ところで、筆者がVAIO Pで仕事をする(主に原稿を書く)場合、最大の問題となるのが小さな画面サイズと細かな表示だ。普段筆者がノートPCでキーボードをタイプする姿勢では、画面からだいたい60センチくらい離れている。おそらくこのくらいの姿勢が、筆者の体にとって一番楽なのだと思われる。
しかし、VAIO Pを標準の表示解像度(1600×768ドット)で使っていると、やはり見づらいと感じているのだろう。無意識に目を近づけた姿勢になっていることがしばしばあり、集中して何か作業をした後の疲労が少し大きい。キーボードも普段使っているノートPCと比べれば、少し窮屈ではある(このサイズでは相当頑張っているが)ので、VAIO Pばかり使っていると、肩や背中あたりに負担を実感するのは否めない。
VAIO Pの画面表示の細かさ(ドットピッチの狭さ)はソニーも把握しており、対策として「解像度変更」ボタンがキーボードの手前に用意されている。これを押すと1280×600ドット表示に切り替わり、もう一度押すとまた1600×768ドット表示に戻る仕組みだ。解像度切り替えの際に画面がチラつくが、2〜3秒で落ち着く。これを使えば、Webページなども小さすぎて見づらいということはないし、テキストエディタのフォントを大きめにしておけば、十分戦力になる。
それでも、1280×600ドットに解像度を下げると画面は少し狭くなり、情報の一覧性も損なわれる。何かもっといい方法はないか……と思ったところ、楽天市場の「ルーペハウス」というショップで、ヘッドマウント型のルーペ(ヘッドルーペ)を見つけてピンと来た。
これは携帯用のルーペで、スライド式のスリムなベルトを使って簡単に頭に装着できる。レンズは着脱式で、1.7倍、2倍、2.5倍の3枚が付属しており、交換して利用可能だ。見た瞬間に、「これを使えば、VAIO Pがもっともっと快適に使えるのではあるまいか」と思ってしまったわけである。思ってしまってからは、一刻も早く試してみずにはいられなくなり、ポチッとやってしまった。
で、実際の使用感はというと、「微妙」の一言に尽きる(笑)。装着感や見やすさ自体については文句はないが、そもそも完全にルーペについての予備知識がなかった(どういう見え方になるか深く考えなかった)のが失敗だった。ルーペは倍率が高くなるほど、ピントの合う距離が短くなる。目安は2倍で16センチ、3倍で8センチとあるから、2倍以上は試すまでもなく絶望的だ。
というわけで、実際に使い物になるのは1.8倍のレンズだけだが、これもやっぱり残念な結果だった。ピントの合う距離の目安は25センチ程度。きちんとピントを合わせて使うには、自分でも意識できるほど画面に目を近づけた前傾姿勢で使わざるを得ない。その姿勢自体そう苦しいわけではないのだが、筆者にとってキーボードをタイプするうえで理想的な距離と思われる60センチにはほど遠く、しばらくタイプした後にはっきり疲労感が残る。
かなり大きなレンズなので視野は広く、画面を見るにはほとんど不自由を感じない。ただし、キーボードの文字まではっきり確認するのは無理で、完全にキーボードを見ないでタッチタイプできることが大前提だ。
両手でボディを握って使うモバイルグリップスタイルでは、目と画面の距離が自然に近づくため、結構しっくりくるものの、1.8倍というズーム倍率もまた微妙で、見やすくはなるが、表示の細かさが劇的に改善されるわけではない。それでもカバンに余裕があるときなどは、たまに持って行って使っているが、必要性があるかないかと問われれば、「ない」といわざるを得ないだろう。いや、何かほかに役に立つことがあるかもしれない、いつかきっと……。
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