News 2002年3月1日 11:12 AM 更新

理想郷を目指すノートPC――2つの焦点(2)

 まず電圧レギュレータの改良によって電源部の効率を高めることで,容量が10%増加したのと同じ効果を得ることができる。電圧レギュレータに関して,Intelはプロセッサの駆動電圧を動作タイミングに最適化するIMVPという技術で,すでに電源メーカーと共同作業を行っている。

 また,バッテリそのものの容量も現在のところ年率5〜7%の割合で増加してきており,最新のバッテリセルを利用することを進めている。さらに現行のリチウムイオンバッテリの端子素材を改良し,より高いエネルギー密度を実現するバッテリの開発が進行中だ。もちろん,PCへの燃料電池の応用も視野に入れるべきとしている。

 これらひとつひとつのアプローチは,個々がユニークな技術というわけではない。これまでに提案されてきたものばかりだが,それらを最良の状態で組み合わせ,業界として最適化していこう。その呼びかけこそが,Intelがもっとも伝えたいことなのかもしれない。

いつでも,どこでも,最適な経路で自動的に接続

 いつでも,どこでも,最適な経路で自動的に目的のネットワークに接続できる。そんな環境があれば便利に違いない。そう考える人は少なくない。だからこそ,ワイヤレス環境が整いつつある昨今,ソニーやマイクロソフトも声高にシームレスなワイヤレス接続環境の必要性を訴えている。Intelが唱えるインテリジェントローミングは,それらの思想を実現する解決の糸口になるかもしれない。

 Intelが想定しているモバイルPCユーザーのネットワーク接続手段は,802.11a/b,携帯電話/PHS,有線LANの3種類だ。

 しかし,それぞれに速度や料金体系,接続手法,カバーエリアなどの特徴が異なる。また,通信コネクションを継続しながら異なるネットワークを移動したり,常に最適なネットワークに接続した状態にしたり,ユーザー認証やセキュリティ確保を単一の手法で行ったりはできない。

 個々の場面において,エンドユーザー自身がPCを使いこなしていれば解決できる場合もあるが,シンプルさや簡便さといった観点から見て,モバイルPCユーザーが異なるネットワーク感を移動しながら利用することはできない。

 そこでIntelが開発,提供しようとしているのが,インテリジェントローミングソフトウェアだ。インテリジェントローミングソフトウェアはあらゆるネットワーク接続手段を統合し,その場で最適な接続手段を自動的に選択し,常に通信状態もしくは通信可能な状態に保つ。

 また,ポリシーベースのネットワーク設定機能を有し,その場のネットワーク接続形態を自動判断して仮の設定を自動的に行ってくれる。さらに設定を行えば,会社や自宅のゲートウェイに対して自動的にVPNなどの手段で接続するところまで行ってくれる。

 たとえば社内や家庭内で,有線LANと無線LANがオーバーラップして導入されているケースは多いと思う。そこで有線LANに接続してネットワークアプリケーションを利用中に,LANケーブルを抜いて別の場所に移動しようとすると,ネットワークアプリケーションは処理を継続できなくなる。

 しかし,インテリジェントローミングソフトウェアを用いれば,Mobile IP技術を利用してユーザーが無意識のうちに無線LANへとローミングし,通信を継続することができる。IDFで同社が行ったデモでは,複数のストリーミングデータを再生しながら,有線から無線へのローミングを行って見せていた。同様のケースで,今後802.11aと802.11bの混在環境で,片方の通信が切れると(利用可能なら)もう片方のネットワークに自動ローミングするといった使われ方も考えられる。

 さらに自宅からネットワークに参加した時,シームレスに会社のネットワークにもVPNで接続されたり,外出先から自宅にあるPCのファイルストレージを参照するといったことも可能になる。

 また,これにネットワーク使用料や速度の違い,ネットワークを利用する際のユーザー認証,暗号化などが加わってくると,さらに話は複雑になってくる。たとえば802.11と携帯電話の両方でネットワークに接続できる環境では,当然ながら802.11からネットに接続した方がコスト面でも速度面でも有利だ。

 しかし,その802.11無線LAN環境を利用するためのユーザー認証が必要な場合にどうするか,ユーザー認証が取れなかったときに自動的に携帯電話を用いてくれるかなど,その場に応じて臨機応変に判別しなければならないことは多い。このような判断も含め,インテリジェントにローミングを行ってくれるのが,インテリジェントローミングソフトウェアのもっとも大きな特徴と言えるだろう。

 もちろん,クライアントソフトウェアだけでなく,インフラ側の対応(家庭へのVPNにやユニバーサルプラグ&プレイに対応した高機能ゲートウェイや会社のVPN環境など)も必要になるが,決して不可能なことではない。

 常に電源オンのままで1日運用できるノートPCが実現した時,Intelが描くようなローミングのビジョンが実現すれば,ノートPCの使い方は大きく変化するはずだ。そうすれば,Intelが望むようにノートPCの価値を市場が再評価してくれるきっかけになるだろう。

 インテリジェントローミングソフトウェアは来年末のノートPCには標準で添付されるようになる可能性がある。移動できるデスクトップPCから携帯するノートPCへと向かう上で,非常に重要なソフトウェアとなるはずだ。

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[本田雅一, ITmedia]