Mobile:NEWS 2003年7月30日 05:11 PM 更新

Bluetoothが携帯電話を変える?〜Nokia 6650(3/3)


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 ただし漢字をサポートしていない点はいかんともしがたい。個人的なデータだけならば、アルファベットだけでいいという人もいるだろう。今のところ、6650を日本語化する予定はないようだが、ビジネス指向の携帯電話端末としては素性が良いだけに、今後に期待したいところである。

BluetoothでのダイヤルアップはワイヤレスWAN内蔵PCの感覚

 モバイルPCユーザーにとっては、データ連携以上に気になるのがダイヤルアップネットワークプロファイルの使い勝手だろう。PCからダイヤルアップが可能なBluetooth内蔵携帯電話には過去、auから発売されたソニーの「C413S」があった(2001年6月の記事参照)。

 しかしC413SはBluetoothをオンにした状態での待ち受け時間が短く、またBluetooth経由で通信を行うとあっという間に電池が減っていくという問題を抱えていた。一方、PHSの633SはBluetooth利用時の待ち受け時間も長く、通信時の消費電力も許容範囲に十分収まっている。しかしH"ならまだしも、NTTドコモのPHS網に音声端末の役割を担わせるのも少々辛い。結局、携帯電話と併用するならば、コンパクトフラッシュ型のPHSカードを別に持つほうが便利なことも多いのが実情だろう。

 その点は6650で改善はされているが、携帯電話サービスも含めたトータルの視点では50歩100歩の状況ではある。

 まず待ち受けに関しては、毎日の充電さえ欠かさなければ、実用的なレベルに収まっていると感じた。Bluetoothをオンにした状態では、もちろん待ち受け時間は減少する。しかし、出先で長時間のインターネットアクセスでもしない限り、1日電池が持たないという状況には陥らなかった(もちろん使い方次第だが)。少なくともC413Sのように、バッテリーばかりを気にして、Bluetoothのオン/オフを手動で行うといった手間はない。

 認証済み機器からの接続を自動的に許可する設定にしておけば、ダイヤルアップ時に端末側で操作する必要は全くないため、感覚的にはAirH"-inを搭載したノートPCのように6650経由でインターネットに接続できる。PHSカードなどと比べ、契約を携帯電話一本に絞り込めるのも長所だろう。

 しかし現実には料金体系の問題が残る。前述したように、6650はFOMAのW-CDMAをサポートしていないためJ-フォンのネットワークしか利用できず、パケットあたり0.2円というPC用としてはかなり高額なパケット代を支払う必要がある。その上、回線交換による64Kbpsも行えないのだから、個人ユーザーで手軽に6650を用いたダイヤルアップ接続は望めない。

 6650はPCやPDAから、Bluetoothを通じたシームレスなWAN接続を体験するにはいい製品だが、現状ネットワークオペレータ側(携帯電話会社)はそのような使い方に即したサービスを提供できていない。もちろん、それはノキアの責任ではないのだが。

是非とも欲しいBluetoothヘッドセット

 一方、Bluetooth対応ヘッドセットを用いた時の使い勝手は非常にいい。ノキアが6650用に海外で販売しているHDW-2ヘッドセットは、音声に余分なエコーが若干上乗せされるような印象を持ったこと、音量レベルが(最大にしても)小さめだったことの二つが残念だったが、ヘッドセットそのものの使い勝手はいい。

 ヘッドセットにはオンフック/オフフックのボタンが備えられ、端末に触れずに応答/オンフックを行える。自動車を運転している時の応答、メモを取りながら、あるいはPCを操作しながらの通話が非常に快適になる。

 また歩きながら通話しなければならない状況でも便利に利用できた(ちなみに日本ではあまり見かけないが、欧米では街を歩きながらイヤホンマイクで通話している人をよく見る。信号待ちで突然、挨拶をされて驚くこともあるから、日本で同じことをしていると変人と間違えられるかもしれないが……)。

 Bluetoothにはヘッドセットをワイヤレスで実現するプロファイルの上位版として、ダイヤル操作なども行えるプロファイルもある。たとえばカーナビの音声認識機能と連携して、完全にハンズフリーでダイヤル発信するといったことも、カーナビ側の対応次第では可能になってくるだろう。

 日本と欧米では端末の使われ方が異なるため、Bluetoothヘッドセットの需要がどこまであるかは未知数だが、個人的には仕事で使う携帯電話には是非ともBluetoothヘッドセットへの接続性を持っていてほしいと思う。

 では、実際の動向はどうなのか?

 インターネットとの接続性を高めるため、カーナビ業界は携帯電話とカーナビをBluetoothでつなごうとしている。現在は車に通信端末を内蔵させる、あるいはPCカードスロットなどにPHSカードなどを装着するといった手法で、インターネットとの接続性を確保しているが、車のためだけに契約数を増やすことをユーザーはあまり望まない(G-BOOKのようにあらかじめ代金を織り込んでおく手法もあるが、2002年8月の記事参照)。NTTドコモが来年以降、Bluetooth搭載端末を展開していく背景には、ひとつ自動車業界との協業があるようだ。

 ただNTTドコモには、標準の接続手段を用いながら、標準ではないプロトコルで通信をさせた前例がいくつもある。たとえばIrDAをサポートしながら、その上のアプリケーションプロトコルは端末間通信を想定したものしか実装しなかったり、Bluetooth搭載端末を作りながら標準プロファイルを搭載しなかったりといったことが実際にあった。

 たとえBluetooth搭載端末が登場しても、その端末でダイヤルアップしたり、ファイル転送プロトコルを用いてカメラ画像を吸い上げたりできるか? と言われると、まだ眉に唾を付け、眉間に皺を寄せながら注目する必要がある。

 もちろん、日本に多い携帯電話がネットワーク利用の中心というユーザー向けの機能/サービスも必要だが、その一方でWANに接続するためのゲートウェイとして携帯電話を使うビジネス指向のユーザーがいることは、日本のネットワークオペレータにも意識してほしい点だ。そのリファレンスとなり得る6650は、すでに日本でも利用可能なのだから。



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関連リンク
▼ ノキア・ジャパン

[本田雅一, ITmedia]

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