Samsung電子やSK Telecom、国民銀行、VISA Koreaなどによって結成されている韓国電子支払産業協会が24日に行った総会では、今年中に住民登録証、保険証などの公共分野における電子決済機能の需要創出のため、国内外の事例分析などを行う計画が決まった。こうした決定を待たずして、ICカード化へ向けた技術開発は既に実用段階にまで達している。
KOMSCO(Korea Minting & Security Printing Corporation : 韓国造幣公社)のブースでは、今後実用化されるであろう技術の展示が行われていた。
韓国国民が必ず持っている住民登録証。前述の通り今後はICチップ内蔵のものへと移行する計画で、その際には住民登録番号だけではなく、国民年金や医療保険といった情報の一括記憶・管理も技術的に可能となる。認証方法は、顔、指紋、虹彩の3通りがあり、うち1つだけを認証手段として使うもの、または3つ一致しなければらならないものなど、認証項目によって変えられる。
これらの認証方法は住民登録証以外にも応用でき、ICチップ内蔵のパスポートで出入国管理などを行ったり、銀行の暗証番号として利用するなど、さまざまな使い道が検討されている段階だ。
ところでICチップを内蔵しても、インフラが整わなければユーザーの使い勝手も向上しない。現在、韓国にはK-CASH、V-CASH、A-CASH、Mybi、Mondexといった電子マネーがあり、それぞれモジュールごとに互換性のない状態となっている。例えばV-CASHのカードを持っていても、加盟店がそれに対応した端末を置いていなければカード決済ができない。
そんな不便を解消しようと、上記5社が集まり情報通信部が作り出したのが「SAM」(Secure Application Module)という標準規格だ。先の韓国電子支払産業協会は、SAMを適用した電子マネーカード、電子貨幣充填用SAM(L-SAM)端末機などの開発を試みる予定でもあるという。
ICカードへの完全転換には、越えるべき壁もある。それは韓国国内のカード端末をすべてICカード用に換える場合のコストだ。費用が4000億ウォン(約400億円)にも達する見込みだ。実店舗レベルでICカード対応が遅れる要因がそこにある。またこれに対する政府の支援などに関しても、いまだ明確な姿勢が示されておらず、カード業者や店舗にとっては心理的負担も大きい。
安全性が高いと世界で普及が進められているICカードだが、本当の普及につなげるには、投入段階の問題解決というハードルを越えなければならない。そのためには韓国の場合、カード政策を推進した政府の明確な方針が必要だろう。
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