Mobile:NEWS 2003年7月15日 05:35 AM 更新

インクジェット印刷でもOK〜QRコード入り名刺を作ってみる

J-フォンに続き、ドコモも対応機種を投入するなど、QRコードの利用環境が整いつつある。例えば名刺にQRコードのアドレスデータを入れておけば、アドレス帳入力の手間が省けて便利に使えそうだ。携帯電話と相性がいい小型プリンタ「PIXUS 50i」で名刺にQRコードを印刷してみた。

 カメラ付き携帯電話の新しい用途として期待されるのがQRコード読み取り。ポスターや雑誌などの印刷物にQRコードをプリントしておけば、煩わしいURL入力の必要なしにケータイWebにアクセスできるなど、リアルとの連携の橋渡し役として注目されている。ドコモのiモード事業部長の夏野氏は、2003年度末に投入するFOMAにはQRコード読み取り機能を標準搭載するとしている(6月11日の記事参照)。

 コンシューマーユーザー向けにもQRコード生成の手段が提供されている。シャープはJ-フォン向けにPC用QRコード作成ツールを公開(2002年10月1日の記事参照)するほか、J-SH53では端末内にもQRコード生成機能が搭載された。NTTドコモもPCでQRコードを生成するツールを提供している(6月6日の記事参照)。

 名前や電話番号、メールアドレス、URLのほか、ちょっとしたコメントもQRコード化できるため、自分の名刺にプリントしておけば、先方の名刺整理の役に立つほか携帯サイトへのアクセスも促せる。

 ケータイZDNetという携帯電話向け情報サイトを提供していることもあって、ZDNet記者たちの名刺にQRコードを入れようという提案をしてみた。しかし名刺に画像データを追加する場合には別に版を起こす必要があり、まだ対応端末が少なく効果が見えにくい現状での一斉導入は難しいという。

 そんな中、見つけたのがキヤノン製プリンタ「PIXUS 50i」(6月24日の記事参照)。プリント用紙として名刺を使えるため、名刺サイズのデータをWordやExcelなどで作成してQRコードをレイアウトすれば、手持ちの名刺にQRコードを印刷できる。


キヤノンのPIXUS 50iは、ファームウェアアップデートすると携帯電話の赤外線で送り込んだ画像をPCを介することなくプリント可能になる


名刺サイズの用紙へのプリントと、携帯電話やPDAから赤外線で送ったデータをプリントできるのが特徴

QRファクトリーでデータを生成

 J-フォン用とドコモ用のQRコード生成ソフトは、出力したデータ間の互換性はない。例えばJ-フォン用のアドレス帳登録用QRコードをドコモの端末で読み取っても、そのまま使えないということだ。

 ここではQRコードの生成に、ドコモの「QRファクトリー」を使った。このソフトは、アドレス帳データやMail to、Web to、コメントなど用途に合わせて4種のQRコードが生成可能だ。出力サイズはプリントする媒体に合わせて「小」(印刷領域18.55ミリ×18.55ミリ)、「中」(印刷領域24.38×24.38ミリ)、「大」(印刷領域30.21×30.21ミリ)と、印刷領域を任意で選べる「任意」の4通りから選べる。

 出力サイズは小さくなるほどQRコード内に入力できるデータ量が少なくなる。例えばアドレス帳登録用の項目「名前」「ふりがな」「電話番号」「メールアドレス」「メモ」にフルにデータを入力すると「小」のQRコードを選んだ場合には「入力文字数をオーバーしました」というアラートが出てしまうこともある。自動補正機能をオンにすると、セルサイズやセル数を調整して若干多くの文字を入力できるようになるが、セルサイズが小さくなるほど読み取りにくくなるため、バランスも重要だ。


テキスト部分にそれほど多くの情報を入れなければ、すべての項目を「小」サイズのQRコード内に収められる。上の画面くらいならぎりぎり入力可能だ

  • メモ登録時の最大入力文字数/セルサイズ/セル数

自動補正機能オン
全角75文字セルサイズ0.35ミリセル数45×45
全角131文字セルサイズ0.36ミリセル数57×57
全角131文字セルサイズ0.45ミリセル数57×57

自動補正機能オフ
全角65文字セルサイズ0.38セル数41×41
全角75文字セルサイズ0.46セル数45×45
全角93文字セルサイズ0.52セル数49×49

メモ登録はテキストのみが主なデータのため入力可能な文字数が多いが、アドレス帳データの場合は、Phone to、Mail toなどの情報が入るためか、実際に入力できる文字数は少なめだ

PIXUS 50i用のデータを作成

 PIXUS 50iでQRコードを印刷するには、画像取り込みとレイアウトが可能なソフトでQRコードのみをレイアウトしたデータを作る必要がある。印刷したい名刺の大きさと同じサイズで空白のデータを作成し、名刺の余白部分にQRコードをレイアウトすればいい。 BMP形式で生成されるQRコードはプリンタ出力時の約2倍の大きさで出力されるため、レイアウトの際には刷り込む部分の余白に合わせてデータを縮小することになる。ドコモでは、Microsoft WordやExcelでは50%、Adobe Illustratorでは40%に縮小するよう推奨している。レイアウトが終わったらあとは名刺をプリンタにセットして印刷するだけだ。

 試したのは電話帳登録の「小」サイズのQRコードの名刺印刷。自動補正機能をオフにすると文字数がオーバーしてしまうものをオンにしたため、セルサイズが小さくなっている。そもそもQRコード印刷はレーザー印刷が推奨されており、インクジェットプリンタの「PIXUS 50i」にはちょっといじわるな設定だ。

 名刺にプリントしたQRコードは、原寸のQRコードに比べてつぶれているように見えるなど、一見すると読み取れないように見えた。しかしSH505iで読み取らせると、全てのデータをきちんと読み取ることができた。セルサイズ0.35ミリのものをインクジェットで印刷しても、しっかり読めたわけだ。


左が名刺にインクジェットのPIXUS 50iでプリントしたQRコード。右は生成したQRコードデータ

 名刺に印刷したQRコードを読み取るにはちょっとしたコツが必要。特に「SH505i」や「J-SH53」などのメガピクセルクラスのCCDで読み込む場合には、画面いっぱいにQRコードを表示させるより、少し離したほうが焦点距離が合ってうまく読み込める。取り込みのコツさえ覚えてしまえば、Webアクセスや電話帳登録はとても簡単で、便利に使えそうだ。


メガピクセルカメラ搭載のJ-SH53やSH505iの場合は、画面いっぱいにQRコードを写すより、焦点が合うところまで離して写したほうが、すぐ認識された

 なおPIXUS 50iでは、枚数を設定すれば複数枚の名刺を一度にプリントできる。しかし用紙の質によってはすぐ乾かないものもあるのには注意が必要。インクが乾かないうちに次の名刺が重なると、データがずれて読み取れない場合が出てくるのだ。


ケータイZDNetアクセス用QRコードを読み取らせると、このように表示される(左)。アドレス帳登録用のQRコードなら、そのまま携帯電話のアドレス帳に登録できる。クリックでアクセスでき、ブックマーク登録も可能だ。アドレス帳データは、取り込んだデータから通話やメール作成が行え、そのままアドレス帳に登録もできる

便利な一方、課題も

 アクセスを助けたり名刺整理の煩わしさを軽減してくれそうなQRコードは、インクジェットプリンタでも手軽に印刷できることから、さまざまな用途に使えそうな印象を受ける。

 しかし問題なのは、同じQRコードといってもJ-フォンとドコモでは記述方式が異なるため、互換性がないこと。例えばJ-フォン用ツールで作成したQRコードをドコモ端末で読み取っても正しく読み取れず、逆もまた同じだ。このままでは、名刺に情報を刷り込むにもJ-フォン用とドコモ用の2つをプリントしなければならず、メディアとしての汎用性にかける感は否めない。仕様の統一が待たれるところだ。


ドコモのツールで作成したQRコードをJ-フォンのJ-SH53で読み取ると、破綻してしまう。逆もまた同じだ

 もう1つの問題は、QRコードが名刺のデザインを破綻させてしまう点。特に最近では凝ったデザインの名刺も多く、余白もバランスを考えてレイアウトされている。そこにいきなりQRコードを入れてしまうと、デザインのバランスが悪くなってしまうのだ。名刺ならともかく、今後は雑誌などに導入することも想定されている。このままだとファッション誌などは入れたがらないだろう。目立たない色で印刷されていても読み取りを可能にするような工夫が今後必要になるかもしれない。



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[後藤祥子, ITmedia]

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