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ドルビーに聞くハイビジョンホームシアターの現状(後編)(3/3 ページ)

» 2007年06月19日 12時28分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 既に述べた通り、スピーカーロケーションについては複数の可能性があります(前ページの図参照)。まず7.1ch対応ソフトが登場して、しばらく運用してみないと、どれに落ち着くのかわかりません。そういう意味では、まだ先の話といえます。

 ただ、「Dolby Digital Plus」や「Dolby TrueHD」は、どのようなチャンネル配置の7.1コンテンツであっても5.1chシステムで問題なく再生できる仕組みを提供しています。

 Dolby Digital Plusの典型的な7.1ch再生である「バックサラウンド型7.1ch」(背後にスピーカー“Lb/Rb”を追加するスタイル)を例にして、5.1システムでどう再生されるか説明しましょう。

photo DD+ 7.1chエンコードの仕組み

 まず、スタジオで7.1chソフトを制作する際、7.1chのファイナルミックスから、5.1ch環境でも適切な再生表現になるよう、LsとLbの情報を持つ「Ls'」、RsとRbの情報を持つ「Rs'」を作り、5.1ch(L/C/R/Ls'/Rs'/LFE)を構成します。この5.1ch音声をDolby Digital Plusの「主データ領域」(Independent Substream)に格納します。次に、元の7.1chファイナルミックスからL/R/Cを除く4chサラウンド(Ls/Rs/Lb/Rb)を「副データ領域」(Dependent Substream)に入れます。

 このようにしておくと、7.1chのシステムで再生する際には、主データ領域にあるミックスされたサラウンド音声(Ls'/Rs')を、副データ領域のサラウンド4ch(Ls/Rs/Lb/Rb)に単純に置き換えるだけで、ファイナルミックスと同じ7.1ch音声を再生できます。

 一方、5.1chシステムで再生する場合には、副データ領域を使用せず、主データ領域にある5.1chだけを再生すればいい。エンコード時にスタジオで適正にダウンミックスされた5.1ch音声を楽しめるのですから、どちらも制作者の意図を忠実に反映した音といえるでしょう。

――では、従来にない配置の7.1chだった場合はいかがでしょう。もちろん、ソフトにあわせてスピーカーの配置を変えるような上級ユーザーでしたら問題はないと思いますが、皆がそうできるわけではありません。

 従来のスピーカー配置と大きく異なる場合――たとえばバーティカルハイトチャンネル(VHL/VHR:フロントL/Rの上にそれぞれスピーカーを配置する7.1ch)を使うソフトだったときは、先ほど申し上げたエンコード時に作成された5.1chが再生されます。ただし、この5.1chには、あらかじめVHL/VHRの情報が格納されているので、5.1で再生されてもミックス表現は変質しません。

 われわれが強調したいのは、現在のAVアンプを買った後でさまざまな7.1chソフトが出てきたとしても、音や移動やサラウンド感が極端に変質したり、失われるということはないということです。そもそも、さまざまな形式の7.1chコンテンツが本当に出てくるのか、まだわかりません。

 それには上流にあるデジタルシネマの劇場普及が進み、コンテンツ制作側にある種の“決まりごと”ができるというプロセスが必要になります。おそらく何年もかかることでしょう。ですから、今AVアンプの新製品を購入してハイビジョンパッケージを楽しむことに何も問題はありません。

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