リビング+:レビュー 2003/05/12 23:59:00 更新

Review:アイ・オー・データ機器「WN-G54シリーズ」(前編)
最新デュアルバンド無線LANカード、そのパフォーマンスをチェック

IEEE 802.11g対応機器としては後発ながら、戦略的な価格で注目を集めるアイ・オー・データ機器「WN-G54シリーズ」。まず、IEEE 802.11g対応PCカード「WN-G54/CB」とデュアルバンド対応PCカード「WN-AG/CB」について試用レポートをお届けする

 アイ・オー・データ機器が4月に発表した「WN-G54シリーズ」は、IEEE 802.11gに準拠した無線LAN製品である。ご存知のとおり、IEEE 802.11gは従来のIEEE 802.11bと互換性をもっているが、シリーズのラインナップには、さらにIEEE 802.11aにまで対応した“デュアルバンド”カードまで含まれており、注目を浴びている。ここでは、このシリーズの中から、まず、IEEE 802.11g対応PCカード「WN-G54/CB」とデュアルバンド対応PCカード「WN-AG/CB」について試用レポートをお届けしよう。

 アイ・オー・データ機器の「WN-G54シリーズ」には、アクセスポイントが、ルータ機能の有無で2種類用意されている(ルータ機能搭載のアクセスポイントの方は、アイ・オー・データ機器では「アクセスポイント機能付きブロードバンドルータ」と呼んでいる)。一方、PCカードの方も2種類で、IEEE 802.11gのみに対応したモデルと、IEEE 802.11a/g両対応のデュアルバンドモデルがある。アクセスポイントには、PCカードとのセットも用意されるが、組み合わされるPCカードがそれぞれ異なる点に注意して欲しい。詳しくは、次の表を参照していただきたい。

/broadband/0305/12/xls1.jpg
一番上の2つの製品がアクセスポイント単独、真ん中の2つがPCカード単独、そして、最後の2つがアクセスポイントとPCカードのセット製品となる。無線LANチップセットのメーカーが同じ製品がセットになっている(クリックで拡大)

 無線LANチップセットのメーカーについて、ここで簡単に補足しておこう。

 まず、Atheros Communicationsは、IEEE 802.11a向けのチップを供給してきたメーカーだ。Atherosの最新の無線LANチップセット「AR5001X」は、IEEE 802.11a用だった「AR5001A」(「AR5211」ベースバンドチップと「AR5111」5GHzラジオチップから構成される)に、「AR2111」2.4GHzラジオチップを加えたものである。つまり、IEEE 802.11a向けのチップセットの発展として、IEEE 802.11a/b/g対応のチップセットを開発している。

 このような経緯を考えると、「WN-G54/BBR」が、Atheros製チップセットを用いながら、同社が得意とするIEEE 802.11aをサポートしないのは少し残念である。とはいっても、無線LANカードとは違って、アクセスポイントの方は、パーソナルユースで「デュアルバンド」が必要になるケースはまだあまりない。

 一方、Intersilは、IEEE 802.11b用の無線LANチップでトップシェアを持つメーカーだ。IEEE 802.11bでのノウハウを活かして、IEEE 802.11g向けのチップセット「PRISM GT」をリリースしている。

 今回の製品シリーズでいちばん驚いたのは、「デュアルバンド」対応カード「WN-AG/CB」の価格だ。いわゆる「全部入り」にも関わらず、なんと1万円をきっている。IEEE 802.11aのみに対応したカードでさえ、ついこの間まで1万円台半ばで販売されていたので、かなり戦略的な価格設定だ。こんな価格では、当面はIEEE 802.11aは必要ないと考えているユーザーでも、手を伸ばしてしまいそうになるだろう。

「クイックコネクト」の使い勝手

 外観だが、「デュアルバンド」対応である「WN-AG/CB」は、アンテナ部の厚さがかなりある。カタログによれば厚さは12mm。ここまで厚くはないものの、「WN-G54/CB」も9mmある。アンテナの小型化は受信感度に悪影響を及ぼすのため、しかたがないことだが、IEEE 802.11b製品よりは「ごつい」感じがする。

/broadband/0305/12/cards2.jpg
比較のためにIEEE 802.11b製品と並べて撮影した

 「WN-AG/CB」と「WN-G54/CB」では異なるチップセットが採用されており、ドライバーも異なるものを使用する。しかし、設定に関しては、アイ・オー・データ独自のユーティリティ「クイックコネクト」が添付されるため、同じ手順で行うことができる(「WN-AG/CB」も「WN-G54/CB」も同じバージョンの「クイックコネクト」が付属していた)。細かい点を挙げれば、設定できる内容に多少の差はあるようだ。

 例えば、「WN-AG/CB」は152ビットのWEPに対応しているが、「WN-G54/CB」の方は128ビットまでしか対応していない。もっとも、152ビットWEPを使用するような環境はほとんど存在しないし、あまり気にする必要はない。

 「クイックコネクト」には、ビギナーモードとプロフェッショナルモードが用意されている。ビギナーモードは、初心者でも迷うことなく設定できるよう、設定項目が絞られている。

 しかし、プロフェッショナルモードにも、プロファイル作成用の「設定ウィザード」は用意されており、とくに操作が難しいというわけではなかった。また、プロフェッショナルモードでは、発見されたアクセスポイントをプロファイル選択画面でダブルクリックするだけで、そのまま新たなプロファイルを作成することができるため、初心者でもプロフェッショナルモードの方が使い勝手がよいと感じることがありそうだ。

/broadband/0305/12/mode_b.jpg
ビギナーモードでは、プロファイルを作成していないアクセスポイントは、検索してもプロファイル選択画面には表示されない
/broadband/0305/12/wizard.jpg
周辺アクセスポイントの検索は、設定ウィザードの中でしか行えない
/broadband/0305/12/mode_p.jpg
一方、プロフェッショナルモードでは、検索されたアクセスポイントが選択画面に表示される。これをダブルクリックすると……
/broadband/0305/12/profile.jpg
プロファイル設定画面が現れ、そのアクセスポイント用のプロファイルを作成することができる。

 両者とも、2.4GHz帯でサポートするチャンネルは1〜13となっている。実際に試してみたが、やはり14チャンネルで設定されたIEEE 802.11bのアクセスポイントを検索することはできなかった。国内のIEEE 802.11b製品では1〜14チャンネルが使用できるが、IEEE 802.11gでは1〜13チャンネルしか使用できない。IEEE 802.11bのアクセスポイントを利用する際は注意して欲しい点である。

 暗号化のためのWEPキーの設定は、16進コードか文字列で指定することができる(「設定ウィザード」では16進コードのみ指定可能)。文字列で指定した場合、文字列→16進コードの変換方法は、メーカーによって異なることがある。どのように変換するか明記していないメーカーが多い中、今回の2製品のマニュアルには、文字列→16進コードの変換表が掲載されていた。他社製品と接続するための情報を提供している点は評価できる。

 チップセットが異なるということは、受信感度なども変わってくる可能性がある。そこで、IEEE 802.11g対応アクセスポイント「WN-G54/BBR」を設置し、同じ場所で「WN-AG/CB」「WN-G54/CB」を利用してみて、転送速度を比較することにした。測定ポイントとして、次の3箇所を用意した。

場所概要
A地点アクセスポイントを設置した同じテーブルの上。直線距離60cm。障害物なし
B地点スライドドアを隔てた隣の部屋。直線距離にすると約4m
C地点木造住宅の上の階の部屋。アクセスポイントの真上約3m。木製机の上

 ftpサーバを立ち上げたPC(C3/800MHz&Linux)を「WN-G54/BBR」のLANポートに接続。ノートPC(TM5400/600MHz&Windows 2000)に「WN-AG/CB」「WN-G54/CB」を交互に装着して、ftpを用いてファイル(約40Mバイト)を転送した。比較のためにLANで接続したところ、転送速度は6600〜7000Kbyte/sだった。「WN-G54/BBR」はルータ機能を搭載するが、この測定では、ブリッジとして使用している。

 結果は以下のようになった。

/broadband/0305/12/results.jpg
同じ場所で「WN-AG/CB」「WN-G54/CB」の転送速度を比較した。「アップ転送速度」は、ftpサーバーへputしたときの値、「ダウン転送速度」はftpサーバーからgetしたときの値である(クリックで拡大)

 ダウン転送速度に関しては、5〜9%ほど「WN-G54/CB」の方が高いという結果になった。もっとも、体感できるほどの差ではない。IEEE 802.11g正式版に対応するため、ファームウェアのアップデートも予定されているが、この程度の差ならファームウェアの改良で逆転する可能性もある。約2000Kbyte/s=約16Mbpsという転送速度自体は、現行のIEEE 802.11gでは標準的な値だろう。

 参考までに、各測定ポイントでの「クイックコネクト」による電波状態の表示も掲載しておく。それぞれ、上が「WN-AG/CB」、下が「WN-G54/CB」の表示である。

/broadband/0305/12/agcb1.jpg
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同一テーブル上のA地点における表示。まったく問題はない
/broadband/0305/12/agcb2.jpg
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隣の部屋であるB地点における表示。障害物もあるが、54Mbpsモードでリンクしている
/broadband/0305/12/agcb3.jpg
/broadband/0305/12/g54cb3.jpg
上の階であるC地点における表示。さすがに54Mbpsではリンクできないが、実際の転送速度は、リンク速度(24〜36Mbps)ほどは落ちなかった

 IEEE 802.11gでの転送速度は「WN-G54/CB」より若干低かったものの、“全部入り”の「WN-AG/CB」は、やはりコストパフォーマンスに優れているといえる。今回はIEEE 802.11aでの測定は行わなかったが、IEEE 802.11aの実績があるAtheros製チップセットを搭載しているため、性能は期待できる。付属ユーティリティ「クイックコネクト」の使い勝手も悪くはない。おそらく人気を集めることになるだろう。

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[吉川敦,ITmedia]



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