> レビュー 2003年6月2日 09:00 PM 更新

縁なしプリントができる複合機では最も安価!
キヤノン PIXUS MP5(3/3)


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 縁なしプリント機能を軸に、コピーモードも写真を自動的に切り抜いて縁なしコピーしたり、A4原稿をA4サイズのまま隅々までコピーしたり、あるいは自動拡大/縮小でカット紙に縁なしプリントしたりと、多彩なコピーモードをサポートする。もちろん、年賀状の季節がやってくれば、さらにそのメリットを実感することができるだろう。

 さて、実際の印刷品質だが、5plの4色印刷ということで、写真印刷時の粒状感はそれなりにある。キヤノン純正のプロフォトペーパーは、光沢感が強く、画質面での不利をある程度は補って写真らしい仕上がりとなるが、実力的には4色機として平均レベルといったところだ。

 しかし普通紙印刷時はコントラストが高く、黒文字のにじみも少なめで、満足できる仕上がりを得ることができる。

 ただし、カラーコピー時の画質は少々粗めで、PCから出力した時よりも多少落ちる印象だ。色の忠実度という面でも、悪いというほどではないが、同クラスの他社製品にはもっと色のマッチングが良いものもある。無難な表現で申し訳ないが、可もなく、不可もなく、といった印刷およびコピー品質だった。

スキャナ部は改善を期待

 低価格機にはCISスキャナ。センサーや機構部のコストを考えれば、この図式はなかなか崩しがたいようだ。本機の場合も、キヤノン独自のCISであるLEIDセンサーを採用したスキャナ部が装着されている。

 LEIDのスキャナは、一般的なCISスキャナと比較すると、光量が多めで画質面でも優位に立つ。低価格インクジェット複合機のほとんどがCISスキャナであることを考えると、若干ながらスキャナ部では他製品をリードしているとも言える。実際、スキャナ台に密着させることが可能な原稿ならば、性能的な不利はない。

 しかし、LEIDといえどもCISの一種であり、被写界深度の浅さは免れることができない。被写界深度とはピントが合う範囲、深さのことで、CCDセンサーを用いたスキャナが深い被写界深度を持つのに対して、CISでは原稿台ピッタリの場所にしかピントが合わない(このため高画質のコピーやスキャンを行いたい場合は、しっかりとガラス面に密着されていることを確認したうえで作業することを勧める)。その結果、原稿台に密着させることができない厚手の本や雑誌などをコピーする際には、密着できない部分の文字やテクスチャがうまく読み取れないという問題が起きる。

 低価格スキャナなどの場合、そのあたりはハッキリと割り切って使うこともできるだろうが、家庭での手軽なコピー機という性格を考えると、被写界深度の問題はなんとか解決して欲しいところだ(もちろんこれは本機に限った話ではなく、すべてのCIS採用インクジェット複合機に言えることだが)。

 CISの採用は、コストと機能性、性能以外にも多くのトレードオフが存在する。良い面で言えば、CISはセンサー部がコンパクトなため小型化しやすく、薄型コンパクトなスキャナ部としやすい。本機に装着されているものも、相当に薄型でサイズも小さなものだ。他製品や上位機種も含めて検討する場合、そのあたりの事も考慮して選定するといいだろう。

 なおスキャナユーティリティは、シンプルな操作性で初級者にもわかりやすい、同社製ローエンドスキャナにも通ずるものが付属している。機能面では物足りなさを感じるかもしれないが、使いやすさに関しては心配無用だ。

縁なしプリント機能を外せない人に

 本機は、無難なプリンタ部に無難なスキャナ部を組み合わせた、画質面でも大きな不満がない代わりにこれといったアピールポイントもないインクジェット複合機である。さすがにプリンタ、スキャナ、コピー機それぞれの分野のトップランナーだけあって、作りやドライバのデキに関しては安心でき、ソツのない製品ではあるが、インプレッシブな製品ではない。

 ただ、ローエンド機種でありながら、実用的な速度で縁なしプリント機能が利用できる点は評価したいところ。インクジェット複合機では、単機能のインクジェットプリンタほどは縁なしプリント機能の重要性は訴えられていないが、決してその重要性が低いわけではない。年賀状印刷時のレイアウト自由度などを考えれば、プリンタ部の機能として重要なことは変わりないし、コピー機能においても縁なしであることは大きなメリットとなる。

 今後、同様の特徴を持ったローエンドのインクジェット複合機も登場するかもしれないが、現時点での無難な選択肢であることは間違いない。

PIXUS MP5:印刷サンプル

  • 写真のコピー


ハイライトとシャドウの階調がなくなっており、たとえば髪の毛の立体感は全く失われてしまった。肌色はオリジナルとは異なる色だが、ほどよく補正されて見栄えは悪くない。肌色以外の中間階調は色相も含め、低価格機としては良好な結果。ただし粒状感は高め

  • PCからの出力


自然な仕上がりで粒状性もコピー時よりグッと少なくなっているが、人肌のサンプルではもう少し粒状感が出てくる。もっとも、価格を考えれば十分な画質。トーンカーブも極端な補正は見られず、写真らしい描写だ

  • 普通紙へのコピー


にじみも少なく色も適正。多少、黄色がきつめだが、コントラストが低くなりがちな普通紙において良好な画質を実現している。にじみも染料系インク採用機の中では少ない方だろう

[本田雅一, ITmedia ]

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