IPv6――普及の条件

【国内記事】 2002年3月6日更新

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 IPv6を前提とした端末が登場したとき,ネットワークとしては「IPv4ネットワークの海にIPv6の島がある」状態だが,その島が徐々に大きくなり,ついにはIPv4ネットワークを飲み込む。

 その間,PCの世界ではトネリングもしくはデュアルスタック(昨年5月の記事を参照),あるいはトランスレーションによるIPv4/v6両対応が一時代を築くが,トネリングサービスも「当初はIPv6 over IPv4だが,時間とともにIPv4 over IPv6に移る」という。徐々にではあるが,IPv6対応の製品も登場してきている(下記)。

ルータ日立製作所,シスコシステムズ,NEC,IIJなど
アクセスゲートウェイ日立製作所,NECなど
OSWindows XP,AIX4.3,HP-UX11i,Solaris9など
IPv6/v4トランスレータ日立製作所,横河電機など
接続サービスIIJ,KDDI,NTTコミュニケーションズ,パワードコムなど

端末とアプリケーションは同時に

 端末を担当する製造業界も,IPv6に熱い視線を送っているようだ。IIJの三膳氏は,IPv6の認知度が向上するにしたがい,同社に話を持ち込む企業の種類が変化してきたと話す。

「最近は,家電メーカーや自動車メーカーが増えてきた。彼らは,従来のネットワークそのものを事業とするIT系企業とは異なり,ネットワークを1つのパーツとして利用しようとしている」。

 その背景には,CATVやADSLが普及し,一般家庭に常時接続をもたらしたことがある。常時接続のブロードバンド環境は,情報家電の登場に向けた下地を作った。

 一方,“キラー端末”と目される携帯電話は,2005年にも3.5G(3.5世代)で一部IP化され,2010年頃には4G(第4世代)でオールIP化が実現する見込みだ。もちろん,IPv6が前提となる。

「(携帯電話のように)端末とアプリケーションは,おそらく同期する形で登場するだろう」(三膳氏)。家電や自動車はもとより,行政までを取り込もうとするIPv6は,インターネットを,単なる「通信インフラ」から「社会インフラ」へ発展させる技術になるという。

IPv6はビジネスチャンス?

 もとより,IPv4アドレスの枯渇は時間の問題だ。APNICの測定データをもとに日立製作所が予測した数字では,2006〜2008年の間にIPv4アドレスが底をつくと結論付けている。ポイントは,10億人の人口を抱える中国でのインターネット普及だ。

 移行が規定路線であれば,そこに新しいビジネスチャンスを求めるのが企業。NTTの市川氏は「IPv6普及のためには,成功例の循環(1つの成功例が次の成功のベースになる)を形成することが重要」と指摘する。1つの成功事例が出てくれば,後に続く企業が増えるのは必然だ。また,IIJの武居氏は,「やる気になれば,大規模なIPv6の商用ネットワークを作ることはできる。あとはアイデア勝負」と発破をかけた。

 他社を煽っているようにも聞こえるが,求められているのがIPv6の普及を進める“起爆剤”としてのアプリケーションであることは確かだろう。IPv6を前提とした最初のアプリケーションを提供するのは,チャレンジャーか,はたまた“人柱”か。環境は整いつつあるものの,“IPv6の普及”に向けては,まだ足りない部分がある。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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