筆者は数年前から雑誌などで、Macworld Expo/San Franciscoには1点、アップルのビジネス上よくないところがあると指摘をしてきた。それは、このイベントが(好景気の時代には)1年間の半分近い売り上げを計上することもめずらしくないクリスマス商戦の直後に行われていることだ。
Macworldでは、毎年何か目玉となる新製品の発表が期待されている。つまり、アップルは1年で1番の売れ筋製品をクリスマス商戦前に発表することができない――もちろん、その背景を知っている人々は、クリスマス商戦期に買い控えをすることになるだろう。
実際、クリスマス向け商品として人気のあるiPodシリーズが売れなくては困るので、ここ数年のMacworld Expoでは、iPodの新製品発表は控えめになっていた。ただ、欧米ではここ数年、iPodの後を追ってMacも大きく出荷シェアを伸ばしていることもあり、そういう意味でも1月開催のMacworld Expoは、あまりありがたいイベントではないだろう。
上記は筆者が感じていたMacworld Expoの問題点だが、それではアップルはなぜクリスマス商戦に無関係な夏の(東海岸での)Macworld Expoからも撤退しているのだろう?
アップルはその理由として、アップル直営店であるApple Storeの存在を挙げている。全世界のApple Storeには毎週約350万人の――Macworld Expoをはるかに上回る顧客が来店しており、アップルの最新製品を目にしている、だから旧式の大型トレードショーを開く必要はない、というのだ。実際、21世紀に入ってからはいくつもの大型トレードショーが幕を閉じてきた。2003年にはラスベガスの街をうるおわせ世界最大と言われたCOMDEXが、そしてPC EXPOが終了している。
だが、これに対してMacworld Expoを主催するMacworld Expo担当副社長のPaul Kent氏は反論する。「今年(2009年)のMacworld Expoを見ても、展示会場にある製品の90%はApple Storeでは売っていない製品だ。我々はまだこうした大型トレードショーに価値があると信じている」(同氏)。
その価値は商品だけにとどまらない。Macworld Expoの期間中は、世界中からアップルに興味を持つ開発者やメディア、ユーザーたちが集まってくる。そしてExpo期間中は、会場の外でも毎日のようにさまざまなイベントが行われている。
実は今年は、筆者自身もSix Apartの協力を得て、日本のiPhone開発者12人を海外のメディアやブロガーに紹介するイベントを開催する予定だ(参考URL:Join our "Press reception" on Jan. 7th during MACWORLD EXPO and find hidden gems from Japan)。
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