CH-9はRUFに捕まったソロモンの息子ディアが少年兵として鍛え抜かれる場面だ。両親は臆病者と罵られた後に「お前は一人前の男」と持ち上げ、目隠しした状態で捕虜を射殺させる。人を殺したことで落ち込んだら、また持ち上げ、ドラッグを体験させる。そして隊長というポジションを与え、本人に達成感を植え付けるのである。主筋とは直接関係ないが、こうした描写にも手を抜かないところがエドワード・ズウィック監督の映画らしい点である。少年兵については「イノセント・ボイス 12歳の戦場」(2004)でも生々しく描かれていたが、知らない人にはショッキングな内容だろう。
CH-11では釈放され、家族を探すタイミングを狙っていたソロモンにアーチャーが接触する。奇しくも街にはRUFの勢力が迫っており、いたずらに時間を過ごす余裕は2人には残っていない。2人は反発しあいながらも、戦火を逃れ、同じ道を歩むことになる。市街戦の様子はまるで「ブラックホーク・ダウン」を彷彿とさせる。
建物は次々と破壊され、機銃の嵐が街中を吹き荒れる。映像・音響ともに本作が間違いなく超大作であることを実感させてくれる瞬間だ。この後、2人はマディーと合流し、ジャングルの奥地に隠したピンク・ダイヤモンドを探す旅に向かうのだが、最後の最後まで息を抜くことができず、瞬く間に2時間半の上映時間を過ごすことができるはずだ。
Blu-ray Discで見れば、DVDよりも遥かにシエラレオネの雄大さと内戦の恐怖を感じることができるはず。しかし、映像に若干の甘さがあることも認めざるをえない。Blu-ray Discの画質しか見ていなければこういった画質だろうと判断していたかもしれないが、北米で発売されたHD DVDの映像があまりにも鋭く、切れ味の良いものになっていたからだ。HD DVDもいつか国内でも発売されるはずなので、HD DVDユーザーは期待して待っていいだろう。とはいえBlu-ray Discが低画質という訳ではない。あくまでも比較しての話である。DVDとの比較はするのも無駄と思えるほど映像の品位は高い。
特典は監督の音声解説、数種類のメイキング映像を収録しているが、“ブラッド・オン・ザ・ストーン:ドキュメンタリー ダイヤを取り巻く世界”が非常に興味深い。映画で描かれた以降のシエラレオネの様子を、内戦も取材したジャーナリストが辿っていく。
違法なダイヤモンドの流出を許さないキンバリー・プロセスの紹介や、本物の元少年兵にインタビューするなど、とにかく今見た映画が絵空事ではないことを強く認識させてくれるのだ。約1時間もあるパートだが、映画鑑賞後、是非チェックしてもらいたい密度を持っている。
社会派作品などと言うと、どうにも腰が引けてしまう人も多いだろうが、エンターテインメントとしても充分楽しめるものになっている。こうした映画を作り上げた監督も素晴らしいが、参加したスターたちの志の高さにも敬意を払いたい。バブルと言われる日本映画界にもこうした作品を作り上げる猛者にご登場願いたいと切に感じさせられた1本だ。
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