Zを超えた機能と映像美の秘密――開発者が語る新REGZA「H3000シリーズ」東芝REGZA開発者インタビュー(2/2 ページ)

» 2007年05月09日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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レビュー:磨き上げた画質と録画機能、新「REGZA」H3000シリーズを試す

大幅なアップデートを受けて発売された東芝「REGZA(レグザ)H3000シリーズ」の中でも、最大サイズとなる52V型モデルを試用した。外付けHDD用の高速インタフェースと新しい液晶パネルを得てREGZAはどう変わったのか。本田雅一がチェックする。


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――Z1000Z2000とITmediaではメタブレイン・プロについて取材してきましたが、あらためて“メタブレイン・プロの本質”を、開発者自身の言葉で表現していただけませんか?

photo 東芝デジタルメディアエンジニアリング エンベデッドシステムグループの住吉肇氏

住吉氏: 元々のコンセプトは“アナログの質感表現をデジタル技術で出す”ことです。デジタルの画像処理は演算の繰り返しです。放送やDVDなどの映像ソースは、すべて8ビット階調しか持っていませんが、演算を繰り返す中で多ビットになっていきます。使える半導体の規模、つまりコストを考えると、内部精度はせいぜい増やしても10から12ビットです。しかし、メタブレイン・プロは中で膨らんだデータは、全部そのまま後段に持って行きます。本当にそこまでやる必要があるのかという声もありましたが、実際にやってみると質感の表現力が全く違ったんですよ。

 東芝は液晶ディスプレイの階調を上げるための疑似階調技術“魔方陣アルゴリズム”を使っていましたが、これをさらに改良した“魔方陣アルゴリズム・プロ”を使うことで、最終段での階調の割り付けも細かく行っています。その成果は色数の多さといった点で確認していただけます。

――メタブレイン・プロというと、ヒストグラムを取って動的にガンマカーブを変化させる機能がよく知られていますが、こうした動的な補正は視覚心理モデルを利用することで、再現能力の低いディスプレイ方式でも階調表現が豊かに見えるように仕立てたというところでしょうか。しかし、この点は誤解している人も多く、動的な画質調整を行う部分がメタブレイン・プロの真骨頂と思っている人も多いでしょう。

住吉氏: 私はもともとアナログLSIの設計を行っていましたから、どうしてもデジタルで情報が失われることに抵抗があります。アナログ的デジタル映像処理エンジン――それがメタブレイン・プロの真骨頂です。動的に映像を調整しながら映すというのも、そうした補正をかけても十分な階調があるからこそ効いてきます。ある部分の階調だけを広く見せようとしても、その部分に情報がなければ単に見栄えがちょっと良くなるだけです。より多くのリアルな情報があってこそ、よりリアルに見せるためのテクニックが生きてくるのです。動的な画質調整については、メタブレイン・プロに内蔵されている高画質化専用CPUで処理を行うので、ファームウェアのバージョンアップでより進化を遂げられるようになっており、今回のH3000でもさらにリアルな映像を目指して改良を重ねております。

「メタブレイン・プロ」とは?

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REGZAの高画質を創り出す映像処理回路で、最新技術と人の感性が凝縮された映像エンジン。「映像の東芝」の先進技術を結集し、緻密性、奥行き感、階調性、そして質感までも美しく表現。自然なきめ細やかさで、真に迫るリアルな映像美を描く。映像を1枚1枚の画像としてヒストグラム解析し、人間の感性に基づいたパラメーター調整をシーンが変わるたびリアルタイムで行うことで、その高い理想を実現している。

「メタブレイン・プロ」についてのより詳細な記事はこちらをクリック。



――ではそのメタブレイン・プロについてですが、Z2000からH3000では画質面での変化はあるのでしょうか?

住吉氏: 今回のH3000では、バージョンアップで高画質化を行いました。まず質感リアライザーが機能アップしました。従来、画面全体のヒストグラムを使って全体のガンマなどの自動制御を行っていましたが、今回は画面周囲に出る可能性がある黒帯を除外して処理するようになりました。自動的に黒帯なのか、黒バックなのかを判別し、より正確に狙い通りの画質を引き出します。主に映画の暗いシーンなどで立体感に明確な違いが出てきます。

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 普通に考えれば、黒帯を除去することなど簡単な話に思えるかもしれませんが、様々なコンテンツでチェックすると黒帯の輝度分布や安定性は千差万別であって、安定的に動作するアルゴリズムの完成まで開発に約1年かかりました。結果的にはダイナミックガンマ補正用とヒストグラム・バックライト制御用の黒帯除去回路は独立したものになり、それぞれの機能に最適なアルゴリズムを搭載することになりました。

 肌色表現のパラメーターを変更し、中間輝度領域の表現を変えています。特定輝度レンジの肌を中間輝度レンジに維持することで、肌が黒ずんだり、白飛びするのを防ぐようになりました。同様に白の質感表現にも手が加わり、ハイライト近くのディテールをより広く見せ、陰影の描写が深くなるようにしました。

 またディテールリアライザーも進化しています。青空など、なめらかな階調表現が必要なエリアを検出する手法を変更し、より正確に検出した後にパラメーターを最適化した処理を行うことで、放送時のノイズが目立ちにくくなってています。

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「質感リアライザー」とは?

photo ※イメージです

映像に対して7種類のヒストグラム検出を行い、ハイライト部分の“飛び”や影の“ツブレ”の中から「肌色」などの特定の色を見つけ出し、飛びやツブレを補正しながら、検出した色の中間調を豊かにする映像処理。たとえば「人の顔が影でツブレ気味のとき、埋没している肌色を見つけ、いきいきとした肌を表現」「暗い夜景に含まれるビルのディティールを描き出す」「日差しの降り注ぐ雪景色の中で雪の凹凸が見えてくる」といった効果が期待できる。


ディテールリアライザーとは?

photo ※イメージです

1シーンごとに画面の精細度をヒストグラム検出し、画像の部分ごとにきめ細やかさをコントロールする映像処理。青空のような滑らかさの表現が必要となる部分ではざらつきを抑え、きめ細かな絵柄の部分では鮮鋭感ある映像を再現する。



――以上はメタブレイン・プロの話ですが、絵作りの面でも手が加わっているのでしょうか?

photo 東芝 テレビ事業部 TV設計第一部 第二担当 参事の永井賢一氏

永井氏: もちろん、新しい機能に応じて変化させています。特にハイライト部分の表現には手を加えています。従来は中間調の表現力に多くの幅を与えていましたが、それをもう少しハイライト側の表現にも使うことで、白の中の階調が見えやすくなっています。

 映像モードですが、入力信号ごとに映像モードを記憶できるようにして利便性を高め、さらに映画モードはバックライトを明るめにしてやや明るめのリビングに最適化し、映画プロやテレビプロは逆にバックライトを抑え目に制御して暗い部屋に合わせてあります。一般的なリビングで明かりをつけたまま映画を鑑賞する人は映画モード、暗い部屋で観る人は映画プロというメリハリをつけたわけです。テレビプロを暗くしたのも同様の理由で、よりマニアックに映像を楽しみたいユーザー向けに最適化しました。

 また、ダイナミックガンマの動作を10段階に調整可能にしましたので、設置している部屋の状況に合わせて、より詳細にユーザーが好みのガンマカーブに調整可能になっています。ほかにも、ゲームを楽しむ時に使っていただきたいゲームモードや、PC入力専用に画面の明るさやシャープネスをチューニングしたモードなどもあり、かなり充実しています。これらの高画質化アイテムを取り込むことにより、HDD内蔵による利便性と高画質を両立させたテレビに仕上げました。

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 ニューモデル「H3000シリーズ」について、その開発経緯や製品の特徴、心臓部であるメタブレイン・プロの進化、そして絵作りの改良点などを、REGZAシリーズの企画・開発メンバーに話を聞いた。実際の画質のインプレッションや操作性、様々な快適機能の紹介は、「レビュー編」で詳しく述べていきたい。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年6月22日