第6回 数々の挑戦を乗り越えた──「SH904i」誕生の裏側(2/2 ページ)

» 2007年06月26日 10時00分 公開
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3代目のアルミ採用端末ならではの苦心

Photo 通信システム事業本部 デザインセンター 係長の水野理史氏

 TOUCH CRUISERの搭載に加えて、「SH901iS」「SH902iS」に続き採用したアルミパネルも、SH904iの大きなポイントとなる部分だ。デザインを担当した水野氏は、アルミパネルを採用した理由を「さらなる本物感を追求するため」だったと話す。

 「シャープでは、もともと高級感を大切にして端末のデザインを考えています。SH903iでは光沢を持ったボディを採用し、宝石のようなカットを施して高級感を持たせました。ただ、金属は使っていなかったので、その部分はSH904iで変えたいと思い、アルミを使うことにしました」(水野氏)

 金属の質感は、端末に高級感を持たせるのには最適だ。手に持ったとき、少しひんやりする独特の感覚は、プラスチックではなかなか味わえない。しかし、アルミを採用した端末はすでに2モデルを発売しており、3世代目となるSH904iで、いかに前のモデルと変えていくかという課題があった。そこで水野氏が考えたのが「光の反射を利用した表情の変化」だ。

 SH902iSでは、ヘアラインとクロスラインという2種類の表面処理を施していたが、光が当たったときの表情はほぼ同じだった。そこで今回は光り方に変化を与えることで表情の変化を出した。ソリッドブラックは、光が当たると表面が波打ったように見える「スライドスピン」、プレミアムピンクはサブディスプレイを中心とした同心円状に模様が刻まれる「スピン」、ラインブルーは縦に7本の溝とヘアライン処理を施した「ヘアライン」と、それぞれアルミの素材感を生かした加工を採用。またクリスタルホワイトはパール調の「3層コーティング」としている。

 施す処理を変えれば、それに応じて工程と手間が余分にかかることになる。しかも4色すべてで仕上げが異なるため、プレスの型も各色で異なるものになっている。

 「ブラックとピンクはスピン加工なのでそれ用の型を用いています。一方ブルーはヘアラインだけでなく、中央に溝を入れています。この溝もプレスで実現しているため、ブラックやピンクとはまったく違う型が必要でした。ホワイトはホワイトで、パールホワイトを塗装したところ、平らな部分と斜めにカットした部分の間の立ち上がりが不自然に感じられたので、立ち上がりがなくなるような型に変えました。仕上げにはかなりこだわったと思います」(大島氏)

PhotoPhoto スピン加工やヘアライン加工が施されたピンクやブラック、ブルーの背面パネルは、平らな部分と斜めにカットされた部分の間に“立ち上がり”と呼ばれる段がある。しかし表面にパール塗装を施したホワイトだけは、この立ち上がりをなくしている

 またブラックとピンクに採用しているスピン状の模様は、加工に利用するダイヤモンドの歯の目をコントロールすることでさまざまな表情に変化するという。ダイヤモンドが人工か天然か、溝のピッチが何ミリかといった細かな要素が光の反射に大きく影響するため、歯の深さや角度、ダイヤの種類など、セッティングを変えて各色で100枚ほどパネルを試作し、その中からそれぞれの色に合うものを選んだ。さらに「アルミ板も、輝度がどれくらいあるものを選ぶか、どういう材料を使うかによって光り方が変わる」(水野氏)ことから、材料を変えての試作も行った。

 さらに大島氏は、スピン加工で苦労した点として、表面がとがらないようにすることを挙げた。「スピン加工は、ただ削っただけだと表面がとがってしまいます。そのままだとヤスリのようになってしまいますので、バックなどに入れておいたらほかのものに傷が付いてしまう恐れがあります。そんなことになっては困るので、詳細はお話しできませんが、スピンの山1つ1つも考え抜いた形状になっています」(同氏)

photoPhoto ソリッドブラックのパネルにスライドスピン加工を施したサンプル(左)とプレミアムピンクのパネルにスピン加工を施したサンプル(右)。アルミ板の材質や加工用の歯の材質、溝のピッチや深さなどを細かく変えて試作を繰り返し、色にもっとも合う加工を探したという

 こうした細かなこだわりに加えて、電波を利用する携帯電話で、電波に影響を与える金属を扱うという難しいミッションに取り組んだ開発陣には、相当な苦労があったに違いない。しかし、その大変さを当然のことととらえているのか、多くは語られなかった。「我々はずっとアルミチームなんです」と笑いながら話した奥迫氏と大島氏は、SH901iS、SH902iSと、アルミを採用した端末にずっと関わってきた。通信機器なので当然アンテナを内蔵しているが、商品企画担当者やデザイン担当者からは、アンテナの場所が極力分からないようにしてほしいという要望をもらうため「その部分はいつも苦労します」(奥迫氏)と笑った。

「使って驚いてほしい」──新機能の名刺リーダー

 カメラで名刺を読み取り、電話帳に入力できる「名刺リーダー」は、製品の開発がスタートした後で急遽採用が決まった機能だったという。「本当はもう間に合わないくらいのタイミングだったのですが、とても面白い機能だったので、企画側で無理を言って載せてもらうことにしました」(安田氏)

 認識ソフトウェアのブラッシュアップを担当した中江氏は、名刺上の情報をいかに一般化するか、そして一般化した上で認識率をどうやって上げていくか、といったところに時間をかけたそうだ。「名刺には本当にいろいろなバリエーションがあります。レイアウトや字の大きさ、字体などはバラバラ。さらに顔写真があったり社名ロゴが入っていたりもします。また文字は認識できても、それが住所なのか会社名なのかといった部分を正しく判別するのは簡単ではありません。どの部分にどういうフィルタをかけるのか、あれこれ試しながら調整しました」(中江氏)

 ただ、例えば名前は一番大きな字で印刷されていることが多かったりと、だいたいのレイアウトは決まっている。また郵便番号や@マークなど、一部には必ず記載されている、キーとなる文字や記号もある。こうしたものをうまく活用して住所や電話番号、メールアドレスなどを判別しているという。また「名字の読みがなを正しく表示する機能は便利なので、ぜひ試してみてほしい。使ってみると驚きがあると思います」と中江氏は言う。

 例えば「角田」という名字を認識しても、それだけでは「カクタ」なのか「ツノダ」なのか「スミダ」なのかは分からない。しかしSH904iの名刺リーダーは同じ名刺に印刷されているメールアドレスを探し、そのアドレスを元に読みを推測する。“tsunoda@xxxx.itmedia.co.jp”といったアドレスが記載されていれば、読みを「ツノダ」だと判断するわけだ。

 中江氏は「最初は自分でも半信半疑だったが、意外と精度よく認識できる。1回使っていただけると、とてもいいものだと思っていただけると思います」と笑顔を見せた。

まだまだある進化ポイントとそれを実現した開発陣の努力

 このほか、3インチのモバイルASV液晶を搭載しながら、ボディの幅を50ミリに抑えている点も、技術陣にとっては大きなチャレンジだったそうだ。

 「ディスプレイデバイスの狭額縁化が進んでいたとはいえ、品質を確保しながら2.8インチの液晶と同じ幅の中に3インチの液晶を入れるのは簡単ではありませんでした。“ギリギリのところまで攻めた”というイメージです」(大島氏)

 当初は2.8インチのディスプレイでいいのではないかという意見もあったというが、「SH903iTV」で3インチディスプレイを搭載していたために、そこからスペックダウンするわけにはいかなかった。

 また、多くのユーザーは気付かないかもしれないが、ダイヤルキー部分はSH903iからさらに薄くなっているという。「見栄えが変わらないのでほとんど分からないと思いますが、キータッチは維持したまま少し薄型化しています」(奥迫氏)

 またTOUCH CRUISERの搭載と呼応するように、きせかえツールもスペックアップしている。より容量の大きなデータが扱えるようになったことから、メニューの第2階層までカスタマイズできるよう作り込んでいるのだ。「サードパーティも含め、きせかえツールデータを作成する側にとって技術的な難易度は上がっていると思います。しかしメニューの2階層目までカスタマイズできれば画面のバリエーションが増やせるというメリットがあり、ユーザーには喜ばれるだろうと考え、あえて実現させました。プリインストールのきせかえツールデータでは、TOUCH CRUISERで操作する際のポインタも用意し、進化した“きせかえ”を楽しんでいただけると思います」(堀氏)

 メニューコンセプトを検討する段階からプリインストールのきせかえツールデータの作成に携わったという堀氏は「多くのユーザーはメニュー画面では十字キーをメインで使うだろうと考え、十字キーでの操作は十分使いやすいよう配慮しました。その上で、TOUCH CRUISERを使うとさらに使いやすくなるようにしています」と、その位置づけを話してくれた。


 “新デバイスTOUCH CRUISER搭載”“アルミパネル採用”“名刺リーダー装備”と、一言で説明されてしまうことが多いSH904iの新しいフィーチャーの裏には、開発陣の熱い思いと深いこだわりがたっぷりと詰まっている。SH904iのオーナーになった暁には、ぜひとも開発者達の熱意に思いをはせてみたい。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年6月30日