新世代シネマDSP搭載のピュアオーディオ基準AVアンプ――ヤマハ「DSP-AX2700」レビュー(3/3 ページ)

» 2006年11月02日 00時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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一新したシャーシ構造が安定感のある音質を支える

 もっともDSP-AX2700になっての音質キャラクターの違いは、DAコンバータや音質調整によるものだけではないようだ。今回の製品では、ベースのシャーシを完全に置き換えているが、その成果が音となって現れている。

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 アンプの世界では“揺れれば音が変化する”のが常識だ。自らが駆動するスピーカーから出る音により部品が揺れ、音質が変化する。一方的に固めれば全てが解決するというわけではないが、しかしベースシャーシの強度が無ければ、そもそも音質を積極的にコントロールはできない。

photo ヤマハAV機器事業部 商品開発部 ハードウェア開発グループ主任の野崎昭彦氏

 メカ設計を担当したヤマハAV機器事業部 商品開発部 ハードウェア開発グループ主任の野崎昭彦氏は「従来は既存シャーシの底板に追加したダブルボトム構成で強化していましたが、今回はシャーシ単体で剛性を出せるようにしました。加えてヒートシンクを底板に直付けし、構造体メンバーとして利用するなどの工夫を行い、従来以上の強度を確保しながら信号経路は短くなっています」と自信を見せる。トップカバーもエンボス加工によりビビリが抑えられた。

 DSP-AX4600でも底板を2重にするなどで強度は確保していたが、再設計することで補強メンバー位置が最適化され、より作りやすく、なおかつ設計の自由度が増す。さらに音質調整という面でも、初期シャーシがしっかりしていれば、ネジや部材の品種(素材)を調整することで音質調整できる。

 つまり音質調整の幅、懐が広く、なおかつコスト面でも有利(同じ値段ならば、さらに音質材料にコストを振り分けることができる)になったのである。

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不自然さの消えた音場効果

 さて、機能面にも目を向けよう。DSP-AX2700で注目したいポイントは3つ。CinemaDSPの改善、日本語対応のiPod連携機能、それにHDMI端子の強化だ。順を追って紹介していこう。

 CinemaDSP Plusと名付けられた新しい音場プログラムは、一部に名称変更されたプログラムもあるが、基本的なコンセプトや構成は変化していない。しかし、プログラム処理の手法が変わったことで、結果としての音場効果には大きな違いが出ている。

photophoto 仮想音源分布および反射音パターンの新旧比較(Hall in Vienna)。左が旧データで、右がDSP-AX2700データ

 従来のCinemaDSPでは、初期反射音を発生順に処理可能な本数までエミュレートしていた。しかし、この手法ではほかの音にマスクされる微細な反射音までエミュレートするため、効率が悪い。そこでCinemaDSP Plusでは、レベルの高い反射音から順にエミュレートする。

 こうすることで時間軸方向により広範囲な反射音の生成が行われるようになり、より自然な音場が作られる。音場プログラムの効果が過多に感じられなくなり、余韻の消え際の表現もより繊細。エフェクト音の出所が曖昧になり、音場効果をかけることによる嫌みが少なくなる。

 これならば、やや狭い部屋で広い音場空間を作りたい時、あるいは音楽を聴く時にホール感を出したいといった時など、様々な場面で“使ってみたくなる”はずだ。特に「Drama」の仕上がりは良い。適度な音場の広がりと明瞭なセリフが特徴で、ヤマハ製AVアンプの特徴であるフロントエフェクトスピーカーの効果を実感できる。

 また、ネットワーク音楽再生やネットラジオ、USBメモリ再生などDSP-N600の機能を内包した上で、日本語の曲名などメタ情報表示に対応。圧縮により失われた高域を推測・付加するミュージックエンハンサーの設定も、より上品なセッティングとなった。

photo 各種の設定機能、ネットワーク/USB機能やiPodのブラウズなどを見やすくする「日本語GUI」

 HDMI端子は1.1から1.2a対応となり、3系統の入力が行える。HD DVDやBlu-ray Discに対応したプレーヤー/レコーダーは、いずれもHDMIのPCMマルチ音声に変換出力する機能がある。DSP-AX2700は24ビット192kHzの音声を8チャンネル分(7.1チャンネル)受け取ることが可能なため、将来にわたって各ディスクの能力を引き出せる。

 音質という基本をしっかりと抑えながら、しかし上記のように最新の技術トレンドを盛り込んだことで、エクスキューズのない製品に仕上がった。20万円前後の価格帯は、AVアンプというカテゴリにおいて激戦区だが、年末商戦期においてその激戦区に投入したところにもヤマハの自信がうかがえる。

 音質だけではなく、機能だけではなく、端子数だけでもなく、ネットワーク機能だけでもない。あらゆる要素を高次元でバランスさせたところに、本機の魅力があると言えよう。

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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年12月31日