> ニュース 2003年11月14日 06:30 PM 更新

開発者インタビュー
デザイナーが語るバイオノート505エクストリーム(2/2)


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 筆者はインタビュー前、製品を数日間使うことができたが、そのときに感じたのが「頭脳エリア」のクリアなデザインだ。通常、何ら機能が割り当てられていないエリアがあると、ボタンを配置したりしてとにかくその場所を使いたくなるものだ。しかし、X505の頭脳エリアには小さなバイオロゴ以外、何も配置されていない。

 「製品の中に何も存在しないエリアを作りたいと考えていました。だから、キーボードからヒンジの間は絶対空白にしたかった。確かにボタンを配置するなどのアイデアも出てきましたが、デザインのイメージスケッチで空白、いわば“間”といいますか、そうした部分の大切さを開発者にも理解してもらっていたので、デザインを非常にクリアにすることができました」(森澤氏)



X505は内部の構造で三つのエリアに分割される。キーボードとバッテリーの間に配置された「頭脳エリア」にあたる部分の筐体は、まったく何も配置されていないクリアな空間となっている

デザイン目標の80%は達成できた

 キーボードのデザインは、X505の実物を見た者の間でも意見の分かれるところである。キーがフレームの中にひとつづつ埋もれるデザインは、昔のラバーキーを思い起こさせる。むしろ、実際の操作感は17ミリピッチのサブノートPCとしては良好なのだが、デザインだけを見ると昔の悪い記憶を蘇らせるユーザーもいる。

 「キーボードはキートップ、フレームともに同じ色で塗装し、一体感のあるデザインにしたかったのです。デザインイメージは、それぞれのキーのある場所に窓があって、そこからキートップが顔を覗かせている感じです。もちろん、打ちやすさにも注意しています。X505の開発では、キーボードメーカーと直接話をし、打ちやすさとデザインの両立を果たすことができたと思っています」(森澤氏)

 X505の最重要コンセプトである“薄さ”に対しては、デザイン的にどのようなアプローチをしたのだろうか。  「これまでのノートPCは、ある程度の厚みがある本体をいかに薄く見せるか、がキーポイントでした。X505は本当に薄い。でも本当に薄いものを、さらに薄く見えるようにデザインしています。とくに筐体サイドのラインには気を遣っています」

 「アンダーシェルの中央部が高く、両端に向けてなだらかに薄くなっていくデザインも薄さを強調するため。厚みを急に絞り込むと不自然になりますから、微妙な曲面でサイドへ繋がるようにしています。その微妙な曲面に合わせて内蔵している部品の高さを調整する設計も行われています」(森澤氏)

 とはいえ、森澤氏が考える理想のボディラインと技術的な問題をどのように解決していくか。開発は再設計の繰り返しだったそうだ。現在の2倍あったメイン基板の横幅は、再設計するたびに小さくなっていく。しかも、最終的にMDサイズにまで縮小された後でも、部品の高さを調整して底面のラインにこだわり続けた。

 「外装の表と裏をユーザーに意識させたくなかったのです。腕に抱えて持ったとき、裏が外に向いていると格好悪い。そんなノートPCにはしたくなかったから、どうしようもないWindowsのライセンスシール以外は、すべて隠れた部分にステッカーを移動してもらいました」

「もてなしの心」で、製品から受けるイメージをすべてデザイン

 森澤氏は、X505の本体だけでなく、付属品、マニュアル、パッケージといったあらゆるデザインを担当している。この中には、専用設計のメモリースティックスロット内蔵のマウス、無線LANカード、壁紙、マニュアル、リカバリディスク、本体や周辺機器のキャリングケースなども含まれる。

 統一されたデザインテイストの中で、一つ気になるのがV505やZシリーズと共通のACアダプタ。薄型ではあるが、底面積は大きめで対応ワット数も大きい。プラグ形状やコードの太さなども、超薄型のX505と並べると違和感がある。ここまで贅を尽くした製品ならば、ここも「もてなしの心」でスマートなACアダプタをデザインして欲しかった。

 「実はACアダプタも専用のものをいったんは設計したのです。しかし、電源付きのi.LINK端子へデバイスを繋ぐことを考慮すると、それなりにワット数の大きなACアダプタが必要になります。フットプリントを小さくすると、今回採用したアダプタよりも厚くなってしまう。そのため、デザインの観点から、現在のアダプタを採用するようにお願いしました」

 化粧品のパッケージデザインを手がけていたという森澤氏は「製品を購入してくれたユーザーに対して、“日本人の持つもてなしの心”で対応したい。だからすべてを自分でデザインしたかった」と話す。

 その「もてなしの心」を最も印象づけるのがX505のパッケージだ。黒で統一されたパッケージを開け、最初に出てくるのが書籍サイズの内箱。この箱にはリカバリディスクやマニュアルなどの付属書類がすべて収納されており、すべてをまとめて書棚に収納できるようにデザインしたそうだ。

 「私の言う“おもてなし”とは、購入してから箱を開けて使い始めるまでのプロセスにも配慮することです。箱を開ける瞬間から、エンターテイメントを楽しんでもらいたい。化粧品のパッケージなどで行ってきた演出を、PCユーザーにも提供したかったのです」(森澤氏)

 PCのデザインで、このようなユーザーに対する演出まで意識した製品は、例が少ないだろう。これほどまでにデザイナーの考えを反映させていくと、技術畑の開発陣と摩擦が起きることが多々ある。しかし、森澤氏の次の言葉は、X505のコンセプトが、技術者やデザイナーといった分野を超えて、全員にはっきりと意識されていたことを示している。

 「デザイナーとしていろいろ注文させてもらいましたが、開発陣と怒鳴り合うような議論は一切無かったですね。目標は同じでしたし、技術的に不可能なことがあっても、デザインに妥協を求められたところもありません。X505のデザインコンセプトにおける達成度は80%。通常、70%達成できれば目標クリアですが、それを大きく上回る完成度だと自負しています」(森澤氏)



黒いX505のパッケージを開けると最初に出てくるのが付属物をまとめた内箱。ファイルフォルダのように本棚にそのまま置いておける

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▼ バイオホームページ

[本田雅一, ITmedia ]

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