今年の携帯向け液晶のトレンドは?──電子ディスプレイ展(2/2)

【国内記事】 2002年4月19日更新

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 セイコーエプソンが展示したのは,「sRGB」に対応した液晶ディスプレイ。sRGBとは色再現性のための国際規格(技術解説参照)。sRGBはプリンタやディスプレイでも対応が進んでいる。「sRGBに対応していれば,どのディスプレイで見ても同じ色に見える」(エプソン)

 カメラ付き携帯電話や,携帯用Webを使ったオンラインショッピングが普及していく中で,携帯のディスプレイで見た色と,印刷した色,PCディスプレイで表示した色が同一であることが求められていくことになる。

 また同時に色純度の向上も,今年の液晶のポイントになりそうだ。色純度とは,簡単にいえば色の濃度。反射型の液晶などで,色が薄く表示されてしまっている液晶を見たことがあるだろう。濃い色を表示できるようにすることで,高い色再現性を実現できる。

 エプソンでは,色純度がNTSC比60%以上の2インチ液晶を展示。「2002年中のリリースが目標」としている。


左から,色純度がNTSC比16%,30%,50%,60%以上。明らかに色が濃くなっていく


色純度が高くなることで,sRGB対応も可能になった

輝度の向上にも注目

 色純度が向上するにあたっては,1つトレードオフとなるものがある。明るさ(輝度)だ。

 色純度を決めるのは,基本的にはカラーフィルタの厚み。「カラーフィルタを厚くしないと,色純度が高くならない」(エプソン)

 しかしカラーフィルタを厚くすると,透過する光量が減ってしまい,画面が暗くなるという欠点がある。従来同様の明るさを出すには,消費電力を増やしバックライトの数を増やすしかない。

 色純度と明るさのどちらを重視するかは,各社の悩みどころのようだ。日立のTFT液晶の色純度はNTSC比で30〜40%。しかし「日本のマーケットは高輝度のほうに進むのではないか」(日立)と語るところも。

 もっとも,“高輝度かつ色純度も高く”という方向もある。東芝松下ディスプレイテクノロジーは,220カンデラというほかの2倍近い輝度を持ち,色純度がNTSC比60%という携帯向け透過型液晶を参考展示。ただし,消費電力もほかの2倍近い220mWだ。


東芝松下ディスプレイテクノロジーが展示したパネル。色純度を高め,かつ高輝度を実現するため,バックライトを通常の3チップから4チップ構成にしているという

 昨年,NECが「N503iS」に高輝度・高色純度の液晶を搭載したときに,「この方向性もある」と思った液晶メーカーは多いようだ。

 基本的には,消費電力の削減が液晶に求められる最大の要求。しかし消費電力を犠牲にすることで,ほかがうらやむような高輝度・高色純度の液晶が利用できる。「こまめにバックライトの出力を調整するような制御を行えば,こういったディスプレイにも需要がある」(東芝松下ディスプレイテクノロジー)

 輝度の向上,色純度の向上には,反射型や半透過型よりも「透過型のほうが高い位置にもっていける」(エプソン)。液晶の美しさにこだわる流れの中,半透過型でも透過率を増し,反射率を下げるといった傾向がある。一時的にでも,透過型液晶の復活はあり得るのかもしれない。


もう1つの液晶の進化ポイントは,背面液晶。シャープが参考出展したこのパネルは,表がGFカラー液晶,裏がSTNカラー液晶。背面液晶がカラーで,かつ非常に大きいのが特徴だ。もうじき,このセットを使った端末にお目にかかれるだろう

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[斎藤健二,ITmedia]

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