News 2002年3月1日 11:12 AM 更新

理想郷を目指すノートPC――2つの焦点(1)

Baniasを投入するに当たり,IntelはノートPCに新しい「価値」を創造しようとしている。とりわけ同社が力を入れているのが,「常時電源オン」と「シームレスなワイヤレス」という,ノートPCの2つの「進化」を促す技術の開発だ。

 Intelは消費電力あたりのパフォーマンスを最適化するモバイル専用プロセッサのBaniasをきっかけに,「移動しながらPCを使うこと」に対して,新しい付加価値を創造し,これまでとは異なるノートPCの用途を作り出そうとしている。

 従来の,クロック周波数や価格が良ければ他の部分には目をつむってもいい,という偏った価値観から脱却し,ユーザーがノートPCを利用する際の「体験」そのものの良し悪しに価値を見いだそうとしているわけだ。

 BaniasはPentium 4と同様のマルチメディア命令を備え,比較的低いクロック周波数でも高速にプログラムを実行できるアーキテクチャになると言われている。これにより,小型軽量のフォームファクタやバッテリ持続時間などに,良い影響をもたらすことになるだろう。

 また,Baniasと同時にリリースされる予定の専用チップセットOdumも,やはりモバイル向けに様々な工夫が凝らされたものになる。

 こうしたプロセッサ,チップセット側の努力と共に,Intelは様々な方面から新技術を提案,標準化を進め,PCベンダー各社への新技術採用を加速させることで,ノートPCの進化を促そうとしている。中でもとりわけ熱心なのが,省電力への取り組みと,シームレスなワイヤレス接続の枠組み構築だ。それぞれについて,Intelの取り組みを紹介したい。

常にオンで持ち歩けるノートPCを作るために

 Intelが目標とする省電力の成果とは,ノートPCの電源を入れっぱなしで持ち歩き,1日中利用できることだ。

 たとえば携帯電話は常に電源が入っており,常にネットワークに接続可能な状態でアイドリングしている。これで1日中(もしくはそれ以上)のバッテリライフが実現されている。同じような使い勝手をノートPCにも与えることで,より携帯時の利便性や使いやすさ,用途範囲拡大を行うのが,モバイルPCにおける「Always On(電源入れっぱなし)」の基本的な考え方だ。

 しかし,現在のノートPC向けプロセッサは高度な電源管理によって,平均の消費電力がかなり低く抑えられている。Intelの調べによると,平均的な14.1インチ液晶採用の2スピンドルノートPCの場合,プロセッサの占める割合は7%程度でしかない。

 つまり,プロセッサの消費電力を下げるだけでなく,液晶ディスプレイやグラフィックコントローラ,ハードディスク,電源回路のロスといった要素で消費されている電力を削減しなければならない。

 そこで鍵となるのが,いかに多くのデバイスに関して,そのステータスを監視し,アイドリング時に電力を消費しないように制御するかということだ。

 プロセッサは高度な電力制御で,必要な時以外の消費電力がきわめて低くなる。同様にリアルタイムのレスポンスが必要なデバイスや,再起動時の遅延が大きなデバイス以外は,電源を細かく切ったり省電力モードに移行させることで,全体的な消費電力を下げることができる。また,ユーザーが必要とするパフォーマンスに合わせて,アイドリングさせるデバイスの制御方法を変えるといったアプローチも必要だ。

 プロセッサ以外でも,グラフィックコントローラは動的な電力制御を行えるものが増えてきた。そのほかのデバイスに関しても,その多くが技術的に制御可能な状態にある。問題なのは,その省電力機能を統合的に管理するための道筋が存在しないことだ。各種デバイスの制御方法は,各社が独自に実装していることが多い。また,あまり多くのデバイス管理をエンドユーザーが意識して行わなければならないのでは使いにくい。

 そこでACPIのフレームワークの中で,各種デバイスの電力ステータスを制御する方法を決め,省電力管理をひとつのユーザーインターフェイスに統合し,すべてのデバイスがシームレスに連動して省電力動作をさせる。そのためのリーダーシップをIntelが取っていくという。アイドル時の消費電力を劇的に下げられれば,電源を入れっぱなしで持ち歩いても気にならなくなるだろう。

 もう1つのアプローチが,消費電力全体の約32%を占める液晶ディスプレイの改善だ。液晶ディスプレイは開口率のアップやインバータの改良などで消費電力が確実に下がってきているが,それでも他のデバイスと比較すると大食らいであることは間違いない。

 そこでIntelはオンとオフの間にある中間の電源ステータスを作り,標準的な制御手法で電源管理を行えるよう標準化を行っていくことを提案している。Intelがマイルストーンに位置付けている2003年のノートPCプラットフォームも,この技術が成功の鍵を握っているはずだ。

 さらに反射型液晶ディスプレイや状態保持が可能な(つまり画面リフレッシュが不要の)ディスプレイ,グラフィック表示手法そのものの見直しまで含めて,新しい省電力なディスプレイ技術を開発していこう,とIntelは呼びかけている。

 もちろん,電池そのものの容量アップに関しても取り組んでいくとしている。

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