News 2001年10月19日 09:56 PM 更新

JASRAC,年度内に電子透かし技術の実証実験を開始

JASRACが,音楽データ用の電子透かし技術の認定企業4社を発表した。年度内に電子透かしの実証実験が行われる予定だ。著作権管理情報などを楽曲データに埋め込むことで,不正配信の監視を強化するのが狙い。

 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は10月19日,電子透かし技術の選定作業「STEP2001」が完了したと発表した。

 インターネットを利用した楽曲の不正配信を監視するため,JASRACでは,昨年より著作権管理団体の国際組織であるCISACならびにBIEMとともに,電子透かし技術の国際評価プロジェクトを実施してきた(2000年6月15日の記事参照)。今回,認定されたのは,「実用レベル」と判断された4社の技術。

 認定された企業は,日本アイ・ビー・エム,米Verance,エム研,ならびに韓国のMarkAny。STEP2001で認定された電子透かし技術は,「デジタル→アナログ→デジタル変換」や,ダウンサンプリング,線形データ圧縮などを行っても,透かしデータが壊れないことなどが条件になっている。また,エム研とMarkAnyについては,「利用可能な技術水準のクリアが見込まれる」という補足つきで認定した。

 実際に技術検証を行った野村総合研究所の松尾秀城氏は,「昨年のSTEP2000に比べて,STEP2001では技術の熟成度が確実に増している」と評価する。また,JASRACでは,認定企業ならびに音楽業界係企業と協力して,年度内に電子透かし技術の実証実験を行う予定だ。ただし,JASRACでは実証実験の期間や具体的な内容を明らかにしていない。

 「電子透かし技術が普及すれば,インターネット上での楽曲の不正利用を洗い出し,著作権使用料を督促・徴収することが容易になる。音源を配信するWebページを機械的に追跡することが可能で,情報収集の効率が飛躍的に向上するだろう」(JASRACの加藤衛常任理事)。

 JASRACでは,電子透かし技術の普及促進に向け,JASRACが指定する著作権管理情報を楽曲に挿入するインタラクティブ配信事業者には,著作権使用料の割引などの優遇措置を適用する。

 また,ネット上では,個人がCD音源からリッピングした楽曲を公開しているケースも多く見られることから,パッケージCDへの電子透かしデータの埋め込みについてもレコード会社などと話し合いを進めていく。

 なお加藤氏は,電子透かし技術を本格運用する時期について明言を避けたが,「電子透かし技術の認定作業と並行して,音楽業界の関係企業と議論を重ねてきた。採用に関して問題となるのは,おそらくコスト的なものだけだろう。今回,認定企業が決まったことで,導入費用などの具体的な話ができるようになった」と強調した。

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▼ 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)

[中村琢磨, ITmedia]

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