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ドルビーが考える“次世代ホームシアター”(2/2 ページ)

» 2005年08月02日 04時39分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 ホームシアターが映画館に近い音場と臨場感を目指している以上、映画音響の進歩は民生機器にも影響する。SMPTE(米国映画テレビ技術者協会)がDigital Cinema用の音響として制定したRP-223文書では、最大20ch(18.2ch)の表現チャンネルを定義しているが、民生用のプレーヤーやAVアンプでこれをすべてフォローするのは無理だ。

 「これまでの映画は、フィルムの隙間を使って音声を収録してきたため、ch数の拡大が難しかった。しかし、Digital Cinemaになると制限がなくなる。最大20chは“基本5.1chに追加14ch”(2chは障害を持つ人のサポート用)という構成だが、映画作品によって使用されるchも変わってくるだろう」

 もっとも、映画館も設備投資の負担が増えるため、いきなり複数のchを一気に追加することは考えにくい。松浦氏は「多分1ペアを追加するところから始まると思われるが、サラウンドの細分化、あるいはIMAXのように“高さ”を利用する可能性もあり、実際に誰かが使うまでは分からない状況だ。劇場設備も、自在にスピーカー設定を変える能力を持たなければならない」と指摘する。そしてそれは、ホームシアター向けのサラウンドシステムでも同じ状況だという。

 RP-223文書をチャンネル拡張のリファレンスと位置づけると、8ch(もしくは7.1ch)をサポートした上で、容量的には将来の拡張の余地を残す必要がある。ただ、7.1chに限定した場合ですら、RP-223文書のスピーカー配置パターンに照らし合わせると、7パターンもの7.1chシステムが存在しうるという。たとえばフロントL/Rの外側に「Lw/Rw」(wはwideの意味)を配置するパターン。天井に「Ts」(Top Surround)やセンタースピーカーの上に「VHC」(Vertical Height Center)を配置するパターンなど。仮に記録chと出力設定が一致しないと、ちぐはぐな音響効果になってしまうのは想像に難くない。

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 「映画ソフトの記録ch(音響デザイン)に合わせて、プレーヤー出力設定を変更できるようにしなければならない。たとえばHight成分をフロントL/Rに“溶かし込む”(ダウンミックス)といったことができないか? われわれが検討しているのは、コンテンツが持つch数と各ホームシアターの再生環境が持つch数を自在にマッチさせる技術だ」(同氏)

 松浦氏によると、ダウンミックスもアップミックスも可能な順応性とスケーラビリティを持たせることにより、映画製作者の意図をどのような再生環境下でも再現できるホームシアターをドルビーは目指すという。「たとえばDolby Prologic IIx、Virtual Speakerなどは、そうしたスケーラビリティを実現するための技術といえる。AVアンプは、ビットストリームを伝送するだけではなく、こうした処理ができるべきだろう」。

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