リビング+:特集 2003/05/27 23:59:00 更新

特集:IP電話を徹底解剖する
IP電話のアキレス腱は「端末」?

いくらIPネットワークを整備しても、端末側が問題となって通信トラブルが発生する場合もあるので、注意が必要だ。その原因としては、多くが挙げられるというが……

 IP電話サービスでは、ネットワーク側で帯域の余裕さえあれば、ある程度の音質は保証できることは昨日の原稿で述べた(記事参照)。しかし、いくらIPネットワークを整備しても、端末側が問題となって通信トラブルが発生する場合もあるので、注意が必要となる。

 たとえばOCN.Phoneでは、サムスン物産製VoIPモデム「svoice」(SSI-11)で不具合が発生するおそれがあることが告知された(記事参照)。これは、端末が作動中に主電源のON/OFFを切り替えたり、ADSL回線を切断したりすると、IP電話やPSTNへの発着信が利用できなくなるというものだった。また、直接の不具合は出さずともNTT東日本のように、端末の動作検証に手間取り、製品提供の延期を余儀なくされた事業者もある(記事参照)。

 こうした現状を見ていると、VoIPサービスをユーザーに満足いく状態で提供するために、重要なカギを握るのは、実はVoIP端末にあるのではないかと思われる。この点を、もう少し詳しく調べてみよう。

SIPの解釈の違い

 なぜ、端末側でトラブルが起きる場合があるのだろうか。その答えの1つは、簡単に言ってしまえば「仕様の違い」だ。

 現在、各社でサービスを行っているIP電話ではSIP(Session Initiation Protocol)プロトコルを利用している。このプロトコルは、さまざまなサービスに用いられるもので、たとえばWindows XP付属のWindows Messengerでもボイスチャットに利用されている。

 ただ、現時点でSIPはまだ新しいプロトコルであり、各社の解釈にも若干の差がある。この差が、ネットワークと端末の相互接続性に支障をきたす場合があるわけだ。

 実際に、VoIP端末を開発するベンダーに聞いてみた。ケイ・オプティコムなどで採用されているVoIPルータ、「MegaBit Gear TE4412V2」(記事参照)を販売する住友電工ネットワークスの事業企画部、事業開発課の野末雄一郎課長は、各通信事業者のSIP仕様に差があるため、ベンダーとしても苦労すると話す。

 「RFC(Request for Comments)で定義されているにも関わらず、実際は違いがある。問題はこの差を、誰が吸収するかだ」。各事業者のSIPサーバに合わせて、端末の設定をカスタマイズする必要があるという。

 各事業者のサービスには、SIPの仕様以外にも、多少の違いがある。たとえば、IP電話では一般電話に電話をかける際に、常に市外局番から入力する必要がある。しかし、事業者によっては一般の電話と同じ感覚で利用できるよう、市内通話エリアに発信するなら市外局番を省略できるようにしていることがある。

 この場合、端末に市外局番を登録しておいて、省略された場合はそれを付加する機能を備えていなければならない。

 住友電工ネットワークスの端末では、こうした設定変更を、同社のセールスポイントである「おまかせ設定」から容易に行えるようにしている。これは、加入事業者名を選べばユーザー認証や回線などを、一括設定できるという機能。VoIPサービスを行う事業者が分かれば、そこが利用するサーバが分かるので、適切な動作をするよう端末を最適化するわけだ。

キープアライブ信号の同期

 またSIPでは、一般電話の回線交換と同じイメージで使用するために、お互いの端末間とその通信を仲介したコールサーバが、セッションのキープアライブ動作を行うようになっている。この際、お互いの端末間やサーバと端末の間で上手く同期がとれないなどすると、通話途中で(まだセッションは続いているはずなのに)セッションが切れてしまうことがある。

 ほかにも、特にADSLでは回線の状況によってリンク速度に揺らぎが生じるため、端末側でデータのバッファ量を適切に設定しないと、音声の途切れなどが発生する。このように、事業者うんぬんでなく、VoIP固有の技術的な問題も存在する。

固定電話との接続性検証も

 さらにいうなら、VoIPアダプタに接続する、ユーザー宅の固定電話機との相互接続性にも注意する必要がある。前出の住友電工ネットワークス、野末氏は検証段階で、現在電話機を発売しているメーカーの製品を、一通りテストしたという。

 「さすがに限界もあるが、売れ筋のものは、多少過去にさかのぼっても調べなければならない」。こうした積み重ねが重要だとした。

 このように、VoIPサービスそのものが成熟していない現状では、事前に多くの問題点を洗い出す必要があり、なかなか容易ではないことが分かる。通信事業者および端末ベンダーは、互いに協調しながら、詳細なすり合わせが要求されるだろう。


 “事業者同士の協調”といえば、もう1つ気になる問題がある。いくらネットワーク側で帯域を保証し、端末側で十分な検証を行って、満足のいく通話品質を提供できたとしても、それによって通話できる相手が少なければ意味がない……。明日は、キャリア間の複雑怪奇(?)な相互接続状況について、調べてみたい。

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関連リンク
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