リビング+:ニュース 2003/10/29 23:59:00 更新


無線P2Pで、いかにネットワークを構築すべきか (1/2)

各ノードが流動的に配置を変えるがために、無線P2Pネットワークの維持、構築はなかなか難しい。これを上手く解決する経路制御方法として、Reactive型、Proactive型、Hybrid型の3つを紹介しよう。

 公衆無線LANなど、街中での無線インフラが整う中で、注目度が高まるのが無線P2Pネットワークの技術だ。ユーザーが所有する端末同士で通信を行い、リレー転送できるようなら、多くの可能性を秘めた、動的なネットワークを構築できる可能性がある。

 この無線P2Pの分野で、先端的な取り組みを続けるのがスカイリー・ネットワークスだ(記事参照)。同社の梅田英和社長は10月29日、新社会システム総合研究所が主催するセミナー「ユビキタスネットワークの要諦」で公演を行った。梅田氏はこの中で、無線P2P業界の潮流を、同社の技術上の優位性を交えて紹介した。

「無線アドホックネットワーク」の難しさ

 最初に、無線P2Pの難しさを確認しておこう。梅田氏が、「無線アドホックネットワーク」と呼ぶものが意味するのは、単純に“ピア同士が無線で通信を行う”ネットワークではない。

 あるピアの無線通信が届かないところ――たとえば、距離が離れた場所やものかげに隠れた場所――にいる別のピアに対して、中間の場所にいるピアがパケットをリレー転送して、マルチホップのデータ通信を行う。すなわち、各ノードが一種のルータのような役割を演じ、動的に経路を発見していくネットワークこそ、無線アドホックネットワークといえる。これにより、「ネットワークのカバレッジを拡大できる」(梅田氏)。

 ただし、“無線”というからには、各ノード(おそらくは、ユーザーが持つ小型端末)は常に移動する。ユーザーが電源をオフにして、さきほどまでそこにあったピアが、突然ネットワーク上から消えることもあるだろう。こうした条件下で、複数の端末が自律的に、最小限の初期設定によってネットワークを維持、構成することはなかなか難しい。梅田氏は、「端末の流動性が高いため、有線のインターネットでの経路制御はそのまま利用できない」と話す。

 そこで、無線アドホックネットワークのために、新しい経路制御方式が模索されることになる。

MANETの提案する、2種類のルーティング方式

 梅田氏は、移動体を含めたアドホックネットワークのルーティングプロトコルが、IETFのワーキンググループの1つMANETで提案されていると紹介する。そこには、複数の方式が公開されているが、これらは大別すると2種類に分けられる。「Reactive(リアクティブ)型」と「Proactive(プロアクティブ)型」だ。順に見てみよう。

 前者のプロトコルとして代表されるのは、DSRやAODVなど。これは、あるピアが別のピアとデータ通信を行いたい、というトリガーがあって初めて、経路発見が行われる(=Reactive)方式だ。

 発信側のノードは、相手のノードがどこにいるか分からないから、まずパケットを“フラッディング”する。フラッディングとはその名のとおり、水があふれるように周り中にパケットを流し、多方面に転送してもらうやり方だ。

 これによってパケットは、一定の生存期間中に無差別に転送される。転送された先に、首尾よく目的とするノードが見つかれば、ここから発信側にデータが返信される。これによって、発信側から受信側までの経路が発見され、確立することになる。

 ただし、この方式は転送を繰り返すため、ややもするとネットワークに負荷をかけやすい。高密度なネットワークでは、データのコリジョン(衝突)も発生するというデメリットがある。

 一方、Proactive型として代表されるのは、OLSRやTBRPFなど。こちらは、事前に周囲のネットワーク状態を確認し、把握しておく(=Proactive)方式だ。

 各ピアは、定期的に周りのピアとデータをやりとりし、ルーティングのための経路表を作成しておく。先に述べたとおり、無線アドホックネットワークは流動性が高いため、頻繁に経路表を更新しなければならない。「3秒おきとか、5秒おきなどとルールを決めて、データを交換することになる」(梅田氏)。

 いざピア同士が通信を行う際には、経路表を参照するため遅延が少ない。むやみに転送を繰り返すわけでないため、上手くすれば最適なホップ数で通信を行えるというメリットがある。

 もっとも、経路表を随時更新するということは、それだけピア同士が通信しているということで、帯域を食うという難点もある。また、頻繁に確認を行えば、消費電力的にも不利になってしまう。

 梅田氏は、2つの方式にはそれぞれ一長一短あると話す。「Reactive型は、大規模で低密度なネットワーク向き。Proactive型は、高密度で、端末の移動速度が低いネットワーク向きだ」。

次ページ:2つの方式を組み合わせた「Hybrid型」とは?

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[杉浦正武,ITmedia]



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