ニュース 2002年8月23日 02:29 AM 更新

IPv6、日本主導はいつまで続く?

IPv6普及・高度化推進協議会が2002年度事業計画を決めた。最もプライオリティの高い項目として挙げたのは「海外戦略」。研究開発で先行した日本が、今後も舵取り役であり続けるという決意表明にみえる

 IPv6普及・高度化推進協議会は8月23日、第6回総会を開き、2002年度の事業計画案を採択した。基本方針として挙げたのは、海外戦略、セキュリティモデル構築、サーティフィケーション(関連機器の評価技術)、そしてアプリケーション研究。とくに海外戦略は、IPv6の研究開発で先行し、数々の実証実験を行ってきた日本がイニシアチブを握り続けるための重要課題だ。


IPv6普及・高度化推進協議会の村井純会長

 IPv6普及・高度化推進協議会会長を務める村井純氏(慶応義塾大学環境情報学部教授、WIDEプロジェクト代表)は、冒頭の挨拶で7月に開催された「第54回IETF横浜会議」を振り返り、「日本で(IETFの会議を)開催したのは大きな意義があった」と話す。

 IPv6を早期に実用化したい協議会は、IETFに向けて周到な準備を行った。成田空港や「成田エクスプレス」の車内ではIPv6対応の無線LANをアピールし、大手町のIPv6ショウルーム「GALLERIAv6」で各種アプリケーションのデモを披露。来日した海外の研究者に対して、IPv6が実用に足る段階に来ていることを示した。

 「横浜会議が始まった当初は、専門家の中にもIPv6の実用化は“まだ先”と考えている人が多かった。しかし、期間中にIPv6が“次世代”の技術ではなく、“今日のプロトコルである”というアナウンスがあり、会議の雰囲気が変わった」(村井氏)。もちろん、これには協議会が用意した数々のデモンストレーションが寄与している。

 しかし、IPv6が注目を集めるに従い、別の課題も出てきた。まず、海外のIPv6テストネットとの接続や関連機器の検証など、協議会事務局に対する要望や問い合わせが増えた。IPv6が実用に近づくにつれ、先行する日本の国際的な責任も増しているという。

 協議会は、海外戦略の具体的な検討項目として、中国をはじめとするアジア地域における関連技術とアプリケーションの普及促進、そしてアジアやEUをターゲットとした実験網の整備・拠点間連携を挙げている。日本で開発されたIPv6関連機器が海外のテストネットでも動作することを証明する。これは同時に、協議会に加盟している企業の市場拡大にも繋がるという。

 「実証実験で日本は先行していたが、世界中で同様の動きが出てきた。これまで日本だけだったマーケットがグローバル化している」(村井氏)。

焦点は米国の対応

 協議会の国際戦略には、もう1つの検討課題がある。それは、「IPv6アドレスの具体的割り当て規則など、活用例に関する提案」。

 IPv6アドレスの割り当て方法に関しては、既に、RIPE、APNIC、ARINといった団体との協議を経て、RIR(リージョナルインターネットレジストリ)と呼ばれるアドレス割り当て方針が決まっている。これにより、ISPなどにアドレスを割り当てる業務を行う土台が整った(6月28日の記事を参照)。「RIRを決める議論においては、日本の提案が大きな影響力を持った」(村井氏)。

 今後、具体的な割り当て規則などを決定する上で、RIRと同様に日本発の提案を行い、グローバルポリシー化する。これが協議会の重要な課題だ。

 現行のIPv4のアドレス割り当ては、インターネット発祥の地である米国を偏重したものであり、米国内ではまだまだ余裕がある一方で、アジア圏を中心にアドレス空間の不足が目立っている。日本がIPv6を主導することは、この状況を打開する一番の近道。「米国はIPv4のマジョリティを持つため、“のんびり”している。日本がイニシアティブをとって進める必要がある」(三菱総研)。

 とはいえ、米国も政府調達にIPv6対応を指定するなど、徐々に動き始めた。今後、アドレス割り当て規則の策定などに影響力を発揮してくる可能性は低くないだろう。

 IPv6の拡大を促進すると同時に、日本の主導的な立場を失ってはならない……IPv6普及・高度化推進協議会は、ある意味、二律背反する課題を背負っているといえそうだ。

関連リンク
▼ IPv6普及・高度化推進協議会

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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