目立たない。それでいて解像感もきちんとキープされる。

 プログレッシブ回路は近年大幅に進歩したため、DCDiのアドバンテージは現在ではさほど大きなものではないが、PE7700の映像回路と比較すると見た目にも改善がハッキリと認識できる差は感じた。もっとも、プログレッシブ出力のあるDVDプレーヤーが普及している現在、さほど大きな違いとは言えないかもしれない。

 HDMIにあらかじめスケーリングして出力できるプレーヤーがあるならば、それを用いる方が良い結果が得られる。

  • 設定可能項目

 PE7700にはHDMI信号をリミテッドレンジで利用するか、フルレンジで利用するかを設定する機能があった。しかしTDP-MT700Jはリミテッドレンジモード固定となっており、PCとの接続をDVI-HDMI変換ケーブルで行う場合には白飛び・黒潰れを起こしてしまう。

 このため、今回はPCと接続してサンプルの投影画像を掲載する事を断念した。

 なお東芝によると7月後半以降に出荷するロットに関しては、レンジ切り替えをメニューから行えるようにファームウェアをアップデートしているという。既存ユーザーに対しても、追って登録ユーザーあてにアップデートの連絡を行うとのことだ。

 またTDP-MT700JにはPE7700にはなかったガンマ調整機能が加わった。全体のガンマを一度に調整することはできないが、RGBごとに独立してガンマ調整を行える。デフォルトではやや明るめのカーブに設定されているため、暗く反射光も抑えられた部屋で使う場合は、もう少し暗めのカーブに調整した方が印象は良くなる。

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