> コラム 2003年7月22日 09:56 AM 更新

デジタル写真時代の表現者#002
佐藤希以寿氏の現場(2/2)

佐藤氏は世界的に有名なある企業の超ポピュラーな商品群をデジタルカメラで複写し、データ化する重要な任務を請けている。今回は都内某所、佐藤氏の個人スタジオに押し掛けた

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 「バブル崩壊を経て、撮影のギャランティーが下げ止まらない時代に突入したんですね。何か自分なりのセールスポイントが必要だ、という気持ちがありました。そこで、自分はデジタル化に進んでいくしか道はない、と」

 「Macを始めた当初はスキャニングと画像加工がメインでしたが、その延長線上には業務ユースに耐えるデジタルカメラの登場がやって来ると考えていました。デジタルカメラでの撮影がとにかくやりたかったんです」

 佐藤氏の設備投資に、時代がついてきた、という感がある。来るべき時代を予見し、その通りになったのは幸いだったが、佐藤氏が機材に投じた費用は半端な額ではない。先駆者はリスクとともにあるのだ。ところが佐藤氏と話していると、当人はそんなリスクをまったく意に介していないようである。

 ところで、20万円のEOS10Dが600万画素。そして500万円のリーフ・ボラーレも600万画素。この値段の開きは一体どういう結果につながるの? という疑問を持つ人はプロのカメラマンの中にも多い。これについて、さすがは写真学校の講師である。佐藤氏は明快な回答を用意していた。

 「一眼レフタイプのデジタルカメラは12ビット・ハンドリングであるのに対し、スキャナタイプの高解像度デジタルカメラは14ビット・ハンドリングとなっています。この差は4000階調と1万6000階調という表現の開きにつながります。8ビット・256階調のjpegデータにに落とし込む場合、どちらのレンジ幅から選び出した256階調のほうがきれいか、ということです」

 「リーフ・ボラーレはRGB各版が600万画素を持っていますから(G版は2枚)、実質有効画素数は2400万画素なのです。さらにリーフ・ボラーレの場合、撮影後にトーンカーブを自由に変えられます。画像の品質管理にすぐれているわけです」

悪条件のほうがおもしろい写真が撮れる

 佐藤氏はロケにも14ビット機を精力的に持ち出す。ジナーバック23(価格385万円)とサイバーキット(価格80万円)のセットである。


ハッセルブラッドに取り付けたジナーバック23。佐藤氏のスタジオでは、これも稼働率の高いカメラだ。スイスのジナー社によるデジタル・バックで、1ショット・モード(動きのある被写体)および4ショットモード(静物)での力ラー画像用CCDエリア・センサーを搭載している。中判カメラと組み合わせて使用する


奥に見えるトランクには、ジナーバック23での屋外撮影を可能にしてくれるサイバーキットが入っている。ノートブックやタワー型コンピュータの代わりを務める撮影モバイルアクセサリーで、大型カラーLCDタッチスクリーンを搭載。専用ベルトで身に付けることができる。手前はベターライトでの屋外撮影用キット

 「去年、テストのつもりで富士山を撮りに行きました。ロケに持ち出せる1ショット14ビット機ということで。けっこうおもしろくてハマってしまいました」

 「先日(2003年6月)は、日光の山の中で滝を撮りに出かけました。大きな木の枝の下に入り込んで撮影していたんですが、『やけにしぶきがすごいなあ』と思っていたら、いつの間にか木陰の外は土砂降りのような夕立ち」

 「傘を持ち合わせてなくて、急いで撤収。クルマに駆け戻ったときはジナーバックからしずくが滴り落ちてました。懸命に声をかけながらうちわであおいで乾かし、しばらくして立ち上げたら起動しました。最初の数枚はデータが死んでましたが、機械は無事でした」

 プロの機材とは、なんと過酷な運命であることか。そんな使い方をしても壊れないものなのか……。

 「雪山でベターライトが雪に埋もれたことも(笑)。撮影していたら、さらさらと降っていた雪がドカドカ降り。山の天候が豹変したんです。慌ててコンピュータにカバーを被せて撤収。でも、部屋に戻ってストーブの前で乾かしておしまい。無事起動して、ラッキーと(笑)」  「悪条件のほうがね、面白い写真が撮れるんですよ」

 光源が乏しい曇りや雨の日の屋外に持ち出す場合、広い階調域を持つ高解像度デジタルカメラは圧倒的に有利。数十万円で買えるデジタル一眼レフと、数百万円支払うカメラバックタイプとでは、やはり大きな差が出るのである。

 それにつけても最近思うことは、写真を生業とする人はオフの日も写真を撮っているんだなあ……。


内蔵ハ―ドディスクとユニバ―サルACを装備したスキャナタイプのデジタルカメラ、ベターライトSuper 6KII。コネクトケ―ブルでカメラバックに接続、内臓ディスクドライブに画像を保存する。画素数はなんと1億800万画素


佐藤 希以寿(Sato Keiju)

 1977年、会社員からスタジオアシスタントへ転身。1984年、撮影会社からフリーランスフォトグラファーへ。以来カタログを中心に、人物・食品・貴金属・インテリア等々ジャンルを問わない撮影の日々。1994年のデジタルカメラ導入後は、デジタル画像処理・3DCGの制作を始め、デジタルセミナー講師・写真学校の講師も行う。

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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