リビング+:ニュース 2003/03/24 23:51:00 更新


最大50MbpsのADSL「eXtremeDSL MAX」とは?

センティリアム・ジャパンは3月24日、新しいADSL技術「eXtremeDSL MAX」を発表した。下りの周波数帯域を4倍に拡大する“クアッドスペクトラムADSL+”などを使い、下り最大50Mbps/上り最大3MbpsのADSLサービスを実現するという

 センティリアム・ジャパンは3月24日、新しいADSL技術「eXtremeDSL MAX」を発表した。下りの周波数帯域を4倍に拡大する“クアッドスペクトラムADSL+”などを使い、ADSLとしては初の下り最大50Mbps/上り最大3Mbpsを実現する。発表会で挨拶に立ったセンティリアム・ジャパンの高橋秀公社長は、採用するADSL事業者については触れなかったものの、「年内には商用サービスが開始されるだろう」と見通しを語っている。

 eXtremeDSL MAXは、「MAX-DS」「MAX-QS」「MAX-EU」「MAX-HBL」「MAX-LR」と呼ばれる5つの技術で構成されている。対応するADSLチップセットを導入した場合、ADSL事業者は自社のサービスに適した技術を選択、あるいは組み合わせて利用することができる。なお、今回は技術発表のみでADSLチップセットはリリースされていないが、「今年度の上期中には、何らかのアナウンスもしくはトライアルが発表されるだろう」(同社プロダクトマーケティング担当ディレクターの郷右近一彦氏)。

MAX-DS(Double Spectrum):下り速度の向上

 既存の12Mbps ADSL(G.992.1)が下り方向に24KHz〜1.1MHzの周波数帯域を使っているのに対して、上限を倍の2.2MHzまで拡大する技術。下り速度は、最大24Mbpsになる。

 “ダブルスペクトラムADSL+”と呼ばれ、ITU-Tでは「G.992.5 Annex L」として標準化済みだ。日本向けの「Annex I」も1月に行われたITU-T会合で合意に至り、10月には正式勧告される見通しという(ITU-Tの会合は年2回)。

 なお、センティリアムは、既にAnnex I対応のADSLチップ「Palladia 210」を発表している。

MAX-QS(Quad Spectrum):下り速度の向上

 ITU-Tで検討されている、「クアッドスペクトラムADSL2+」(昨年11月の記事を参照)を一足先に取り込もうとしているのが「MAX-QS」。下り伝送に使う周波数帯域を、従来の約4倍(138KHz〜3.75MHz)に拡大し、下り最大50Mbpsを実現する。

 ただし、電気信号は周波数が高いほど減衰しやすい。NTT収容局からの距離が遠くなるほど、高い周波数の部分から伝送能力が落ちていくため、「50Mbpsのスピードが出るのはNTT局から200〜300mのユーザーに限られる」(郷右近氏)。

 一方、MAX-QSと後述のHigh Bit Loadingを併用すると、NTT収容局から800m地点でも24Mbps程度のサービスが可能になる。つまり、「ADSL事業者が“24Mbpsサービス”を提供する場合にMAX-QSを使えば、フルスピードのエリアを拡大することができる」わけだ。

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青い部分が従来の12Mbpsサービスで使う周波数帯域。MAX-DSはこれに黄色の部分が、またMAX-QSは赤い部分が加わる(クリックで拡大)

MAX-EU(Extended Upstream):上り速度の向上

 上りで使う周波数を2倍に拡大する技術。従来のADSLの場合、上りで使うのは25K〜138KHz帯だが、これを上限250KHz付近まで広げることにより、最大3Mbpsまで高速化する。

 オーバーラップさせる方式ではないため、そのぶん下り速度は低下するものの、「MAX-QSと併用すれば、下りの低下は全体の5%程度に過ぎない。P2Pアプリケーションなどで上り速度の需要も増しているため、ヘビーユーザー向けのサービスなどに適しているだろう」。

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MAX-EUにより、NTT局から2kmの地点でも上り1.5Mbps程度が出る

MAX-HBL(High Bit Loading):速度のベースアップ

 現在のADSLでは、1つの搬送波(サブキャリア)が搭載できる情報量は最大15ビット。センティリアムは自社の高精度なアナログ技術により、最大20%増加する。「アナログの精度が向上すると、全体的なノイズマージンが上がり、15ビット以上の情報を載せることが可能になる。今のところ、平均17〜18ビットまで増やせる見通しだ」(同社)。これをQuad Spectrumと併用すれば、理論上は下り最大速度が50Mbpsを超える。もちろん、上り方向も底上げが可能になるという。

 「重要なのは、現在の12Mbpsサービスでも、かなりの高周波まで15ビットのフルビットローディングが可能になっていることだ。つまり、(50Mbpsは出ないものの)中距離での速度も改善することができる」。

 ただし、この技術は1月のITU-T会合で同社が提出したものの、一度否決された経緯がある。「また10月に提案する。通らなければ、メーカーの判断で採用することになるだろう」(郷右近氏)。

MAX-LR(Long Reach):伝送距離の延長

 MAX-LRは、G.992.3 ADSL2の技術を用いて最大7Kmまでエリアを拡大する。この部分は、既に実用化されている「eXtremeDSL」の「eXtreme Reach」と基本的に同じだ。FBMオーバーラップ、トレーニングに使うTTR信号やパイロット信号の多重化といった技術はすべてカバーしている。

 ITU-Tでは「G.992.3 Annex L」として勧告されているが、まだ日本向けの仕様は固まっていない。センティリアムは、10月の会合でFBMオーバーラップを中心とする提案を行う予定だ。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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