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“癒し”のモダンデザイン――オムロン「ピーィス」特集:魅惑のデザイン家電(2/2 ページ)

» 2005年07月20日 06時51分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 方向性は定まったが、背中をマッサージユニットが上下するタイプのマッサージチェアをスマートにするには、基本的な構造から見直す必要があった。まず、メカユニットを一から設計し直す。従来はユニット自体を上下させるモーターを本体側に設置していたが、背もたれ部分の厚みが増してしまうため、モーターを3つに集約してユニット側にすべて搭載。ユニット自体もスリム化し、HM-601では12〜13キロあったものを6.5キロまでダイエットしたという。

 「それでも、揉み玉の突出率はHM-601より15〜20ミリ大きくなっています。このあたりはユーザーの体型や好みにも左右されますし、慣れというのも大きいですが、HM-601で弱いと感じることがあったので改善しました」(三木氏)。

photo ファブリックを剥がして揉み玉の突出量を見たところ。使用時にはファブリックがあるため、ここまで突出しないが、従来製品より5〜20ミリ前に出る

 メカユニットが上下するガイドレールは、フレームに一体化した。これにより、構造材の重さも2.5キロの減量。さらに背中の施療範囲が広がるというオマケが付く。「HM-601のとき、ユーザーから“もう少し(腰の位置が)下までマッサージできるようにしてほしい”という意見があったのですが、構造を変えたことで、施療範囲を上下に約7.3センチ広げることができました」。

 動作音にも気を配った。たとえば、モーターには従来よりも大きめのものを採用している。モーターが小さいと、パワーを確保するために高速回転する必要があり、音が大きくなるからだ。これにより、動作音は「最大でも45dB程度」と、当時としてはかなり小さくなった。

 「店頭では分かりにくいのですが、静粛性を確保するために部品から工夫しています。余裕のあるモーターを使い、低速回転で動作させることで音を抑えました。ベルト機構では、通常なら並行にするタイミングベルトを斜めにして、プーリーとベルトの“噛み込み音”を減らしています」(三木氏)。

 完成したHM-603/604は、背もたれ部分や台座部分までスリムになり、ファブリックの変更も合わせてスタイリッシュな外観になった。ファブリックは合成皮革で、ホワイト、ベージュ、オレンジ、ブラック(HM-604)の4色を揃える。また、同シリーズのフットマッサージャーは、レバーを引いて上面をくるりと回せばオットマンに早変わりするというアイデアもの。合わせて使えば、高級感を演出するのに一役買うはずだ。

photo 横のレバーを引くと上面がくるりと半回転。フットマッサージャーは6つのエアーバッグを搭載しており、足を揉みほぐす

 「他社製品は(フットマッサージャーを)下から跳ね上がるタイプが多いですが、そうすると筐体が大きくなってしまう。また足部分のマッサージは必要ない人もいるでしょうし、後付けなら必要ないときはしまっておけるので、邪魔になりません」。

 一方、気になるマッサージ機能は、あくまでも基本に忠実だ。他社製品のように“コリセンサー”やエアーを使った肩の押し込み、腰を左右から圧迫するエアーバッグといった付加的な機能は一切ない。しかし、肩から腰まで(フットマッサージャーを除く)を揉み、叩くという基本はと抑えたという。

 「マッサージチェアには3大機能というのがあります。“揉み”“叩き”“背筋のばし”ですが、この3つはどこのメーカーでも必ず入っています。603では、この基本をおさえた上で、アレンジしてその組み合わせを加えました。たとえば、揉みと叩くを組み合わせて“揉み叩き”、それに背筋のばしを加えて上下したり……。メカで揉むという基本的な部分は入っていますから、背中や肩に限定すれば、あまり差はないと思いますよ。売り場で試してもらえれば、遜色のないことは分かってもらえるはずです」。

photo メカユニット部の動き。。“揉み”“叩き”“背筋のばし”といった基本的な動作は抑えている

 自動プラグラムコースは、「上半身」「首・肩」「腰」の3コース。個別に7種類のマッサージメニュー(背筋のばし、指圧、揉み、叩き、もみ叩き、とんとん、もみとんとん)も用意している。この数が多いか、少ないかは意見の分かれるところだが、少なくとも(ベースになった)HM-601を使用していても、背中から首の範囲に限れば大きな不満は感じない。

photo シンプルなワイヤードリモコン

 またHM-603/604の場合、マッサージをしないときでもスタイリッシュな椅子として利用できるというメリットがある。実際、同製品の販売チャネルの中で、とくに実績を上げているのがロフトや東急ハンズなどのインテリア売り場。しかも「指名買いが多い」というのも頷けるだろう。今のところ、同社の“差別化戦略”は順調に推移しているといえる。

 「ロボットにはしない代わり、常に椅子として使ってもらえる。そこが他社製品との大きな違いでしょう」(太田氏)。

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