アップルがデジタル写真管理ソフト「Aperture 3」の製品説明会を実施した。米Appleでフォトアプリケーション担当プロダクトマネージャーを務めるジョセフ・シュアー氏(Joseph Schorr)は、最新版のAperture 3を「iPhotoのシンプルさとApertureの高機能を融合させた製品」と表現し、実際にデモを交えながら、新たに追加された「人々」(Faces)や「撮影地」(Places)、画像編集機能として加わった「ブラシ」(Brushes)などの新機能を解説した。
「人々」と「撮影地」はiPhoto '09から導入された機能だが、Aperture 3ではさらに使いやすく進化している。写真に写っている人の顔を自動認識して写真をひとまとめに表示する「人々」では、ライブラリ全体からの検索だけでなく、結婚式や旅行といった特定のイベントのみに絞って顔を抽出できるようになった。また、インクリメンタルサーチにも対応しており、例えば“ある結婚式に出席した「J」で始まる人物の写真を並べる”といったことも簡単に実現できる。さらに、未設定の顔も一覧表示されるようになり、アドレスブックと連動して、名前の追加がすばやく行えるようになった。なお、メタデータが氏名で入力されていれば、(タグが名前で打たれていても)名字で検索するといったことが可能だ。
一方、GPSの座標データから撮影場所で写真管理を行う「撮影地」も、iPhotoから強化された。GPS付きカメラなどで写真に座標データが付加されていれば、Aperture 3のデータベース内(なければGoogle Maps)から自動的に地名やランドマークの名前に変換し、これを撮影地として登録してくれる(逆ジオコーディング)ほか、写真を地図上にドロップしてピンを落とし撮影地として設定したり、ピンを移動して再設定するといったことが簡単に行えるようになった。
また、GPSトラッキングログの読み込みも可能で、カメラにGPSがついていなくても、(背景などから)撮影場所が分かる最初の1枚だけを手動で設定すれば、GPSトラッカーのタイムログを参照して残りの写真に自動でジオタグを埋め込んでくれる。製品デモでは飛行機の遊覧写真を材料に、最初の1枚をマップ上の滑走路に設定するだけで、残りの写真がきちんと飛行した道筋に沿って並ぶ様子が示された。このほか、「撮影地」の地図表示には、従来のサテライトビューとマウンテンビューに加え、より見やすいロードマップが追加された。さらに、iPhone 3GSで写真を1枚撮っておき、これをカメラ側の位置情報として同期するテクニックも披露された。
今回のバージョンアップで200以上の新機能を搭載したAperture 3だが、起動してすぐに気付くのがユーザーインタフェースの刷新だ。人物の顔や場所、イベントごとに整理されてサムネイルが並ぶメイン画面はiPhotoのUIに非常によく似ている。シュアー氏は、「このユーザーインタフェースは、これまでiPhotoを使っていたユーザーがスムーズにApertureへ移行できるため、iPhotoよりもさらに高い機能を求めるユーザーに最適です」と狙いを語る。もちろん、従来iPhotoで管理していた写真ライブラリや、調整、メタデータなどはそのまま引き継がれるため、これまで同様の操作で写真管理をしながら、Apertureのより高度な機能を利用できるようになるというわけだ。
また、サムネイルをダブルクリックして全画面表示にした際、新たに導入されたライブラリパスナビゲータによって、フルスクリーン表示のまま複数のプロジェクトを切り替えたり、写真調整を行えるようになったのもポイントだ。パラメータ調整のHUD(ヘッドアップディスプレイ)も自動的に透明化するため、スムーズに写真全体の確認を行えるほか、適用する調整(スライドバー)だけを画面に残すといった使い方もできる。
一方、Apertureの新機能としては、選択部分のみに調整を加えるブラシと調整プリセットの充実が目を引く。ブラシは彩度や肌の色の補正、シャープネスなど豊富なエフェクトがあらかじめ用意されているため、一般的な補正なら非常に手軽に行える。また、特に便利なのがエッジ検出で、例えば山に囲まれた湖の写真を空の色だけ変更したい、といった場合でも、山のシルエットを即座に検出して目当ての部分だけを手軽かつ精密に調整できるようになった。写真全体(あるいはプロジェクト全体)に適用するプリセットもシャープネスやホワイトバランス、ハイライト補正をはじめ、さまざまなエフェクトが豊富に用意されており、ポップアップウィンドウに表示されるエフェクト適用後の写真と見比べながら、簡単に自分好みの絵作りができるようになっている。さらに、プリセットをベースにカスタマイズを行い、新しいオリジナルプリセットを作成して、いつでも呼び出せる。なお、これらはすべて非破壊編集で処理され、いつでも元の画像に戻ることができる。「以前はこれらの調整を行うために別のプラグインで作業してもう1度インポートし直す必要がありましたが、今後はApertureだけで完結できるのです」(シュアー氏)。
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