コラム
2007年09月18日 08時50分 更新

小寺信良:

クリエイティブ・コモンズに賭けた「コンテンツの未来」 (1/3)

筆者と津田大介氏の「CONTENT'S FUTURE」はクリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)を付けて上梓された。日本ではまだ珍しい形態であることもあり、その意味や意図が誤解されている部分もあるようだ。そのあたりを解説したい。
小寺信良

 いつかはこの問題に触れなければならないと思ってはいたのだが、次第にネットでの騒ぎが大きくなっていくにつれて、当事者であるこちらが気後れしてしまった。8月上旬に上梓した「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(以下CONTENT'S FUTURE)を巡るクリエイティブ・コモンズの扱いについてである。

 この本は、日本の書籍としては珍しいクリエイティブ・コモンズライセンス(以下CC)を付けて発売された。それによる誤解や混乱などがあるようなので、もう一度ここら辺の意味や我々の思いというようなものを、整理してみたい。

 CCをご存じの方も多いとは思うが、その定義付けや意味というのは実に多方面に渡っており、結構やっかいだ。筆者が考えるにCCとは、現時点での著作権法では認められていないような部分の許諾を、著作者自身が積極的に解放していくための意思表示手段である。

 なぜ許諾の意思表示をするかと言えば、あらかじめ二次利用されることを想定しているからである。この利用とは、単に「読む・見る・聴く・使う」ということだけを意味しない。既存の著作物を使って新しく別のものを作るという、制作メソッドをも支援するわけである。

 通常これらの二次制作活動を行なう場合は、オリジナルを作った著作者に利用許諾を取らなければならない。商業利用であるかないかに関わらず、著作権法は広くこれらの活動を制限する。だがあらかじめCCのライセンスを表示しておけば、著作者にいちいち許諾を取らなくても、それをベースにモノを作ってもらって構わないわけである。

 CCはもともと、インターネットという媒体をベースに生まれている。だが書籍である「CONTENT'S FUTURE」がCCライセンスを採用したことは、2つの意味でこれまでのCC著作物とは異なる。

 ひとつはそれがデジタルデータではなく、本という物理物であること。もうひとつは、定価が付けられて一般の書店でも広く売られている、商業物であるということだ。無償でネット上に置かれているモノとは、本質的に異なるのである。

なぜCCを選んだのか

 本書がなぜCCで出版されたか。その経緯は津田大介氏の後書きに詳しいが、簡単に言えば「これからのコンテンツのあり方を語るのに、自分たちだけ旧来の著作権法の安全圏に居るのってどうなの」という思いがあったのがひとつ。もうひとつは、この本を叩き台にして、さらにコンテンツの未来論をみんなで成長させていって欲しい、という思いであった。

 もともと現在の著作権法でも、第33条から第36条の間で、教育機関の教科書や試験問題としての複製は認められている。ただ同時に、補償金の支払いも義務づけられている。

 我々の本はCCにすることで、これら教育機関の利用においても複製・配布が自由で、補償金の支払いを求めていない。また著作権法上で認められていない組織、例えば大学の一般公開ゼミや、どこかの団体が開催する勉強会といったところでの活用も、促進したいと考えている。

 さて、なぜCCだと広く利用できるかと言えば、改変不可、非営利、出典表示の条件が揃っていれば、コピーを配布することが自由だからである。例えばゼミに参加する全員がこの本を教科書として買ってくれれば、そりゃあ印税が入ってうれしいが、たぶん利用されるのは一部だろうし、そこまでしなくても教授が持っている1冊からのコピーで、実用上は十分だろうと思われるからだ。

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[小寺信良,ITmedia]

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