ナナオが11月1日に発表した「FORIS.HD」は、液晶TVの新シリーズだ。とはいえ、FORIS.HDは既存の液晶TVとは一味違う。何しろ、採用した液晶パネルはアスペクト比が16:10となる1920×1200ドット(WUXGA)表示の27/24インチワイドパネルで、PCとの接続を重視しているのだ。
通常の液晶TVは、アスペクト比が16:9で、フルHD対応パネルであれば解像度は1920×1080ドットになるが、PCの世界で1080ドットという垂直解像度は一般的ではない。昨今はPCでも1920×1080ドット表示が可能なグラフィックス環境を備えるようになってきたが、既存のフルHD対応TVをPCディスプレイとして利用すると、縦の解像度に物足りなさを感じることもあった。また、動画再生に特化した液晶TVでは、静止画を映すPCの接続に配慮が足りないものもあり、PC接続時の階調性やシャープネスに満足できないものが少なくなかった。
一方のFORIS.HDは、PC用として標準的なWUXGA対応の液晶ディスプレイと同じ感覚で使えるのが強みとなる。ナナオはAV入力に対応したWUXGA対応の液晶ディスプレイとして、「FlexScan HD2451W/HD2441W」を発売しているが、これにTVチューナーやスピーカーを追加したモデルがあればいいのに、と感じていた人もいるだろう。FORIS.HDは基本的に液晶TVだが、パネル自体はPC用と同じということもあり、PCディスプレイとしての実用性が気になるところだ。
そこで今回は11月30日の発売に先駆け、24インチワイドモデル「DT24ZD1」の試作機を入手できたので、AV入力対応PCディスプレイとしての使い勝手をチェックしてみた。試作機のため、実際の製品と仕様が違う可能性がある点は、あらかじめお断りしておく。
ボディのデザインは、斜め下に向いたステレオスピーカーとそこに配色されたレッドが実に個性的だ。カラーは、写真のフォリスブルーのほか、ホワイトが用意されている。外形寸法は565(幅)×280(奥行き)×483(高さ)ミリ、重量は約13キロだ。左右の幅はFlexScan HD2451Wとほぼ同じだが、独特のデザインゆえに、奥行きは50ミリ長いことに注意したい。デスクの上に置いてみると、FlexScan HD2451Wより重厚な雰囲気で存在感がある。
スタンドはチルトとスイベルに対応しており、液晶TVとしては可動範囲が広い。画面の下辺は設置面から13センチ程度の高さにあり、画面の位置が高すぎて困ることはないが、FlexScan HD2451Wとは違って高さ調整やVESAマウントには対応していない。もっとも、これは液晶TVなので当然の仕様だ。
背面のデザインにもこだわっており、ケーブルをすっぽり覆うカバーが用意されている。各種端子はPCディスプレイのように下向きではなく、パネル面に対して垂直に配置されているため、奥行きの面では不利になるが、ケーブルの着脱はしやすい。
TVチューナーはCATVパススルー対応の3波対応デジタルチューナーを装備し、アナログ放送用のチューナーは搭載していない。機能的にはデータ放送、EPG、アクトビラベーシックを利用できる。アクトビラビデオは非対応だ。
インタフェースは、映像入力がHDMI(Ver.1.2)×3、D4×1、S-Video/コンポジット共用×1、DVI-I(HDCP対応)×1を用意。HDMIが3系統ある一方、PC入力用のDVI-Iは1系統という構成だ。映像出力はS-Video/コンポジット共用×1、音声出力は光デジタル×1、ライン×1、ヘッドフォン×1を備えている。なお、光デジタルの音声出力はデジタル放送の音声のみを出力する仕様で、HDMIなどのAV入力、およびPC入力の音声が出力できない。
内蔵のステレオスピーカーは5センチのフルレンジユニット(4ワット+4ワット)を搭載する。限られたスペースで音声に臨場感を出す目的で、スピーカーは斜め下向きに配置し、出力した音声を設置面に反射させて低音域を増強する仕組みにした。また、低域に悪影響を与えず、高音を拡散させるディフューザーにより、全体的なバランスにも配慮している。サラウンド回路などは非搭載だが、サイズの割に中低域がよく出ており、PC用ディスプレイの内蔵スピーカーにありがちなチープな音とは明らかに違う。この辺りは「さすがTV」といえる部分だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.