2時間半のセッティングタイムが終了して、ついにSuperPI 32Mが始まった。試走のSuper PI 8Mは1分十数秒で終了するが、32Mになると6分を超えて走ることになる。その間に「一番走る温度」を維持しなくてはならない。これは、温度計の値を見つつ、液体窒素の注水量と温度下降を食い止めるバーナーの点火タイミングと加熱時間を、すべて“経験の勘”で制御しなければならない。
開始15分、フィリピンチームが6分41秒547で記録をアップした。各チームの記録は公式記録員に申告し、記録員がスクリーンショットの内容を確認した上で、“手書き”でシートに記入し、そのシートを競技本部に提出する。競技本部では、シートに書かれた値を集計用PCに入力し、その結果が会場の大スクリーンに表示される。この過程を通らないと公式記録として認定されない。
フィリピンに続いて、マレーシアが記録を申請、6分31秒202でトップに立つ。残り時間1時間50分でTeam “KATANA” Japanも6分33秒734で最初の記録を申請した。日本予選のトップ記録はCAL930氏の6分29秒671。Team “KATANA” Japanの上にいるのはマレーシアの6分30秒531と台湾の6分31秒186で、まだまだ余裕がある。
しかし、この時点で韓国が6分28秒906を出してトップに出た。Team “KATANA” Japanもチューニングを進めるが、システムが起動しなくなってきた。どこに原因があるのか分からない。メモリタイミングの設定を調整し始める。このとき、マレーシアと台湾が記録を更新してそれぞれ29秒台に突入、さらに、中国が6分28秒485を出してトップを奪った。残り1時間34分でTeam “KATANA” Japanの上を行くチームがすべて29秒台に達したことになる。
Team “KATANA” Japanは、駆動電圧を下げることでシステムの起動に成功し、SuperPI 32Mを再び走らせることができた。いったん走れば、当たりのいいCPUだけに期待がかかる。まず、6分31秒015で記録を縮め、続いて6分29秒297と29秒台に到達したが、そのとき、マレーシアは6分26秒32、そしてタイが6分26秒562と、トップ争いは26秒台の世界に突入していた。5位までが29秒を切っていてTeam “KATANA” Japanは6位。この時点で残り時間は23分しか残っていない。セッティングと実行時間の6分半を考えると、あと1〜2回しか走れない。Team “KATANA” Japanはセッティングを慎重に定めてシステムを起動するがSuperPI 32Mを走らせることができず。結局SuperPI 32Mは6位という結果に終わった。
決勝前日、CAL930氏とGyrock氏は日本のベンチマークテストレースの現状について、「日本のオーバークロッカーはSuperPIに長年集中して取り組んできたので、CPUベンチマークテストの実力はかなり高いレベルにある。しかし、3DMarkをはじめとするGPUベンチマークテストは、ようやく始まったといえる段階だ。現在、世界のベンチマークテストレースはGPUを重視するようになっている。そのため、日本のオーバークロッカーは世界の大会で苦戦している」と語っていた。MOA 2011も配点はSuperPI 32Mが4割で3DMark11は6割というウェイトだ。得意とするSuperPI 32Mで好成績を残し、3DMark11で迫るライバルから逃げ切りたいところだったが、果たしてどうなるだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.