調整項目はPC入力とTV映像/AV入力で一部異なり、それぞれに用途別の画質モードを設けている。PC入力では「ピクチャー」「ムービー」「テキスト」「お好み」、TV映像/AV入力では「標準」「シネマ」「ダイナミック」「お好み」のそれぞれ4種類から選択可能だ。PC入力時の画質モードは、FlexScanシリーズのFineContrast機能でおなじみのものだが、ムービーモードのコントラスト拡張処理などを改善したという。ただ、FORIS.HDでは広色域パネルを用いていることもあり、PC入力時の画質モードとして標準的なsRGBの設定も欲しかったところだ。
各画質モードは、明るさ、黒レベル、コントラスト、色の濃さ、色合い、シャープネスの設定が可能。さらに詳細設定として、内蔵の輝度センサーによるバックライト輝度の自動調整、明るい環境下で黒つぶれを軽減する黒レベル自動調整、バックライト制御によるコントラスト拡張、色温度(12000K、10500K、9300K、8000K、6500K、5000K、4000K)、RGB各色のバランス(−3〜+3)、ガンマ(明るめ、標準、暗め)の調整項目が用意されている。ガンマの設定は3段階で、FlexScanのような数値指定はできないが、標準でガンマ2.2にセットされており、明るめが1.8、暗めが2.4の設定になるという。
またTV映像やAV入力の場合は、ノイズフィルター、プルダウン処理(2-3、2-3/2-2、無効)の調整が行える。加えて、1080/24p出力が行えるプレーヤーを接続して秒間24コマで制作された映画を視聴する際、プルダウン処理なしで秒間24コマの映像信号を再現できる1080/24p入力(48Hz駆動)に対応している。Blu-ray DiscなどでHD映像コンテンツを鑑賞したい人にとって、1080/24p対応は見逃せないポイントだ。
以上、FORIS.HDの試作機をざっとチェックしてみたが、PC入力がDVI-Iの1系統に限定され、sRGBモードに対応しないことを除けば、WUXGA対応のPCディスプレイとして不満がない仕上がりとの感想を持った。試用した時間が非常に短かったため、画質や機能の深いところまでは突っ込めなかったが、ナナオが得意とする高性能PCディスプレイの技術と、FORIS.TVで蓄積してきたTVの画作りがうまく融合できている印象だ。
FlexScan HD2451Wと比較した場合、3波対応デジタルTVチューナーの搭載、3系統のHDMI入力、スピーカーの内蔵、リモコンの添付といった部分で優位に立つ。TVチューナーの接続用にHDMIを確保する必要がなく、プレイステーション 3、新型Xbox 360、レコーダー、HDビデオカメラといった選択肢から3つの機器を同時にHDMIに接続できる利点がある。PCで色再現性にこだわる作業をしたいユーザーにはより適した製品があるが、PC、TV、AV機器のディスプレイを1台でまかなうのが願いなら、FORIS.HDはその期待に応えてくれるだろう。こうした製品を待ち望んでいた人は決して少なくないはずだ。
ここへ来て、シャープがPCとの接続に配慮したAQUOS Pシリーズを発表し、ナナオもFORIS.HDを投入するなど、「小型の液晶TV+PCディスプレイ」といった新しい市場が生まれようとしている。TVとPCディスプレイでは求められる技術が同じではないため、その統合は一朝一夕にはいかないだろうが、PCとの親和性が高い液晶TVが続々と登場してくれるのはありがたい。今後、この流れにほかのメーカーも積極的に乗ってきてほしいと切に願う。
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