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北米版HD DVDソフトに見る「VC-1の画質」コラム(1/2 ページ)

» 2006年05月02日 12時52分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 先月4月18日から北米でも販売が開始されたHD DVDプレーヤー。それに合わせ、ワーナーホームビデオおよびユニバーサルホームエンターテイメントから、それぞれHD DVDソフトが発売されている。現在のところHD DVDにはリージョンコードが設定されていないため、これらのソフトはすべて日本で販売されている東芝「HD-XA1」でも再生することが可能だ。

photo リージョンコード未設定のディスクは東芝「HD-XA1」でも再生可能

 そこでさっそく、ワーナーの「ラスト・サムライ」「オペラ座の怪人」、ユニバーサルの「アポロ13」を取り寄せ、その画質をチェックしてみることにした。

 テスト環境ではHD DVDプレーヤー「HD-XA1」に、プロジェクターとしてソニー「VPL-VW100」を接続している。

photo 画質チェックに使った北米版HD DVDソフト

”次世代”感を十分に感じさせる北米版ディスク

 日本でもいくつかの映画が既に発売済みだが、試聴はしているものの、残念ながら筆者はまだ入手していない。ただ、マスターの違いなのか、それとも圧縮の違いなのか、北米版ディスクの方がおおむね好ましい画質に仕上がっているようだ。

 3枚の北米版ディスクを見る限りには、ワーナーとユニバーサル、それぞれの映画スタジオごとに特色のあるオーサリングが行われている。いずれもiHDを用いたアドバンストコンテンツで、メニューなどの作り方が違うのだが、何より収められている映像の作り方が全く違う。

 ワーナーの2枚は、いずれもフィルム感を感じさせる粒子(グレイン)がフィルターでキレイに取り払われており、スクリーンに近付いても”ツルツル”の滑らかな描写だ。輪郭はDVDに比べるとスッキリと細めに仕上げられているが、僅かにシュートが付けられている印象もある。解像度が高い分、ディテールもDVDより多く残っているが、若干、細やかなテクスチャが消え気味と思える場面もある。

 対するユニバーサルのディスクはフィルムグレインが、ほぼそのまま残されている。場面ごとに異なる感度のフィルムが使われている様子が、シーンごとのグレインの変化でハッキリ感じられるほどだ。輪郭はスッキリとボケ感なく仕上げられているが、オーバーシュートは全く付けられていない。サターンV型ロケットのシルエットなどを見ると、実に美しい。アポロ13はSuper 35フォーマットで撮影されており、元々のフィルム自身の解像感はやや低めと推測されるが、元のフィルムが持つ雰囲気を1080Pの解像度を用いて上手に表現している。

 ワーナーの2枚に関しては、ステレオサウンド社の月刊HiViで堀切日出晴氏との鑑賞記が掲載されるので、ここではあまり多くを触れないでおくが、グレインをフィルタで落とした映像とはいえ、高解像度が生み出す情報量の多さは圧巻だ。

 グレインをきちんと再現するにはビットが多く割り当てられていなければならず、グレインにビットが取られると圧縮時の歪みやノイズが出やすい。ワーナーのディスクはグレインがない代わりにブロック歪みやモスキートノイズが少ない。一方、アポロ13はオリジナルのフィルムが備える質感をもディスクに封入しているが、ブロック歪みが散見され、空間周波数の高い場面ではモスキートノイズが見られる。

 個人的にはトータルの評価でアポロ13の、いかにも映画らしい、映画館で鑑賞しているような雰囲気が気に入ったが、パッと見た感じはワーナーのディスクも十分に次世代を感じさせるものだ。

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