この記事はマザーボードレビューである。しかし、ユーザーが最も気になるのはやはり、PCI Express Liteの挙動だろう。ゆえに、マザーボードのベンチマークは早々に切り上げて、3Dグラフィックス関連のベンチマークを使ってこのあたりを見ていくことにしたい。PCI Express X16対応のグラフィックスカードはNVIDIAのGeForce 6800 GTリファレンスカードを使用した。
ベンチマークの結果を見ていただいてお分かりのように、PCI Express Liteに差した場合のパフォーマンスは、正規のPCI Express X16で動作させたときの結果から明らかに下回っている。AGP Expressと同じ傾向ではあるが、しかし、その下落率はAGP Expressほど顕著でない。
このように、PCI Express Liteで動作させた場合のグラフィックスカードの性能は、AGP Express同様低下するものの、その差は10〜20%未満程度であることが分かった。それにしても「10〜20%未満」という性能低下は実に微妙なところである。
ECSのラインアップにはPCI Express X16とAGP Expressを実装するIntel 915PEマザー「915-A」が存在する。「高クロックのLGA775対応CPUとPCI Expressに移行したいが、当面は手持ちのグラフィックスカードで間に合わせ、予算を確保できたらPCI Express対応カードを追加する」というユーザーならば、PCI Express X16のパフォーマンスをフルに使える915P-Aを選択するのが妥当だろう。
AGP Expressほどではないにしろ、PCI Express Liteに差したグラフィックスカードの性能が低下するのは事実であるし、10〜20%程度の性能低下は最近の細かく用意されたGPUラインアップからすれば、ワンランク下のGPUにも相当してしまう。
ならば、915-Aはどのようなユーザーが選択するべきだろうか。
そのキーワードは、ECSがアピールする「デュアル・グラフィックスエンジン」を利用した「マルチディスプレイ環境の実現」になるだろう。915-AはAGP ExpressとPCI Express Liteのそれぞれに差したグラフィックスカードを同時に利用できるため、例えばデュアルディスプレイをサポートするグラフィックスカードを使えば4台のディスプレイを同時に利用することが可能になる。
なお、915ーAが初めて紹介されたアキバのイベントでは「オンボードのグラフィックス機能(Intel GMA 900)とスロットに差したグラフィックスカードの併用については確認中」とされていたが、今回編集部で試してみたところ、PCI Express LiteとAGP Expressにグラフィクスカードを差すとチップセット内蔵グラフィックスはOSから認識されなかった。
以上、915-Aに用意されたユニークな拡張スロットの性能を中心に見てきたが、そのスロットを搭載する「915-A」はどのようなユーザーに向いているだろか。
パフォーマンスを重視するユーザーが将来のアップグレードパスが用意されたマザーとして915-Aに期待するのは、PCI Express Liteの「10〜20%の性能低下」を許容できる場合に限りOKだろう。
だが、それよりは、(ECSがアピールするように)それぞれの専用スロットに組み込んだ高性能のグラフィクスカードが同時に使える、という、ほかにあまり例を見ない利便性に価値を見出せるユーザーにこそ、このマザーは適しているといえるのではないだろうか。
そう考えると、「915-A」は、新旧規格が同居した「移行期ならではの製品」という評価ではなく、高性能のマルチディスプレイ環境を実現する、明確な目的をもった新しい使い方を実現してくれるマザー、という見方が正しいのかもしれない。
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