既報の通り、ソニーは2月16日にハイエンドモバイルノートPC「VAIO Z」の新モデルを発表した。2010年1月18日、2月16日と2度に渡って発表されたVAIOの2010年春モデルで目玉となる機種だ。
VAIO Zといえば、パフォーマンスとモビリティを高いレベルで融合したVAIOの新しいフラッグシップモバイルノートとして2008年8月に発売され、数回のマイナーチェンジを繰り返しながら、多くのファンを獲得してきた人気機種だが、今回初めてフルモデルチェンジが行われた。
新型VAIO Zはボディをより薄く、軽く仕上げながら、従来機を大きく上回るハイスペックを搭載し、“一切の妥協をしないモバイル”という製品コンセプトをさらに突き詰めている。詳細なレビューは別の機会に行う予定なので、ここではVAIO Zの高性能と携帯性がいかにして両立されているのか、実機を分解しながら詳しくチェックしていこう。
PC USERでは編集部やライターが直接PCを分解することも日常茶飯事だが、VAIO PやVAIO W、VAIO Xの製品発表時と同様に発売前の試作段階ということもあり、分解はNGとのこと。そこで、もはや恒例行事となりつつあるが、開発者に自らVAIO Zを分解してもらった。
分解を依頼したのは、設計を統括したプログラムマネージャーの鈴木雅彦氏(ソニー VAIO事業本部 PC事業部)だ。また、商品企画を担当した金森伽野氏(ソニー VAIO事業本部 企画戦略部門)にも同席してもらい、製品のこだわりを聞いた。
まずは分解に入る前に、ボディのデザインについて聞いてみた。よく見ると従来機とは大きく変わっているが、基本的なデザインは継承されている。金森氏は「VAIO Zは初代から完成度が高いと評価されてきたデザインだったので、あえて大きな変更はせず、質感の向上やさらなる洗練、機能美、精巧さといった部分を研ぎ澄ますイメージで作り上げた」と語る。
もっとも、従来機のデザインに流用したわけではなく、実際にはイチから設計し直している。新デザインの中心となるのは、切削加工で成型したアルミ製のトップカバーだ。キーボードパネルとパームレスト、そして電源周囲のシリンダー部分までを含むトップカバーが1枚のアルミ板で構成されている。これは肉厚のアルミの1枚板を押し出し成型で加工した後、それを削り出して成型したものだ。鈴木氏は「切削加工により、厚みを自由にコントロールできるようになり、剛性が欲しい部分だけを厚くして、頑丈さと軽さを両立できた」と胸を張る。
従来機はアルミの1枚板を打ち出したキーボードパネルとパームレスト一体型パーツを採用し、シリンダー部分は別パーツだったが、ここまで1つのパーツとして成型したことにより、剛性と軽さの両立に加えて、見た目の美しさにも配慮している。「材料としては同じアルミ素材だが、扱い方がまったく違うので、新素材に近いイメージで開発した。おかげで、絞り出しでは表現しきれないエッジ感も美しく出せた」と鈴木氏。
ボディ各所の素材も変化が見られる。天面には「VAIO X」と同様、カーボンレイヤーの間に特殊シートを挟むことで、軽量化しつつ剛性も確保した「ハイブリッドカーボン」を新たに採用した。一方、PC本体を切削加工のアルミ素材で覆って堅牢性が確保できたため、ボディ底面はマルチカーボンレイヤーではなく、炭素繊維を入れて強化した樹脂製にして軽く仕上げている。ちなみに、パームレストの盛り上がった部分(インタラクションテーブル)は中にFeliCaポートやBluetoothのアンテナがあるため樹脂製だ。
こうして骨格となるアルミ製トップカバーをメインに、適材適所の素材を配置することで、従来機と同レベルの剛性を維持しつつ、薄型化と軽量化を実現した。本体サイズは314(幅)×210(奥行き)×23.8~32.7(高さ)ミリ、重量は約1.36キロ(直販モデルは約1.35~1.62キロ)となっている。前モデルは本体サイズが314(幅)×210(奥行き)×24.5~33(高さ)ミリ、重量が約1.48キロ(直販モデルは約1.39~1.6キロ)だったため、数値上の差は小さいが、実際に並べてみると本体はかなり薄くなっているのが分かる。詳しくは後述するが、大幅にスペックアップしてこの薄型化と軽量化は見事だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.