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ドルビーに聞くハイビジョンホームシアターの現状(後編)(2/3 ページ)

» 2007年06月19日 12時28分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 具体的にいいますと、まずUS市場では今までリニアPCMを推していたソニー・ピクチャーズが、「Stomp the yard」でTrueHDをサポートしました。われわれとしては“ついに出た”という感じですね。日本市場向けの商品の仕様については不明ですが、少なくとも頑なにリニアPCMを採用してきたスタジオのスタンスが変わってきた、ということは確かです。

 また、日本市場についても、バンダイビジュアルの長編アニメが夏秋にかけて導入されますし、キース・ジャレットなどの音楽ソフトがHD DVD作品として既にリリース済みです。

 ソフトと機器は、ある意味“卵と鶏”の関係です。制作スタジオは、デコードできる機器の数を気にしますが、ユーザーの目には対応ソフトの数が重要でしょう。機器側は増えてきましたから、今後はソフト側の対応も加速してくるのではないでしょうか。

――Dolby Digital Plus(以下DD+)とDolby TrueHDでは、7.1ch音声に対応していますが、対応するソフトが出てきません。その理由は何でしょう。

 映画作品についていえば、まだ7.1ch音声ソフトを作った例はありません。現在はファイナルミックスも5.1ch、またはDolby Digital Surround EX用の6.1chなのです。

 フォーマット上は、Blu-rayもHD DVDも7.1chをサポートしていますが、これはドルビーやdtsが提案したわけではありません。映画産業がデジタルシネマで定義している20を超えるスピーカーロケーション(チャンネル配置)によって実現されるサウンド表現の一端を、家庭用HDパッケージメディアで再現することを2つの光ディスクフォーマット制定団体が望んだことからきています。

 その際、ホームシアターに劇場と同じスピーカー数を設備することは考え難いので、家庭向けとして7.1chを(20以上のスピーカー配置から)ピックアップできるように定めたのです。ただ、デジタルシネマの運用がまだ流動的ですから、Blu-rayやHD DVDでの運用も現状ではフレキシブルにしておく必要があるのです。

photo 7.1chの行方(出典はドルビー日本支社)

 したがって、7.1ch対応ソフトの登場も、今後デジタルシネマがどのように運用されるかに大きく左右されるでしょう。たとえば、ハリウッドが何か超大作を作り、それをディスク化するときに(セールスポイントの1つとして)7.1ch化するという流れが考えられます。すでに両フォーマットとも7.1chに対応していますから、いつ出てきても不思議はないと思います。

――では、実際に7.1chソフトが登場したとき、ユーザーはどのようにスピーカーを配置すればよいのでしょうか? また5.1chシステムのままで運用する場合に問題はありますか?

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