すべてを携帯でやる必要はない──ドコモ,榎氏

「携帯電話は今後ほかのメディアと協調していく」ドコモのiモード事業を統括する榎取締役が,iモードの今後の戦略を語った。

【国内記事】 2001年8月29日更新

 「第3世代携帯電話が登場すれば,映像も音楽もすべてが携帯で楽しめる。ノートPCもPDAも必要なく,携帯ひとつで事足りる」。こんな風に思っている人は多いかもしれないし,あたかも万能機器のように第3世代携帯電話が語られることも多い。

 しかし,iモードの生みの親たちは決してそうは考えていない。「ブロードバンドや携帯電話など,1つですべてをまかなうのはありえない。人間が使う情報によって,(複数の)機器のミックスが起こる」とNTTドコモ,iモード事業本部長の榎啓一取締役は語る。

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携帯とPC,実店舗の役割の違い

 8月29日から東京・ビッグサイトで開催されているAV機器の展示会「INFOCOMM JAPAN 2001」の基調講演にNTTドコモでiモード事業を統括する榎啓一取締役が登場し,iモードが目指すメディア・ミックス戦略について語った。

 第3世代携帯電話の本サービスも10月に迫り,モバイルコマースなど多くのジャンルへのサービス拡大を目指す携帯電話だが,携帯電話がPCやテレビの代わりを務めることはあり得ない。携帯電話には携帯電話の特徴と強みがあり,テレビやPCにはまた別の強みがある。

 携帯電話というメディアが強力なものになっても「あるメディアがほかの機器を駆逐することはない。多少領域は侵すかもしれないが,一番得意なところを活かして協調することになる」と榎氏は言う。

 例として挙げたのは,iモードによる株の売買だ。榎氏によると,iモードを利用して月に数千億円の株が取り引きされているのだという。しかし,なぜ携帯で株の売買を行うのだろうか?

 「どこの株をいくらで買うかは,前の晩に自宅の大きな画面を持ったPCを使って決めている。しかし夜間は株式の売買はできないので,どこで買うかというと,市場が開いている昼間に携帯電話でやっている」(榎氏)

 一見すると“携帯の小さな画面で株の売買なんてできるのか?”と考えてしまう。しかし,情報収集と意思決定はそれに適したメディアであるPCで,そして実際の売買は時間と場所に束縛されない携帯でと,うまく複数のメディアを連動させて利用している例だ。

 コマースにしても同様だ。クレジットカードなどを使って高額の商品を携帯電話で購入できるサービスも登場してきているが,メディアの特性によって適した商品も変わってくる。

 「パソコンは小売業でいうとデパート。月に1回,覚悟して行くもの。もともと高価なものを買う気でいく。携帯電話はコンビニエンスストア。気軽に行けるが品揃えは3000アイテムしかない」(榎氏)

携帯はアップリンクに向いている

 携帯の利点の1つは,常に持ち歩いていることだ。「携帯以外の機器は,使うために人間が行かなくてはならない。そのため携帯はアップリンク(=情報を送信すること)に向いている」と榎氏は言う。

 携帯電話で簡単なガイダンスを見て注文し,商品はコンビニで受け取ったり,宅配してもらったりする。いくら音楽がPCや携帯にダウンロードできるといっても,ジャケットの付いたCDのほうがいいという人もいる。それぞれの得意なところを生かした「メディアの連携がこれから目指すべき世界だ」(榎氏)

 画像や音楽などをオーダーする際のデータの送信には大量のデータは流れないが,データを受け取る際にはそうもいかない。榎氏が「携帯は1ビットあたりの料金は高い」というとおり,料金面でもすべてを携帯で済ますのは非現実的だ。

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大きい動画などはPCで

 こんな話は当たり前のことのように感じるかもしれない。しかし“第3世代携帯電話では携帯でテレビのように映像が見れる”と大真面目に語られることがあるのを思い起こしてほしい。榎氏は「簡単な動画は携帯で,大きな動画などはPCで取ればいい」と,あくまで携帯電話の役割に関しては慎重。

 通信速度が向上するFOMAでのiモードについても,「メインの使い方はニュースや映画のプロモーションだろう」と榎氏は言う。

 見方を変えれば,テレビのニュース番組は完全な動画ではない。「最初にアナウンサーの顔が出る。これは静止画。そのあとヘッドラインが出る。あれは文字情報。やっと動画が流れるが,よく数えると5秒から10秒。テレビのニュースは文字と静止画と動画の組み合わせだ」(榎氏)

 榎氏は「FOMAはそういうものを流すもの。携帯の画面を1時間も見るのはレアケース」と語る。

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 FOMAではM-stage mucis,visual(用語)という音楽配信,動画配信も予定されている。榎氏の語る次世代iモード構想とは少々趣の違う,これらの配信サービスに期待する向きがあるのも確かだ。第3世代携帯電話のキラーコンテンツの座を射止めるのは果たしてどれか。

[斎藤健二,ITmedia]

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