ITmedia NEWS >

れこめんどDVD「女必殺拳」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2006年04月28日 20時11分 公開
[サトウツヨシ,ITmedia]
前のページへ 1|2       

東映アクションの煮染めたような昭和なニオイ

 「緋牡丹お竜」「女囚さそり」「仁義なき戦い」シリーズといった昭和の東映アクションが人気を博したのは、娯楽映画の基本「セックス(お色気)&バイオレンス」が盛り込まれていたからだと思います。

 本作では志穂美悦子がストイックな闘う妹である一方、別のところで少しだけエロシーンが挿入されています。

 物語冒頭、紅竜がストリップバーに潜入、踊り子さんがプリッとした昭和なオッパイを披露。もうしばらくして、敵のボスが愛人を抱いてまたポロッと昭和のオッパイ出現。中盤、紅竜の妹がよせばいいのに、わざわざセーラー服姿で父とともに、敵のアジトに兄を返してくれと陳情、つかまってレイプされちゃいます。

 唯一、志穂美悦子が演じたキワどいシーン。それは罠にかかり逆さ吊りにされてしまう絶体絶命の場面です。ムチとローソクが出てきて悪玉のボスが「ぬっししししし」なん吊ってるんですが……。期待を裏切り、いやお約束通りロープが切れる瞬間に華麗な身のこなしで脱出、ピンチを逃れます。 一方、全編に漂うのはバカアクションなテイスト。格闘技マニアのボスが子飼いにするさまざまな刺客が登場するたび、キャラクター名がスーパーインポーズで表示されます。

 「高砂流吹矢 鉄頭僧」は上半身裸にスパッツで民家の屋根に登場。「南半球空手チャンピオン エバ・パリッシュ」が緩慢な動きで空手の形を披露すれば、「タイ式キックボクシング アマゾネス7」なる集団は魚のような死んだ目で淡々と仕事にあたります。

 森の中で遭遇した紅竜と刺客の筆頭・犬走一直。「俺と勝負だ、とぉー」って飛んで着地するとそこは岩場。なんて仮面ライダーメソッドも導入されています。

 また、紅竜こと志穂美悦子が元ビジンダーというのは前述しましたが、犬走役の石橋雅史は空手有段者であり、後に「ジャッカー電撃隊」の悪ボスを演じます。紅竜とともに闘う女拳士・早川絵美は「カゲスター」のパンチラヒロイン・ベルスターを演じたことでもその筋では有名。囚われの身となった紅竜の兄・宮内洋は言うまでもなく仮面ライダーV3。東映ヒーローものオタクにも見逃せないキャスティングとなっています。

そして最大の見どころは無情な死にざま

 名悪役・山本昌平の死にざま。それは「直撃! 地獄拳」でブロンズ像が顔面に直撃し、「先輩! クルマのローン頼みます」と言って死んでゆく倉田保昭に次ぐほど衝撃的です。 本作で刺客を束ねる悪キャラNo.2を演じ、後に悪役商会に所属するなどお茶の間にも顔を出しつつ今なお現役、土気色の肌をした妖怪人間ベム似の名優です。

 物語の終盤、紅竜がいよいよ悪ボスに迫ろうかという場面。闘いを挑むも紅竜にヘッドロックされクビをグキッと180度回転。いわゆるチャッキーもしくはエクソシスト状態となり、かつカッと目を見開き階段を一歩、二歩と降りて力尽き倒れるという、映画史に残る死にざまを披露してくれます。

 本当のラスト、大ボスが上半身裸、白黒のストライプのズボンにかぎ爪という不可解な武闘スタイルになって岩場でピアノ線に吊られて空中戦なんてのは、もう消化試合でしかありません。

 死にざま次点は千葉ちゃんの指刀が土手っ腹に刺さり、腸を出しながら死んでいった杉作J太郎さん似の人。ちなみに刺客・犬走は物語の中盤で道場破りに訪れた少林寺にて、千葉ちゃんに腕を折られてリタイヤ。これもちょいダメおやじの哀愁ですな。

 てな感じな昭和のモツ煮をぜひご賞味あれ。

参考文献:ブルータス(1995年3月1日号)特集「映画死す享年百歳」所収「男の死にざま」


この作品を購入したい→amazon.co.jp

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.