さて、モデルのお嬢さまに書いていただいたデータをPCで見てみよう。これには付属のInkling Sketch Managerを利用する。レシーバをPC本体と接続すると、レシーバの記憶領域に保存されているSetupからPCにインストールされる。インストールを終えると、そのまま記録されているデータのサムネイルを表示する。そこから見たいデータを選べば表示する。Inkling Sketch Managerでは、拡大縮小、回転、そして、手書きで書き進めていった過程を再現できる。
また、ドキュメントを異なる形式で出力することも可能で、PNG、JPEG、PDF、SVG、BMP、TIFFと画像関連の主流をサポートする。
文字とイラスト、そして、入り組んで込み入った線でも、Inklingは正確に記録していってくれる。紙に書いた手書き入力をデジタルデータに記録するデバイスとして、Inklinkは十分に使えると考えていいだろう。
ワコムのペンタブレットは、精度の高い筆圧検知機能を採用する。Inklingも1024段階の筆圧を検知できる。ただし、筆圧は“ペンの押し込み具合”でチェックするので、ペン先がボールペンのデジタルペンでは、使っているときに実感がない。また、設定側でブラシサイズを設定しないと筆圧が認識されないなど、やや手間が多い。デフォルトのブラシサイズは1になっており、変更すると既存データの線幅も変化するが、筆圧は反映されない。2以上に設定している場合は筆圧が再現される。
ブラシサイズは1〜30まで。筆者が使用した感覚だと、ペンの筆圧で入り抜きを残したいのであれば、3〜8くらいがちょうどいい感じた。
ブラシサイズの変更は「ツール」から行う。インタフェースの問題だが、サムネイルが表示されているメイン画面でしか表示されないので、マニュアルを読まずに使い始めると、ブラシサイズの変更メニューを探し回ることになるだろう。
アドビのIllustratorとの連携機能は、Inklingのデータをパスするだけでなく、詳細なペジェデータとして残しているので、あとからの微調整が楽にできる。書いている途中の軌跡の変更ごとにポイントが残され、さらに引いた線ごとに分かれている。下書きの精度によっては、そのままフィニッシュ作業に使えるだろう。レイヤー機能はビジュアル面で分かりにくかったが、こういった用途であれば、スケッチを描き、レイヤーを追加して、メモ書きという利用ができそうだ。
Inklingのハードウェアは、“ペンタブレットのワコム”らしく扱いやすく、描くだけでなく携行性も優れている。一方、付属するソフトウェアのInkling Sketch Managerは、使い勝手や分かりやすい操作という面で改善を望みたい部分がある。筆圧機能を重要な機能としてユーザーに訴求するなら、ツールバーで変更できるようにしておきたい。パッケージに記載されている文書などでデフォルトで筆圧機能が有効になっていると先入観的に思っているユーザーも多いはずだ。Inkling Sketch Managerの改善次第で、デジタルペンの定番になってくれるのではないだろうか。
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