携帯電話の不具合問題を追う 1──ユーザーからの告発（2/2）

iモード掲示板管理者が見る昨今の携帯電話事情

　決して偏執的でもなく，淡々とその経緯を語り終えたshunさんは，前述のN503iの液晶についての話題が持ち上がっているという掲示板を紹介してくれた。そこでは，この件に限らず，他機種についてもさまざまな議論が展開されているという。

　shunさんが，この問題が自分だけのものではないことを知ったのも，その掲示板によってだったのだそうだ。またN503iという機種の中でもこの問題についてばらつきがあることも認識したという。

　ZDNetでは，この掲示板を運営するKouさんにも話を聞いた。特定の機種に対してというよりは，iモード登場以来の携帯電話関連の掲示板を運営してきたKouさんの視点では，不具合問題はどのように映ったのだろうか。 ZDNet：携帯電話の不具合問題について盛り上がるようになってきたのは，いつごろからか？

　「502iのころから。そのころに，iモードなどの高機能なケータイが爆発的に普及していったからだと思う」

ZDNet：不具合の問題については，話題のどれくらいを占めるのか。

　「（不具合ばかりを糾弾する）告発サイトのつもりでは運営していないが，ここしばらくの大きなトピックではある。さまざまな機種について“おかしい”という声は挙がるが，N503iについては，確かにユーザーでの盛りあがりをみせている」

ZDNet：先日あったSO503iでの不具合問題でも話題に上っていたか。

「はい。だが，あの件に関しては“ソニー製”ということでユーザーの期待が高かった分，大きな問題になってしまったようには感じている。事実，人気のない機種に関して，重要とも思われる問題の書きこみもあるが，その後大きく発展しない場合もある」

ZDNet：ここしばらくの不具合問題についてどう思うか。

　「携帯電話が高機能になってきたことで，“おかしい”とユーザーが認識する機会が増えたのではないか？　たとえば，簡単な例でいえば，カラー液晶ではなかった頃には“色の問題”は発生しない。また，高機能になってきているにも関わらず，以前と同じ端末のリリースサイクルであることは素人考えでもおかしい。高機能化のせいで“おかしい”ことが目立ちやすくなっている上に，1機種ごとの完成度が下がってきているのではないか」

その携帯電話が好きだから……

　Kouさんにはいわば観測者としての立場でこれらの不具合問題を見てきた。印象的だったのは以下の話だ。

　「携帯電話が好きで，みんな便利に使っているからこそ不満も出る。いちいち掲示板に書き込んだり，キャリアの対応についての情報交換を行っているのは，決して“告発”的な意識ではないと思う。たとえば，今回SO503iの問題が起こっているが，おそらく今回騒いでいる彼らは次もソニーの機種を買うだろう。そういうところをくんでほしい」

　また，

「現在起こっている1つひとつの問題は，決して無視できない問題としてユーザーの側にも事業者の側にも存在していると思う。だが，これを事業者にきちんと話したり，あるいは，対話をする場所がない。事業者の問い合わせ窓口もその機能を果たしきれていない。これだけの大事業になった携帯電話ビジネスで，しかもコミュニケーションという大切なものを行う電話に関して，そのような場所がほしい。それがあれば，いたずらに事を騒ぎ立てる人も少なくなるのではないだろうか？」

　このKouさんの提言は，前述したshunさんの「たらいまわし」についても思い当たる。

　さらに，本来あったはずの「窓口」機能すら，携帯電話の高機能化とリリーススピードの関係と同じように，事業の大規模化に追いついていけなくなってきているのではないかとも思われる。さまざまな部分での「きしみ」が，ユーザーという人間への対応でも，また，テクニカルな部分である端末にも，波紋を及ぼしているのではないだろうか。

　だが，理由はともあれ現在さまざまなところから「きしみ音」は聞こえつづけ，また，FOMAに代表される次世代携帯電話も秒読み段階に入っている。これを解決せずして，今後の事業的発展も，また，ユーザーの満足もありえないだろう。

　次回は，携帯電話キャリアへの取材を通じて，さらにこの問題を掘り下げていく。

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