News 2001年12月20日 11:31 PM 更新

携帯電話で競艇を楽しむ―─地上波デジタル放送の公開実験

博報堂,東京放送,NTTデータ,NTTドコモの4社は20日,地上波デジタル放送の公開実験を実施した。携帯電話型の受信機に競艇のライブ映像を映し出し,投票までこの端末で行うデモなどが注目を集めていた。

 博報堂,東京放送(TBS),NTTデータ,NTTドコモの4社は12月20日,都内で地上波デジタル放送の公開実験を実施した。

 これは現行の地上波アナログ放送に置き換わると期待される同放送が,どのような高付加価値・高品質の放送・広告サービスを提供できるのか,検証することを狙いにしたもの。さまざまな実験が行われたが,中でも注目を集めていたのは,携帯電話型の地上波デジタル放送受信機で,「放送」と「通信」の融合サービスを行えることを実証するデモだった。

 このデモは「競艇を携帯端末で楽しむ」という設定で行われ,「放送」部分では,MPEG-4形式にエンコードされた動きの速い映像の画質を評価した。また「通信」部分では,各種情報を実験端末で取得して投票する双方向システムを検証した。

 実験に使われたのは,大阪の住之江競艇場で実際に行われている競艇のライブ映像で,これを衛星回線やATM伝送を使って東京タワーで受信。そこでMPEG-4形式にリアルタイムでエンコーディングして地上波デジタルの放送波として送信し,東京・田町の公開実験会場で受信するという流れで行われた。


大阪の住之江競艇場で実際に行われている競艇のライブ映像が使われた

 実験の検証ポイントは,主として2つあり,1つめは競艇のように動きの速い映像をリアルタイムでエンコーディングした時,携帯端末の小さな画面でどの程度の映像品質になるかということ。そして2つめは,携帯端末の双方向通信機能を利用してレース情報を集め,投票を行うという一連の動作が,どれだけスムーズに行えるかということだった。

 このため実験会場では,携帯端末で受信したMPEG-4の映像と,地上波デジタル放送を固定TVで見るときの形式であるMPEG-2の映像とが並べて映し出された。


携帯端末のMPEG-4映像(左)と,固定TVのMPEG-2映像(右)

 結果は,MPEG-2の映像と見比べると,MPEG-4の画像にはエンコーディングによる遅延が若干あったものの,それも1秒にも満たないレベル。レースのライブ感が損なわれるということはなかった。画質も,携帯端末の小さな画面にもかかわらず,ボートに記された選手の名前とゼッケン番号が十分読み取れた。


ボートに記された選手の名前とゼッケン番号が読み取れる

 実験では双方向通信という携帯端末ならではの機能を活かし,体重や過去の勝率,顔写真といった選手情報や最新のオッズも提供されていたが,「携帯端末画面の上部にレース映像,下部に各種情報を表示するような画面構成でも,十分レースを楽しめることが証明できた」(東京パイロット実験実施協議会)。


上部にレース映像,下部に各種情報を表示しても十分レースを楽しめる

 なお,今回の実験には,次世代携帯電話を模した携帯端末で放送を受信していたが,現段階では携帯電話の大きさに受信機や各種デコーダを収めることができない。このため,実際は別体の受信機と携帯端末とをケーブルでつないでいた。

 しかし,実験会場の外では,大きめのバッグに受信機とアンテナを入れた可搬スタイルの携帯端末も紹介されており,関係者によれば「地上波デジタル放送が本格化する2005年頃には,実際に携帯電話の大きさになった端末が登場するだろう」ということだった。


大きめのバッグに受信機とアンテナを入れた可搬スタイルの携帯端末も

 今回の公開実験は,地上波デジタル放送を検証する「東京パイロット実験」の一環。この他では,次世代HDTVエンコーダによる固定向け放送の画像品質検証や,携帯端末と固定テレビのそれぞれのメディアにおけるCM表現の比較,蓄積型STBを使った新視聴サービスやターゲティング広告提供手法の検証などが行われていた。

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[西坂真人, ITmedia]

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