ITmedia NEWS >

あなたの知らない理化学の世界――理研公開っぽいかもしれない(3/4 ページ)

» 2006年04月25日 20時23分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

脳科学総合研究センター

 理研は、物理化学だけではなく、医学生物学の領域も広くカバーしている。なかでも脳についての研究を行っているのがここだ。センターの1階には、体験型展示室「ブレインボクス」を作るほどの気合いのはいった展示を行っていた。

photo

 「ブレインボクス」では、脳の仕組みや、神経の構造についての博物館的知識が得られる。とくに体験しやすいからか視覚については、立体視の仕組み、錯視など充実。

 かけると景色が少し左にずれて見えるプリズム眼鏡をかけて、バスケットをしてみるという体験もある。最初は、上手く入らないのだけど、何回かやるうちにちゃんと入るようになる。面白いのはここからで、そこで眼鏡を外す。そうして投げてみると、自分でもびっくりするくらい右に投げてしまうのだ。これも個人差が大きいようで、わたしの次に試した中学生は、あっという間に順応して見事にゴールに放り込んでいた。

photo
photo

 ここからは、上のフロアの研究室の展示。実際に触れるアカゲザルの脳(部分部分に分けられている)とラットの脳。ホルマリンづけにしたものをシリコーンで固定しているので、実際よりもしっかりした感じになっているのだけど、でも「触れる」というのはいい。

photo

 「あの、できれば、素手で触ってみたいんですけど……」といったら、「ホルマリン臭くなりますよ」といわれながらも触らせてくれた。しわ以外の部分は意外につるつるした感じ。脳のしわがなぜあるかというようなことについて、まだ定説はないといいながらも、いくつかの説を教えてくれた。

photo
photo

 このかわいいのは、タイガーサラマンダー。幼生はウーパールーパー型の外鰓をもっているので、いかにも両生類だってわかる。これがかわいいんだそうだ。時々口を「かぱっ」とあけて、「ぱくっ」と閉じるんだって、本当にそういう音がするんだって。幼生の方が大きくて、大人になるときに縮んじゃうというのも妙でいい。

 で、こいつをなんで飼っているかというと、幼生の目玉を取り出して、視神経を通る信号について調べているからだ。光を感じる受容体(receptor、この場合センサーって考えればだいたいあたり)と脳とはそれぞれ神経でつながれているのだけど、この信号はパルスによって符号化されていて、その信号を解析したところ、すくなくとも「明るさ』と「変化速度」の2つの情報を同時に送っていることが明らかになったのだそうだ。まだ他にも解析されていない符号があるそうなので、他の情報も送られているのかもしれない。

photo

 生物の誕生前に脳が作られるとき、大脳皮質のニューロンは、奥の方で作られて、表面に押し上げられてくる。また、あとからできたニューロンの方が、古いニューロンを押しのけて表面に近い側に位置するようになる。

 上の写真は、そのニューロンがあがってくる途中のところだ。右上が表側。すごいのは、このサンプルの取り方だ。まず、誕生前の脳細胞に光るクラゲの遺伝子を組み込んで光る脳細胞を作る。それをスライスした状態で培養させる。そうすると、光る脳細胞が、実際にあがってくる様子が見られるというわけ。1日〜2日かけてあがってくるものだそうなので、みるみる動くというわけにはいかないのだけど、生きた状態で見ることができるわけだ。染色による方法では、細胞は死んでしまうから動きはわからないのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.