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れこめんどDVD「イン・ザ・プール」DVDレビュー(3/3 ページ)

» 2005年11月18日 19時28分 公開
[キャロルもつお,ITmedia]
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患者たちも個性派揃い

 ほかのキャストも粒ぞろい。まず、田口役のオダギリジョー。彼が勃起症ってだけで笑える。ククっ。でもお芝居ももちろん、ちゃんとしてますよ。オダジョーといえば、最近の作品で言うと「スクラップ・ヘブン」のようなエキセントリックな役柄が似合うイメージ。でも、本作のように、抑えた演技もイケてます。それにしても、彼は出演作が大過ぎ。今年公開作の中からだけでも「パッチギ!」「オペレッタ狸御殿」「忍 SHINOBI」「メゾン・ド・ヒミコ」。絶対に、彼はコピーロボットを持っていて、オダジョー2号、3号がいるに違いないと、わたくし確信しております。

 強迫神経症の涼美には市川実和子。ひょろっとした手足に、独特の空気感を持つ彼女だけど、今回も彼女らしいおかしな空気を振りまいております。プール依存症の大森は田辺誠一。彼、出てきた当初は二枚目路線で行くのかと思いきや、いい役者さんになってきました。今回もエリートで、奇妙さとは無縁なはずの大森が、精神安定のためにプールに通い始め、プールなしではいられない状態に次第に陥っていく様を、巧みに演じているよん。

 脇キャラもイイ味を出しまくる曲者が勢揃い。岩松了、ふせえり、きたろう、三谷昇、綾田俊樹、嶋田久作などなど。よく原作ものの映画化には「読んでから観る? 観てから読む?」との難題が付きまとうけれど、この作品については「どっちでもイイ」。無問題でございます。もちろん、根っこは原作にのっとっているけれど、松尾氏の伊良部医師からして、全くの別物だし。別作品として楽しめます。ただ、「何なんだ? コイツ!?」という伊良部医師に最も重要な印象は、見事に共通しております。そして、メンバーを見てお気づきか? 舞台人が多いのだ。このためか、独特の間が生み出され、一風変わったコメディに仕上がっている。

あのお笑い番組を手掛けた三木聡監督による、ゆる〜い笑いがツボ

 監督の三木聡は、もともと構成作家として活躍してきた人。手がけた作品は「ダウンタウンのごっつええ感じ」「笑う犬の生活」「タモリ倶楽部」「トリビアの泉」とカルト的人気を誇る伝説的な作品が多い。また、2000年まではシャープな笑いがウリのシティボーイズのライブで作・演出を手がけていた。映画監督としては「イン・ザ・プール」に続いて劇場公開された「亀は意外と速く泳ぐ」もヒット。評価も高く、独特の笑いのセンスで、日本映画界に新しいコメディの風を吹き込むだろうと期待されている人物。キャスティングにも彼、独特のセンスが生かされているようだ。

 DVD版には、本編とは別の特典DVDにキャストのインタビューやメイキング映像、リハーサル風景などもたっぷり収録。舞台挨拶での松尾スズキなんて、モロ犯罪者(いや、褒め言葉ですって)っぽくてたまりません。三木監督と松尾スズキのツーショットは、監督と主演男優にはとても見えません(だから、褒め……)。インタビューでは、主要キャストはもちろん、脇キャラを演じた役者さんたちのインタビューも収められていて貴重。三谷さんや綾田さんのインタビューなんて、そんなにちょこちょこ見られるものじゃありません。本編はもちろん、こちらの特典映像も充分なおもしろさ。

 ま、実生活で伊良部医師にお目にかかることもないだろうし、この機会にトンデモ医師に出会ってみるのはオススメ。ただ、登場人物たちの行動に、「あれ、これってどこが変なの? フツーでしょ」と感じたあなたは、要注意かも。ちなみに、わたしは完全ノーマルフツー人間ですから〜。さて、天気もいいことだし、出かけるとしますか。靴下は左からはいて、服は右手から通して、バッグは右に持って。傘は持った。さて出かけるぞ。ガスは閉めたし、鍵は大丈夫だし、えーと、それから電気は……。あともう1回だけ、もう1回だけ、全部、確かめるか。ん、なによ。何か言いたいことでもおあり?

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