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れこめんどDVD:「スーパーマン ディレクターズカット版(Blu-ray Disc)」DVDレビュー(3/3 ページ)

» 2007年04月27日 08時56分 公開
[飯塚克味,ITmedia]
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画質が良すぎて、マーロン・ブランドが滑稽に

 CH-4ではクリプトン人の衣裳の面白さに気付かされる。実はアルミ箔を貼り合わせただけの衣裳なのだが、照明で反射させることによって、全く別なものに見せているのである。ところが画質が良すぎるあまり、ところどころアルミ箔の質感が出てしまっている。ほんのわずかな出番で史上最高のギャラを獲得したマーロン・ブランドがそんな衣裳を着ていることに少し可笑しさを感じてしまった。

 CH-6でクリプトン星は最後の時を迎えるが、崩壊シーンでは落下してくる破片の様子が手にとって見えてくる。現在のように後で合成した訳ではないので、きっと俳優たちは大変だったであろうと思われる。

 CH-9はクリプトン星から父カル・エルの手によって地球に送られてきたスーパーマンことジョー・エルが育ての親、ケント夫妻と出会う場面だ。隕石から出てきた丸裸の男の子がとても可愛らしい。ジョー・エルが乗ってきた隕石の落下の音響も重低音が効いて、迫力がある。

 CH-10からはクラーク・ケントの高校時代のシーン。人のいないグラウンドでボールを蹴るところや、列車との競争など、見る前は結構アラが見えてしまうのでは心配したが、画質がアップしても特撮に乱れが生じないのはさすがだ。

 CH-11は育ての父から人生訓を教わり、そして彼とケントが永遠の別れをすることになる名シーンだ。広大な田舎の風景が見ているこちらの心の傷までも癒してくれるかのような映像になっている。

ドナーの演出力に感嘆、映像の情報量にも圧倒

 CH-12でクラークはグリーンのクリスタルを発見。自分の運命を感じた彼は母親に別れを告げて、北極に向かう決意をする。このくだりはほとんど台詞がないものの、誰にでも内容が伝わる場面になっており、改めてドナー監督の演出力を感じさせるものとなっている。風で揺れる枯草の立体感も増し、映像の情報量に圧倒される。

 この後、クラークは北極で実の父親が残した場所で人類の歴史を学んでいくのだが、シーンの終わりにようやくスーパーマンがおなじみの姿で登場する。ここまで時間にして50分。現在の映画ならば、決して許されないような構成だが、じっくりとスーパーマン誕生の過程を見せることで、我々も彼と同じような時間軸で生きているかのような感覚を覚えさせてくれる。多くの人がこの映画を愛しているのは、スーパーマンが決してただの超人ではなく、我々と同じように親との別離を経験し、友達との人間関係に悩む普通の人として描かれているからではないだろうか?

 CH-15で舞台はいよいよ現代へ。クラーク・ケントが仕事をすることになるデイリー・プラネット社では各デスクに巨大なタイプライターがあったりして時代感が露わになっている。ロイス・レインの着ている服にも70年代らしさが感じられ、懐かしく思う人もいるだろう。

 CH-20ではデイリー・プラネットの屋上でヘリコプターの事故が発生し、ロイス・レインが絶体絶命の大ピンチに!見る方もドキドキの場面だが、ここでついに満を持してスーパーマンが登場する。電話ボックスが見当たらず、変身場所を探すクラークの姿がユニークだ。

 ロイスを助けた後、上から落下してきたヘリを片手で持ち上げる芸当を見せるスーパーマン。赤のマントに青の衣裳、胸の“S”マークまで色味をしっかり再現しているのは、Blu-ray Discならではの表現だ。一躍、街のヒーローとなった彼は次々と犯罪者を逮捕。その合間には木の上から降りられないでいる猫を助け、飼い主の少女に手渡すなんて、ちょっといいこともやってくれる。

 CH-24ではスーパーマンが自分の虚栄心とどう向き合うべきか悩む場面だが、この場面の必要性は論議が分かれるところだろう。自分はなくてもいいかと思ったのだが。

空中デートの浮遊感は格別

 CH-27はロイス・レインとの空中デート。合成のため、背景のフォーカスが甘くなってしまうのはこの時代の特撮の宿命なので仕方ないだろう。それでもこの場面は最高にロマンチックで、思い切り浮遊感を味わえる。スーパーマンから思わず手を離してしまうロイスの気持ちも分からなくはない。

 CH-30ではジーン・ハックマン演じる宿敵レックス・ルーサーが地下基地で、資料を探している場面だ。本の一部にクモの巣が張ってあるのには今回初めて気付いた。

 この後はレックス・ルーサーが軍隊のミサイルを操って、西海岸を壊滅させようとする展開になる。一方スーパーマンは、自分の能力を奪ってしまうクリプトナイトを前にし、大ピンチに。西海岸にはロイスたちが取材に訪れている。スーパーマンは危機を脱し、ルーサーの計画を阻止し、ロイスを助けることができるのか?となっていくのだが、クライマックスには衝撃の展開が待っており、これを許せるか許せないかで、映画の評価は大きく変わるだろう。しかし映画全体の感動は昔と全く変わりなく、本作を高画質のBlu-ray Discで楽しめるようになったことは大いに歓迎したい。

残念なのは吹替え版が収録されてないこと

 残念なのは吹替えが入っていないので、子供と一緒に楽しみづらい点だ。残念ついでに言うと、ジャケットのセンスが今ひとつなのももったいない。マーロン・ブランドの写真は権利上使えなかったのかもしれないが、切り貼りしたようなこのデザインではせっかくの名画もランクダウンして見えてしまう。ハリウッド側が日本にこのデザインを押し付けてきたのかもしれないが、何とかならないものだろうか。

 特典は音声解説、2種類のメイキング、スクリーンテスト、予告編、ミュージックトラックを収録。スクリーンテストではボディを鍛える前のクリストファー・リーヴが映っており、痩せている時はまだそれほどスーパーマンらしく見えないのがちょっとユーモラスに見えた。また予告編では何と「猿の惑星」のサウンドトラックが使用されており、ちょっと驚かされた。

とはいえ、このBlu-ray Disc版はAVファン必携!

 DVDは豊富な特典のボックスが発売されたばかりだが、画質にこだわる人や、スクリーン再生しているようなAVファンなら、間違いなくこのブルーレイは買いのはずだ。少年時代にこの作品に出会った人も多いと思うので、是非この機会に見直してもらいたい。きっとあなたも空を飛べるはずだ。

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