AMDは、APU開発においてパワーマネジメント技術も重要な要素と位置づけている。Trinityにおいても、電圧や消費電力の管理に加え、きめ細やかな温度管理を組み合わせて、TDP(Thermal Design Power)に余裕がある場合、CPUコアやグラフィックスコアの負荷に応じて、各コアの動作限界温度までオーバークロック動作を可能にすることで、最大限のパフォーマンスを引き出せるようにしている。AMDの上級副社長 兼 新CTOに就任したマーク・ぺーパーマスター氏は、「今後もより優れたパワーマネジメント技術の開発を継続することで、消費電力あたりのパフォーマンスを向上させ続ける」と語る。
ペーパーマスター氏は、Trinityを同社が推進するHeterogeneous System Architecture(HSA)の確立において重要な役割を果たす存在と位置づけている。同氏は「Trinityは、HSAメモリ・マネージメント・ユニットを搭載した最初のAPU」とし、仮想メモリなどのサポートにより、GPUとCPUがより密接にデータの共有ができるようになると説明する。
同社が“Unified North Bridge”(UNB)と呼ぶTrinityに統合されたノースブリッジ機能は、グラフィックスコアのメモリコントローラが直接メモリにアクセスするときに、リンクコントローラがCPUのメモリアクセスとの調停を行なうことで、GPUがDDR3メモリのフル帯域を利用できるようにしている。また、UNBに内蔵したリンクコントローラとグラフィックスコアを128ビット幅のFusion Control Linkで結び、GPUがCPUのコヒーレントメモリ領域にアクセスしたり、CPUがGPUのフレームバッファ領域にアクセスすることも可能にするなど、HSA対応でも重要な役割を果たすとされる。
なお、HSAの詳細については、6月11日から米ワシントン州ベルビュー市で行う「Fusion Developers Summit 2012」で公開する見通しだ。
今回登場しないデスクトップPC向けTrinityの投入時期だが、マザーボードベンダー関係者によれば「6月以降になる」というのみで、具体的なスケジュールは確定していないようだ。
しかし、AMDはデスクトップPC版Trinityの最上位モデルとされる「AMD A10-5800K」のパフォーマンスを公開しているほか、一部の関係者に向けた非公開の説明会では、ライブデモも紹介したという。ここで用いたGIGABYTEのマザーボードには「GA-A85X-D3H」という型番が記されており、モバイルプラットフォームとは異なり、デスクトップPC向けにはAMD A75 FCHの上位となるチップセットを用意する可能性もある。
また、マザーボードベンダー関係者は、「TrinityのCPUソケットは604ピンのSocket FM2となり、現行のSocket FM1(905ピン)とは互換性がない」と伝えている。以上の“観測的”情報などデスクトップPC版Trinityに関するより詳細な情報は、COMPUTEX TAIPEI 2012で明らかになる見通しだ。
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