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れこめんどDVD「ピーナッツ プレミアム・エディション」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2006年09月08日 12時44分 公開
[皆川ちか,ITmedia]
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おっさんたちの応援歌。決してコメディ映画ではありません

 一時代を築いた「笑う犬の生活」での持ちキャラ「ミル姉さん(映画についてうんちくたれる牛の姉さん)」「大嵐浩太郎(過剰な演技の映画スター)」など、映画への偏愛をたびたびコントでも見せてきた内村光良。映画監督は「究極の目標」と語る彼の初監督作「ピーナッツ」は、野球映画である。

 内村演じる主人公・秋吉は、愛車のベスパにまたがって久しぶりに地元に帰ってくる。晴れた日には富士山を望める富士沢商店街は今やすっかりさびれ、ニュータウン再開発の候補地となっていた。

 名門草野球チーム「ピーナッツ」の元メンバーで、現在はスポーツライターを生業としている秋吉は、「新生ピーナッツ」を立ち上げようと決意。かつての仲間たちと再会するが、10年経過してすっかり中年になった面々は、それぞれにしょっぱい事情を抱えていた……。

 本業は芸人であるNO PLANのメンバーが、ほぼ全員本格的に演技に初挑戦。それぞれの個性によった役柄で、本業では決してさらさない類の表情を見せてくるのに、ドキッとくる。特に負け犬・大竹一樹の涙に。

 随所でギャグのシーンはあるものの、決してコメディ映画ではありません。いい年こいたおじさんたちが、日々の忙しさにかまけて忘れてしまった夢だの友情だの勇気だのを、取り戻そうとする映画です。いい年こいたおじさんたちが、若者並に、いやひょっとしたら若者以上に青臭く、そして全力で、一所懸命になってる映画です。

 監督・内村は、前半部ではメンバーの日常を丹念に描き、後半部で、約30分間にわたる試合シーンをもってきている。特典ディスクの「裏ピーナッツ番外編(メイキング)」に詳しいけれど、野球の場面はすべてノースタント。内村がバク転をきめるノック練習、ピッチャー三村とゴルゴがへろへろになるまで球を投げ、スラッガー・レッドがスライディングet…c…。本来だったらスタントマンがつとめるだろうこれらアクションを、出演者たち本人が、必死こいてこなしている。

 もちろん平均年齢37歳のおじさんたちの動きは、正直、後半はちょっと苦しい。具体的には三村。多分、演技だけではなく、本当にぜーはー言っているのだろう。動きにキレがなくなって、全力で走るあまり、脚がもつれて絡まってしまう。

 もう若くはないんだな、俺たち、と、おじさんたちは痛感する。そして、それでもやるんだよ、となおふんばる。少年のように。そこにこそ、この物語の大切なものが込められているように思える。すなわち、“少年”とは、実年齢ではなくて“心”の在りようなのだ、と。

 監督・内村が、ジャッキー・チェン映画と同じくらい大好きだという「がんばれ!ベアーズ」で、子供たちがやっていたことを、おじさんたちがやっている。「内村プロデュース」の時からこの人たちは、やりたいことは何でもやってきた。そうしてとうとう映画まで作り上げてしまった。それも、こんなにひたむきで可愛いやつを。彼らはおじさんであり、同時に少年でもあるのだ。このスタンスは見習わないとなあ。

「内P」の番外編的な特典も必見

 お楽しみの特典は、本編の2倍以上の254分(長すぎ!) 。NO PLANの6人が久々に集合して、本編をみんなで観ながらツッコんだり、褒めあったり、自画自賛したり、照れたりする「映像コメンタリー」。ここでもふかわりょういじりが……。

 撮影風景をはじめ、ゲスト出演芸人あれこれ、監督・内村のマネージャーのトミー、さまぁ〜ずの後輩・高橋も少し登場する「メイキング」(ナレーションはふかわ。やはり愛されていますね)。「内P」の番外編的趣向を凝らした内容なので、確かに長いけれど、おのおの芸人魂を発揮していて、飽きません。

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