昨年発売されたDSP-AX2700では、ヤマハ独自のデジタル音場処理プログラムであるシネマDSPが本格的にモデルチェンジされ、シネマDSP-plusとなった。
シネマDSP-plusは、反射音を時間軸方向に処理可能な本数だけ処理していた従来の手法を見直し、音量の大きな反射音から順に処理可能な本数をシミュレートする手法へと考え方を変更している。これにより、処理能力の限界から反射音が突然なくなるといった不自然な振る舞いが少なくなる。特にエントリー機向けの処理能力の限られた信号処理回路では有効な手法で、特に本機の場合は前モデルに比べて大幅に自然なDSPプログラムを実現している。
また、パワーアンプ部に関しても高音質のパーツ・電源ユニットを採用するとともに、サラウンドバック用アンプを左右のフロントメインスピーカーに割り当て、バイアンプで駆動する機能が加わっている。これにより能率の低いスピーカーや比較的大きなウーファーを持つスピーカーの駆動も余裕を持って対応できるようになっている。
さらにSCENE機能は、4つのダイレクトボタンにより、入力と音場プログラムを同時に変更する機能を実現する。各ボタンには入力端子と音場プログラムを自由に割り当てが可能で、ユーザーはシーン(たとえばDVDを見る、CDを聴くなど)を選ぶだけで、いつも使っているお気に入りのDSPプログラムが自動的に選択されるというものだ。
もちろん、従来機種から採用されている自動音場補正機能のYPAO、圧縮音楽で失われる音場感を復活させるミュージックエンハンサー、iPodをダイレクトに接続してコントロール可能なiPodドック(オプション)などの機能も継承されている。
さて肝心の音質だが、昨年モデルのDSP-AX759はS/N感の良さと繊細な質感表現が魅力のAVアンプだった。特にデジタル入力ソースを内蔵DACで鳴らした時の音質に、価格以上の価値を見い出していたが、本機の音質傾向はやや異なる。
低域は、エントリークラスにありがちなレンジ感や低域全体の量感を演出するタイプではなく、パンチやスピード感を重視したタイプ。量感はやや控えめだが、その分、切れよく聴かせる。中域から中高域にかけては実に活発な印象で、明るく抜けの良い、音離れの良い音が楽しめる。S/N感を良くした結果、やや音場全体を支配する残響感が弱く聴こえる傾向もあるが、これは新しいシネマDSP-plusを組み合わせることで大幅に緩和することができた。
昨年のDSP-AX759がターゲットとしていたポピュラーやロックミュージックを好むファンに対して、ワンランク上の価格帯であるDSP-AX761で後継機を示したという印象。しかし、重ったるさのない音の出方は、ジャズファンをも受け入れることができるだろう。
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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年6月9日