技術へのこだわり
dynabookに見る“コダワリ”のモノ作り(3/3)
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しかし東芝にとって、dynabookが強靱で壊れにくいのは“当たり前”のこと。重く、分厚く、無骨で、落としても壊れないと思えるほど頑強だったdynabookの時代から「強さに関する基準は何ら変わっていない」。
一点加重試験
PCを携帯するユーザーが増え、単に丈夫なだけではユーザーニーズを満たすことができなくなったが、東芝のポリシーは変わらない。「ユーザーが高い所有感を感じられる、最新トレンドのフォームファクタを採用するだけでは意味がない。dynabook基準の丈夫さあっての最新デザインだ」。かつての骨太なデザインは、曲線を生かしたエレガントなデザインへと変貌を遂げたdynabook。しかし、その頑固な姿勢は全く変化していない。
環境対策や先端技術へも積極姿勢
一方、我々の目が届きにくい部分でも手を抜かない、他社よりも先を行くのが東芝・青梅事業所のポリシーだ。
ハロゲンフリー基板は世界に先駆けて1998年から実用化。ハロゲンフリー基板とは、ハロゲン元素を用いないプリント基板のこと。プリント基板はハロゲン材料を用いることで、難燃性、反り難さの少なさといった特性を得ることができるため、製造が容易になる。
しかしハロゲン元素を用いた基板は、燃やすとダイオキシンを発生させる。このためハロゲンフリー化が以前から叫ばれているが、製造の難しさから、特に部品実装密度の高い製品では全面的な採用に至っていないメーカーが多い。青梅事業所ではその中でも、最も早く完全ハロゲンフリーを実現した。
実装開発センター・第二担当主務の八甫谷明彦氏(ハロゲンフリー基板担当)
実装開発センター・実装開発第一担当主務の小川英紀氏(SMT新実装開発担当)
中央の葉型が、ハロゲンフリーのマーク
同様に公害へとつながる鉛入りはんだの全廃も、青梅事業所では実現している。広く知られているように、電子部品をプリント基板に実装するはんだは、鉛とスズを主成分とする合金である。鉛入りはんだは溶融温度が低く、生産性を高めることが容易なため幅広い電子機器で使われている。しかし他方、鉛を含む製品はそのまま廃棄、あるいは燃やすことで公害となる。
東芝・青梅事業所では鉛を使わない鉛フリーはんだを用いながら、はんだ不良や生産性低下などを発生させない高い生産技術を開発した。「鉛フリーはんだは1998年、世界で初めて採用した。現在、青梅事業所が生産するすべての製品が鉛フリーはんだになっている」というが、その製造技術開発が青梅事業所で行われた。
鉛フリーはんだは、代わりに銀を主とする素材を使用している。鉛はんだの溶融温度が183度なのに対して、銀はんだは約220度。この温度差が部品や基板に対して高い熱負荷をかける。前述したように、東芝はプリント基板を熱に弱いハロゲンフリーへと切り替えているため、単純にはんだの溶融温度が高くなる以上の苦労もあったようだ。
技術的に課題があったとしても、それを克服することで環境負荷を低減する。東芝・青梅事業所の精神は、もちろん今後登場が見込まれている最新技術にも向いている。
例えば各部から発生する熱を効果的に輸送する、液冷システム採用のノートPC開発を進めている。半導体の性能向上とともに、PCの消費電力は上昇傾向にあり、それに伴う熱処理は薄型・小型のノートPCを開発する上で大きなテーマだ。
液冷システムは比較的自由に熱を移動させることが可能になるため、これまで放熱にあまり貢献していなかった液晶パネル裏面などを放熱に利用可能となる。その結果、冷却ファンなどによる強制的な廃熱の必要性を最小限に抑え、ハイパフォーマンスなノートPCを快適に利用することが可能となる。
またノートPC向け燃料電池の試作モデルや、有機ELディスプレイのノートPCへの応用など、東芝はノートPCの未来を広げるさまざまな技術に対し、積極的な開発を行っている。
[本田雅一, ITmedia
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