携帯で「パブリック・ジャーナリズム」を目指す、ある試み(2/2 ページ)

» 2006年04月04日 21時21分 公開
[杉浦正武,ITmedia]
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 ジャーナリストが悩む問題として、例えば大企業を糾弾するような記事をどこまで踏み込んで書けるのか、という部分がある。特定の企業のサービスに問題を感じた場合、どこまで厳しくそれを追求できるのか。また攻撃する相手が広告クライアントだった場合はどうするのか、あるいはどれだけの裏づけをとって、誹謗中傷にならないレベルで激しく批判できるか、などプロでなければ判断が難しい状況も多い。

 ビジュアルワークスの場合は、企業の悪口は基本的に掲載しない――というスタンスをとる。「それはニュースではない」からだ。

 「激しく討論するパブリック・ジャーナリズムもあるだろうが、携帯でそこまで熱い気持ちで語るユーザーが多いだろうか。一度激しいニュースを扱うようになると、普通のニュースを扱うサイトに戻れないという問題もある。携帯は“暇つぶし”に見るもの。現在のスタンスが携帯に適している自信はある」

「こういう記事を書けばいいのか」と気づきあう

 牧氏は、News Peopleでは記者に対して特に報酬を与えていないと説明する。「インセンティブ(報酬)があると、逆に読者から記事の質を怪しまれる。ユーザーからのコメントで評価されるとか、記者として“居場所”ができるといった部分がインセンティブになるようにしたい」。そのうちオピニオンリーダーが自然発生して、コミュニティを引っ張るかたちになるだろうと見ている。

 前出の広報部齋藤氏は、ビジュアルワークスとしてニュースの内容を定義して、どういうものを書いてほしいとか指示するつもりはないと話す。「ユーザーが互いのニュースを閲覧して、『こういう場所でこんな写真を撮ればいいのか』と気づきあううちに、すそ野が広がるだろう」。その中で、運営側が押し付けないでも自然と方向性が決まるだろうという。

 牧氏は、サイトをオープンして日は浅いが、ユーザーや企業からの反応は上々だと話す。サイトには前述のとおり通信社の配信するニュースもあるが、パブリック・ジャーナリストの書いたニュースも通常のニュースと同程度読まれているという。「新聞ほどの専門性を持った『報道』ではなく、友達と話すためのネタになるような『ニュース』を提供すればいい。そういうものを携帯で配信するという文化を、創っていければ」とした。

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