コラム
2007年07月23日 08時00分 更新

小寺信良:

「1世代コピー9th」では誰も幸せになれない (1/3)

コピーワンスを9回まで緩和する方針が出されたが、技術的な可能性や保証金制度とセットになっている点も含め、十分な議論がされているとは思えない。その中で権利者団体の主張は「自爆ボタン」を押しているようにも見える。
小寺信良

 7月13日の各社報道には、「コピーワンス、9回までOKに」の文字が躍った。前日開かれた情報通信審議会が開催する「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」で、この方針が打ち出されたからである(関連記事)。当然ネットでも大きな反響を呼んでいるわけだが、ちょっと待ってほしい。これは何も、これで決まったというわけではないのだ。

 これからさらにこの主査提案を「第4次中間答申」へ正式にまとめ、情報通信政策部会で答申することになる。この検討委員会は総務大臣の諮問機関であるから、総務大臣に「こうしたらどうか」と進言できる、という意味である。

 以前からこの検討委員会で、コピーワンス規制緩和の方向性として、「n回限定で1世代のみコピー可」という方針は出ていた。そのnの数字をいくつにするかで、3回とか4回といった話が出ていたのである。

 そこから考えれば、この委員会の主査である慶応義塾大学の村井純氏が、えいやっと9というカードを出してきたというのは、大幅な進展であると言えるだろう。確かに「n回限定で1世代のみコピー可」という方向性で行くならば、すばらしい成果だ。

 だが、予想したより回数が多いということで、本当に我々はOKなのだろうか?

レコーダーはどうなる?

 ここで思い出しておかなければならないのは、そもそも2006年8月に発表された同じ情報通信審議会の「第3次中間答申」では、「EPNで検討せよ」という話になっていたことである。これが1年の間にパワーバランスが変わって、「n回限定で1世代のみコピー可」に変わっていった。

 EPNがなぜ力を失ってしまったかというと、孫コピーが可能であるということに対して、権利者側が過度な拒否反応を示したからだ。EPNの仕組みについては過去の記事に詳しいが、要するにEPNとはコンテンツは各メディアのDRMの上を渡り歩いてゆく「ライセンス・チェーン方式」である。一見コピーフリーのように見えるが、そうではない。最大の抑止効果は、ネット上に流出しないということである。だが権利者は、孫コピーが存在すること自体が容認できないとしている。

 孫コピーできないが9回もコピーできるならば、一見問題ないように見える。だが、本当にそうだろうか。今回検討している対象は、いわゆるビデオレコーダーに関してである。1つのコンテンツに対して、家族3人が3回コピーして合計9回、さらにポータブル機器や携帯電話なども視野に入っているという。

 しかし、これに関する技術的な可能性や障害は、何ひとつ検討されていない。理想論として言いたいことを言っただけである。ここで孫コピー不可、直接コピーしかできないという意味を、よく考えてみてほしい。これはiPodや携帯電話を、レコーダーに直接つないでコピーせよ、ということである。

 これまでPSPがつながったり、SDカードに転送できるレコーダーは存在したが、今後登場する携帯電話の新モデルや登場するであろう新型iPod、さらには有象無象存在するPMP(Portable Media Player)に対して、レコーダーが接続を保証しなければならない。さらにそれ専用のコーデック、たとえばそこからMPEG-4やDivX、あるいはXviDに、レコーダ自身が変換を行なわなければならない。もちろんコーデックのアップデートにも、そのたびに追従する必要がある。そんなことが可能だろうか。

 そこまでやれるということになってくると、それはもはやレコーダーではなく「PC」である。もっとも昨今のレコーダーは中身的にはもはやPCのようなものだが、そこまでレコーダーに汎用性を持たせることが、権利者側の求めることなのだろうか。

関連キーワード

コピーワンス | 著作権 | DRM | EPN | JEITA


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